第11話 独壇場

 人質を解放したあともミルティーユの独壇場は続いた。


「や、矢だ! 矢を降らせろ‼」


 と船上から矢雨が降り注げば、持っていた巨大なパラソルの傘部分を旋回させながら盾にして「あの傘なにで出来てんだよ……」と無一を呆れさせ、


「げへへ、今度はオレが相手だ。この斧は船のマストだってマッチみたいに折るんだぜぇ?」


 といかにも脳筋っぽい巨体の海賊が船から下りて戦斧を振り回せば、


「このパラソルはあらゆるものからお嬢様をお守りしますわ。日差しや雨風、そしてお嬢様の周りを飛び回る害虫からも」


 と笑顔を崩さずに返し、パラソルの軸内に隠されていた仕込み刀の一振りであっさり仕留めてしまった。


「ぐはぁああッ‼ オレの腹がぁ!」


「うふふ、はらわたをおこぼしなさいませんよう。お嬢様は汚いものがお嫌いですので」


 微笑みながら倒した相手を見下ろし、細い刀身をチンと納める。


「あの人、意外と毒舌とか言うのな……」


 若干引きながらフレーズにささやく無一であった。


「けど、やっぱあのひと、俺なんかより断然つえーわ!」


「フフン、当然でしょう? ミルティーユは我がフレーズ騎士団最強の剣なんだから!」


 フレーズは我がことのように胸を張る。そして船上から唖然とした顔を見せていた海賊船長に剣の先を向けて声を張り上げた。


「さぁ、まだ戦えるヤツはいる? 誰が来ても返り討ちにしてやるわ!」


「いや、自慢げに言うなよ。おまえはなんもしてないだろ」


 無一のツッコミなど耳に入らぬ様子で、フレーズは勝ち誇った顔でフンスフンスと鼻息を荒くしている。

 それを見ていた海賊船長は苛立たしげだったが、その口元がふいに笑みの形に歪んだ。


「……まぁいい。こっちも準備が整ったとこだ」

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