第二話-2 意外な再会?
魔法使いはビックリした様子で此方を見てきた。
だが、俺は我に返り、蓮華は此処には居ないことを思い出す。
「すみません。間違えました」
「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
――めっちゃ似てる……ん? この人、魔法使いだよな……パーティメンバーは?
「あの、すみません。パーティーって所属してますか?」
「パーティーですか? それなら所属していませんが……」
――マジか?! 誘ってみよ〜。
「良ければ、俺のパーティーメンバーになってくれませんか?」
「きゅ、急にスカウトですか……? 誰かと見間違えたり、急にスカウトしてきたり……」
――確かに……今の俺、完全にヤバい奴だよな……。
「というか、誰と見間違えたんですか?」
「あ、あぁ、俺の幼馴染と間違えちゃって……まぁ、そいつとはもう会えないんですけどね」
「『もう会えない』って何かあったんですか?」
――俺が異世界から転生してきた……なんて言えないしな……すまん、蓮華。今は、お前が死んだ事にするぞ……。
「ある日、事故で亡くなってしまって……」
「事故ですか……」
そう言うと、魔法使いは悩む素振りを見せた。
「その人に、私が似ているんですよね?」
「はい。凄く……というより、見た目は殆ど本人です」
「成程……」
そう言って、また悩む素振りを見せた。
暫くして、魔法使いが声をかけてきた。
「分かりました。貴方のパーティーメンバーになりましょう!」
俺はその言葉を聞いて、驚き、少し時が止まってしまったが、すぐに我を取り戻し、返事をする。
「い、良いんですか?! ありがとうございます!」
――正直、めちゃくちゃ嬉しい。蓮華じゃないけど、蓮華と話している気分になれるし。多分。
「勿論です。というより、こんな大切な事で、嘘なんか吐きません」
――やったぁ!
「では、貴方のステータスが記してある機械を、私の機械にかざして下さい」
「機械をかざす? どうしてですか?」
「知らないんですか? 正式にパーティーメンバーになるには、お互いに登録し合わないといけないんですよ?」
――そうだったのか……知らなかった……。
「分かりました。じゃあ」
と言って、機械をかざす。
「じゃあ、契約は私がしておきますね」
と言って、俺から機械を受け取る。
機械がピッと音を立てる。そうすると、魔法使いは機械を返してくれた。
「これで、今日から、私は貴方のパーティーメンバーです」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします」
魔法使いは続ける。
「ところで、寝床とかって確保してます?」
「え? 俺は野宿ですけど」
「あぁ、そうなんですね」
「因みに、野宿の場所も決めてないです」
「ドヤ顔で言うセリフじゃ無いですよ……もし良ければ、私が確保してる寝床に来ますか?」
「いやいや、それはマズイでしょ?!」
「何がマズイんですか?」
「男女が同じ寝床で寝るって……教育上良くないっていうか……」
「あぁ、私は気にしてないので……昔から、弟と寝てましたし」
――弟と他人じゃ、違うだろ……。顔が蓮華に似ていると思ったら、警戒心が無いところも似てるのか……。
「俺が気にします」
「大丈夫です! 一応、3人入るスペースのテントですから、密着はしませんよ!」
――うわぁー、警戒心のけの字も無いなぁ〜。何か、心配になってきた……。
「そ、そこまで言うなら……」
「おぉ! それなら案内します!」
――何で乗ってんだよ……。
「~~♪」
――鼻歌歌い出したし……まさか……。
「もしや……1人で寝るの寂しいタイプですか……?」
「ギクッ」
――あー、これは図星みたいだ〜。
「そそそ、そんなことありませんよ?」
――反応面白いから、蓮華みたいにちょっと意地悪するか。
「じゃあ、何であんな乗り気で、知らない男を誘うんですかね?」
「さ、さぁ〜、何ででしょうかね〜?」
「正直図星ですよね?」
「うっ……は、はい……実は寂しくて……」
「成程。まぁ、俺は人を襲ったりなんかしないので安心して下さい……でも! 知らない男を安易に誘うのは避けて下さい。世の中の男が全員良い人と言う訳ではないので」
「は、はい! 分かりました!」
――返事めっちゃ良いな。この娘。
「あ、あの、お礼と言っては何ですが……何かお一つ、願いがあれば聞きますよ?」
――お礼か……ならお言葉に甘えて……。
「満面の笑みをお願いします」
「へ? 笑顔……ですか?」
「そうです! さっきも言ったとおり、貴女は、俺の幼馴染に似ています。貴女は、アイツじゃ無いけど、もう一度あの笑顔が見たくて……」
「分かりました! ちょっ、ちょっと待って下さいね」
と言って、魔法使いは顔をほぐしはじめた。
~2分後~
「お待たせしました! では……」
そう言って、魔法使いは、俺に笑顔を向けた……。
その顔を見た俺は、少し固まった後、頬に液体が伝い、地面に水滴がある事に気付いた。魔法使いは、その姿を見て、あたふたしている。
「蓮華……」
その液体は涙だった。俺が死ぬ前の、蓮華の笑顔に似ていて、ぎこちなかったが、十分だった。俺はいつの間にか、涙を流し、止まらなくなっていた……。
「ありがとう……本当に……ありがとう」
俺は、魔法使いに言った……。
魔法使いはまだ、あたふたしていた。
俺は、蓮華に代わって、この魔法使いを守ろうと誓った。
暫く経って
「落ち着きましたか?」
「ありがとう、もう落ち着きましたよ」
「良かった〜。急に泣き出すから、ビックリしました。貴方の幼馴染さんをそれだけ大切に思っていたんですね」
「あぁ」
「そういえば、貴方のお名前をまだ聞いていませんでしたね。何というのですか?」
「俺は、神崎護だ。呼び方は……お好きにどうぞ。あと、敬語は堅苦しいから、無しで!」
「敬語は……ちょっとずつ外していきますね、護さん」
魔法使いは続けて言った。
「私は、アリス・アストライアです。アリスと呼んでください。あと、敬語は無しで大丈夫ですよ」
「分かった。敬語は無しにするよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、テントに案内しますね」
アリスはそう言って、進み始めたので、俺も着いて行った。
――新しい仲間も増えたし、冒険者にはなれたし……ちょっと異世界生活が楽しみになって来たな。
ふと、俺のステータスが書いてある機械に目をやると、そこにはさっきまで何も無かった筈の、『固有スキル』と言う場所が埋まっていた。気になったので、タップしてみる。そのスキルの名は――『人助け』だった。
何故、急に埋まったのかは分からない。アリアの説明によれば、生まれた、もしくは転生した時点で固有スキルは持っている筈だが……。
――まぁ、特に気にしなくても良いか。無事、スキルを習得したんだから。
「何止まってるんですかー? 日が暮れちゃいますよー!」
アリスがそう声を掛けてきたので、俺は返事をした。
そうして俺は、アリスのテントに向けて、足を進めるのだった――。
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