第二話-1 ~冒険者登録完了~

 早速、アリアから貰った本を読んでみる。


 そこには、この国の法律や、来たら始めにやるべき事、地図、役職の説明等、本当に色々な事が書いてあった。


「アリアって……世話好きなんだな……」


 ~その台詞後の女神『シエロ・アリア』の様子~


「世話好きだって〜。あの子、分かってるね〜!」


「女神様、嘘はよろしくないかと……」


「一応、本当でしょ!」


「いや、これまで多くの方々を転生させましたが、あの本については、まだ2人にしか渡していないじゃありませんか……。というより、刀とかは護さんにしか渡したことありませんし……」


「ま、まぁ。――良いじゃない! 細かい事はさ!」


そう言って、シエロ様はブツブツ言い始めた。


――嗚呼、こうなってしまった……。こうなったら扱いが難しいんだよな〜。シエロ様って……。


 ~その頃の護~


 ――まずは……この本によると、ギルドに行かなきゃならないみたいだな……。ギルドあるんだ。ホントに漫画みたいだな。


 そうして、俺は地図を見ながら、ギルドに向かう。向かう途中、本当は良くないが、本を読みながら歩いた。勿論、人にぶつからない様に、配慮はしている。


「ん……?」


その本には、こう綴ってあった。


『ギルドで冒険者として、契約を結んだ後には、この世界にある教会に足を運び、大聖堂の右奥の扉に入り、突き当たりの小さな扉に入り、その扉の先にある、小さな女神像に祈りを捧げて下さい。そうすれば、貴方はまた私に会うことができるでしょう』


――つまり、冒険者になったら会いに来てね! って事か。『貴方は』って書いてあるから、多分この世界の人は会えないみたいだな。


 それを念頭に置き、俺は、足を早めた。


 ~その頃の女神『シエロ・アリア』の様子~


 シエロは、護があのメッセージを読んだことに安心し、一息つく。


「良かった〜。後ろの方に書いていたから、気付かれなかったらどうしようかと思った〜」


「『護なら、後ろに書いても気付くでしょ〜!』とか言ってたのはシエロ様ですよ」


「いや、最初はそう思ってたんだけど……あの子、ギルドに行くってことだけ見たら、進み出したからさ〜」


――護さん……ヒヤヒヤさせないで下さいよ……もし貴方が読まなかったら、私、もの凄く面倒くさいことになってしまうのですから……あの人程、我儘言う時と、拗ねた時に面倒臭い女神様はいないんですから……。


「あぁ、叶、護の個人モニター持って来て〜」


「分かりました。すぐ持って参りますので、少々お待ち下さいませ」


「分かった〜」


 ~その頃の護~


 ――ようやく、ギルドが見えたな……意外に近いところにあったな……。


 すると、突然話しかけられた。


「そこの兄ちゃん! 腰に刀差してる兄ちゃんだよ! あんた、見習い冒険者さんか?」


「えっと、まだなっては居ませんが……これから手続きをしに行くところです」


「そうか! なら、俺の店で買い物でもして行けよ!」


「いや、俺、お金無いんですけど……」


「見るだけでも良いから! な!」


――面倒くさいことになってしまった……。けど、断る理由もないしなぁ。ま、一応行ってみるか……。


 そうして、俺は、その男性に着いて行った。


「此処が、俺の店だ」


そこには、武器や防具をはじめ、食べ物や薬品も置いてあった。


「いっぱい物がありますね」


「当たり前よ! ――と言いたいところだが……最近客が来なくてな……毎日客引きをしてるんだよ」


「成程」


――じゃあ、品揃えが良いんじゃなくて、単に売れてないだけか。


すると、男性は俺の刀を舐めるように見てきた。


「この刀が何か?」


「兄ちゃん、これ、ちょっと見せてくれねぇか?」


「良いですけど……」


そう言って、刀を男性に渡す。


「やっぱりそうか、兄ちゃん、この刀、どんな名刀よりすげぇよ!」


「そ、そうなんですか……?」


「あぁ、なんせ、刀のできを人目で判断する『スキル』を持っている俺が言うんだから間違いねぇ」


――スキル……確か本に書いてあったな……。

『この世界にいるものは、転生者も含め、全ての人が、固有スキルを持っています』だったっけ?


「ぐ、具体的に何が凄いんですか?」


「まず、得体の知れない力が見える。あと、剣の刃の部分が、1ミリのズレも無く、とても頑丈だ……これくらいで凄さは分かったか?」


「はい! 十分分かりました!」


――アリアって、工作好きなのか? というより、手先器用だな~。


「何か買って貰おうかと思ったが、兄ちゃん金無いみたいだし、それに、今日は凄いもんを見せてもらったし……引き止めて悪かったな」


「いえ、大丈夫ですよ。また来ますね。それでは」


そう言って、俺は再びギルドに向かった。


 ~ギルド~


「此処がギルドか」


すると、受付係らしき人が、話しかけてきた。


「どうされましたか?」


「冒険者になりたいんですけど……」


「あぁ、冒険者志望の方ですね。少々お待ち下さい」


そう言って、カウンターの方に走って行った。


 暫くして、小型の注射器の様なものを持って、戻って来た。


「何ですか? それ」


「ご存知ありませんか? 此方は、個人ステータスを調べる物になります。此方で貴方の血液を採取し、専用の機械でステータスを調べる仕組みになっております」


――何か、想像してたより、文明が進んでるな……。


「では、あちらの席へ」


と言われ、席を案内された。


「少し、痛いかもしれませんが、我慢してください」


そう言って、注射器を腕に刺し、血液を採取していく。


注射器の半分採取した所で、


「終わりましたよ」


と言われた。受付係の人は、それを持って、カウンターの方に行った。


 暫くすると、受付係の人が戻って来て、俺にスマホみたいな機械を渡してきた。


「何ですか? これ」


「此方は、貴方のステータスの詳細が記載された物になります。後々、色々な事が追加されますので、冒険者として活動する限りは、肌身離さず持っていてください」


「分かりました」


少し、自分のステータスを見てみる。


――魔力低っ!! あとは……まぁ分かっていたけど、器用さが、可哀想な数字になってる……。魔法使いとか無理そうだな……。


「あの、ステータスについて聞いてみたいことが」


「何でしょうか?」


「このステータスでおすすめの職業ってありますかね?」


「あぁ、少々お待ち下さい」


すると、受付係の女性は、俺のステータスを見始めた。


 暫く経って、受付係の女性が声をかけてきた。


「魔法を使う職業は全体的に無理ですね……ですが、魔法を使用しない職業、並びに聖職者は向いていますね!」


「聖職者? 何で別でそれを言ったんですか?」


「実は……神聖色を少しだけお持ちのようです」


――分からん……。


「な、成程。分かりました。ありがとうございます」


そう言って、職業を考える。


――勇者って職業無いんだ?! へー、初めて知った〜。


 暫く経って……。


「よし! 決めた!」


そう言って、職業を選択する。因みに、ステータス的に、なれる職業のみを表示させてもらった。


――俺の職業は……聖剣士。


すると、ギルドに歓声が湧き上がる。


「1発で聖剣士かよ! 兄ちゃん、見かけによらず、やるなぁ!」


そんな声も聞こえた。


ギルドを見渡す……。


怖そうな奴らが、いっぱいいた。


そんな歓声に押されながら、俺は、教会に向かって行った。


 ~教会~


 確か……この部屋だな。


そう言って、小さな女神像に祈りを捧げる。


辺りが眩い光で覆われた。


 目を開けると、そこにはアリアがいた。


「ちゃんと来てくれたんですね」


「まぁ、聞きたいこともありますし」


「聞きたいこと……ですか?」


「はい。まず1つ目は、ギルドの機械です。あれ、作ったのアリアですよね?」


「あ、バレちゃいました?」


「剣の模様と同じような模様があったので……」


「あんな小さいの、よく気が付きましたね」


「昔から、洞察力は優れているんです」


「――で、まだ聞きたいことは残っているのでは?」


「はい。二つ目は、俺は、何時でもアリアに会えるんですか?」


「私が寝ていなければ、可能ですよ」


「成程」


「えぇ……他にはありますか?」


「神聖色とは何ですか?」


「まぁ、凄くまとめると、属性みたいなものですね」


「じゃあ、俺は神聖属性みたいな感じですかね?」


「そういう感じです」


「成程……分かりました。以上です」


「分かりました。では……貴方に仲間の集め方について、お話しましょう」


「おぉ! めちゃくちゃ気になってたんですよ! それ!」


「仲間は、ギルドにお願いし、張り紙を貼ったりしてもらう。もしくは、自分でスカウトする。の2つしか無いですね」


「成程……分かりました! ありがとうございます!」


――何か楽しみになって来たぞ!


「では、そろそろ時間なので……」


そう言うと、また、眩い光で覆われた。


 目を覚ますと、異世界に戻っていた。


「まぁ、野宿確定なんですけどね」


異世界転生初日の夕方にこんな覚悟をしなくちゃならないのは、ちょっと腑に落ちないが、仕方ない。


すると、ある魔法使いが俺の前を横切った。


俺は、その姿を見て、思わず声を出してしまった。


「蓮華!」


と。

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