第4話 春のうたたね 1
僕の名前は吉田 詩。高校一年生。初めは中学校から高校への環境の変化に自分がついて行けるか心配だったんだけど、無事に友達が出来ました。
僕の友達の名前は林 湊。
一年生の初めの頃に一人でライトノベルを読んでいた僕に話しかけてくれたんだ。
実は彼もライトノベルが好きらしくてそこから意気投合!と言いたいんだけど、
まあ、そこそこ学校では話すけど、そこまで仲がいいのかはちょっとわからない。
学校では話すし、連絡もちょくちょく来るけど、長期休みに入ればめっきり連絡を取らなくなる。僕としては一緒に遊びに行ったりとかもしたいんだけど、誘った結果うざがられたらどうしようとか思っちゃうとどうしても気が引けてしまう。
そもそも、緊張のあまり湊君の前だと素が出せなくてなんか良くわからないキャラクターを演じている。湊君に話しかけられていた時、読んでいたラノベのキャラクターの性格をトレースしてしまったんだと思う。
何故そんなことに?と思う人もいるかもしれないけど、恥ずかしながら僕って実はちょっとだけ女の子みたいな容姿に見えるらしくてそれで小学校の頃は男子にちょっかいかけられることが多かったせいであまり友達がいなかったんだよね。
それが原因で中学になってからも友達がほとんどいなくてさ。高校からは頑張って友達作ろうとした結果、誰とでもある程度仲良くできるミステリアスな感じのキャラを無意識化で演じてしまったんだと思う。
それでも、やっぱ素で仲良くしたいし、長期休みとかに一緒に遊ぶみたいな青春も送りたくて頑張ろうとしてたんだ。
まあ、一年の夏休みと冬休みは結局、気後れして誘えなかったんだけど。
だけど、春休み、そう今は春休み。この春休みこそ、湊君を誘って一緒に遊ぶんだ。
そのために、彼が昔から遊んでるって言ってた狩猟ゲームの最新作も買ったわけだしね。
とはいえ、どう誘うかが重要だ。
そこで僕は友達が多い所感、リア充というやつである妹に聞いて見ることにした。
「ねえ、歌奈って友達と遊ぶときどうやって誘う?」
僕が妹に友達の誘い方について聞いてみると歌奈は目を丸くした。
「え、なあに、お兄ちゃん友達出来たの!どんな子どんな子」
以外にも妹からの食いつきが良かったため、少し湊君について話してみたら妹は訳知り顔で。
「成程、お兄ちゃんにもついに友達が……」
「ちょっ、別に今までも友達がいなかったわけじゃないから」
そう、例えば、小学生の頃、偶に挨拶を交わしていた…木村君とか、中学の頃、偶に体育の授業のペアになっていた佐々木君とか……
彼らは友達にカウントしてもいいのだろうか?
まあ、それはともかく
「そういう昔話はいいから早く友達の誘い方を教えてよ」
そう重要なのは過去じゃない今だ。
「それもそっか。ならお兄ちゃん、今まではコンプレックスだったその女の子みたいな容姿……ていうか、どっからどう見ても美少女にしか見えないような容姿を生かしてアタックしてみてはどうかね?」
いや、美少女みたいな容姿って、流石にそれは言いすぎだろ。普通に中性的ではあると思うけど。
というか
「アタックって何するのさ?」
僕が疑問に思い妹に聞いてみると妹が部屋に戻り、あるものを取ってきた
「お兄ちゃんがこれを着て女の子としてアタックするのだ」
手に持っているのはどうみても……
「いや、なんで僕が歌奈の服着て女の子として振る舞うことになるのさ」
いや、女の子として振る舞うために歌奈の服着るっていうのは分かるけど
そもそも
「男が女装して男にアタックってちょっとおかしくない?」
「おかしくないよ‼お兄ちゃんは可愛いし、その湊って人もきっと『俺、お前のこともう男として見れない』って言ってそれに対してお兄ちゃんも『湊くん、ボク、ボクも湊のことが好き‼』ってなってそのまま二人でベットイン‼」
「いや、ならないから、僕と湊君は健全な友達だから、そんなBL展開には絶対にならないから‼」
僕は大きな声でそう言うと、歌奈は首を傾げて
「男同士の友情とか成立するの?」
その目は至って純情で僕をからかうために言っているわけではなく、それこそ幼子のように自分の言ったことが真実であることを疑っていない目だった。
だから、僕は歌奈に「いや、男同士の友情じゃなくて、普通そこは男女の友情でしょ。」とかそういう、ツッコミを言えずにいた。
「歌奈、歌奈の意見は少しお兄ちゃんにはハードルが高いから歌奈のお兄ちゃんを応援してくれる気持ちだけは受け取っておくね」
僕は歌奈の頭を撫でてそういうと、妹の横を通り抜けて一端外に避難することにした。
ただ、僕が外に出たのには妹からの避難という意味の他にも、散歩をしていたらもしかしたらいいアイデアが出るかもしれないという可能性を考慮してのことだ。
そうして、アイデアを捻りだすために散歩をしていたらいつの間にか結構遠くまで来てしまっていた。僕はそろそろ暗くなるし、家に帰ろうと思い踵を返す、その直前、ある人を見かけてしまった。
そう、林 湊君だ。僕は彼に話しかけようとして思いとどまった。
この状況で話しかけたら、ストーカーと間違われたりしないだろうか。
僕としてもここは重要な局面であるため少しシミュレーションしてみることにした。
『やあ、湊君。こんな所で会うなんて奇遇だね』
『ん、ああ、詩か、それもそうだな。ていうかお前は何をしてるんだ』
『え、僕?僕は……』
『どうしたんだ?急に言いよどんで。っ‼。お前……まさか、俺をつけて……』
だめだ、これじゃあ、湊君にストーカーと勘違いされてしまう。
僕がここに来た理由を明確にしないと、因みに妹がBLの話をしたなんて言うのは論外だ。いや、もしかして意外といいのか?
シミュレーションしてみるか
『やあ、湊君。こんな所で会うなんて奇遇だね』
『ん、ああ、詩か、それもそうだな。ていうかお前は何をしてるんだ』
『ああ、実は妹がBLの話をし始めてね。逃げてきたんだ』
『へえ、でも、なんでそんな話を急に始めたんだ』
『えっ、えっと……それは……』
『っ‼、……まさかお前、俺の貞操を狙って……』
駄目だ、これも駄目だ。くそ。僕はなんて言えばいいんだ。
そうだ、この近くには確か電気屋があったはず、そこには確かゲームソフトが売っていた。とは言え、僕の今の財布の中にはお金はあんまり入ってないし、ゲームソフトなんて買えないからな……
いや、まてよ。あの店には中古のゲームソフトも売ってなかったか?
なら、こうすれば
『やあ、湊君。こんな所で会うなんて奇遇だね』
『ん、ああ、詩か、それもそうだな。ていうかお前は何をしてるんだ』
『ああ、実は前に君が言っていたゲームソフトあっただろう?君がずっと前からやっていたっていう狩猟ゲーム。あれの最新作を僕も興味本位で買ってみたんだけど。これが中々面白くってさ。色々、調べてみたら今のシリーズと昔のシリーズだとかなり仕様が違うそうじゃないか。だから、今日は中古で安く昔のシリーズが売り出されてないか見に来たんだよ』
『へえ、そうなのか。またな』
よし、これならいける。いや、何だったら、そもそも湊君もゲームを買いにここまで来たんじゃないか?
もしそうだとすれば
『やあ、湊君。こんな所で会うなんて奇遇だね』
『ん、ああ、詩か、それもそうだな。ていうかお前は何をしてるんだ』
『ああ、実は前に君が言っていたゲームソフトがあっただろう?君がずっと前からやっていたっていう狩猟ゲーム。あれの最新作を僕も興味本位で買ってみたんだけど。これが中々面白くってさ。色々、調べてみたら今のシリーズと昔のシリーズだとかなり仕様が違うそうじゃないか。だから、今日は中古で安く昔のシリーズが売り出されてないか見に来たんだよ』
『へえ、実は俺もゲーム買いにここまで来たんだよ。何だったら一緒に来るか?おすすめも教えてやれるしな』
『そうなのかい?なら是非頼もうかな』
よし、完璧だ。これだ。これならいける。
僕はそう思い湊君に話しかけようとした。
「あれ……もう、いない?」
どうやら、僕が長いことシミュレーションしている間にいなくなってしまったみたいで僕は仕方なく予定通り家に帰ることにした。
家に帰る途中。そういえば妹からは逃げるように家を出たことを思い出しお詫びにコンビニでプリンを買ってきた。
そしたら、妹が
「お兄ちゃん。ごめんね。お兄ちゃんに真実を突きつけちゃって」
と謝られた。
いや、妹の言っていたことは空想では?思ったけど、それは言わないでおいた。
その後はどうやって湊君を誘うか頭を捻っていたけど結局いい案が思いつかないまま過ぎていき。
僕の一年の春休みの思い出は妹の腐の面をみたということ以外は特にこれといったことが起こらずに終わった。
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