第15話 出会い

中国への出張は久しぶりだった。20年前に初めて海外に出張した後に色んな国へ出張したが、中国でも今回のような北の地方は初めてだ。近代的なビルが立ち並び高級車が走る街に、日本を追い越してGDP2位となった国の勢いを感じた。


仕事の後、裕之は日本食屋が連なる飲み屋街で日本人向けのスナックに立ち寄った。特にアテがあったわけではなかった。「いらっしゃいませー。」金髪の女の子がカウンター席を用意してくれた。幼い顔立ちに露出の多い服。名前はアキナと言った。彼女は片言の日本語が話せた。



予定していた1ヶ月間の出張も終わりに近づいた頃、裕之はいつものように日本食屋で夕食を済ますと、アキナがいる店に立ち寄った。ここに来て2本目のボトルも残りがあと少しになっていた。

金髪だった髪を濃いめの茶色に染めたアキナはそれだけで随分と落ち着いた雰囲気に変わっていた。裕之に昨日入れたばかりのタトゥーを見せて20才の記念に入れたと言った。まだ赤く腫れた肌が痛々しかった。


20才。娘でもおかしくない年齢だと思った。「あなたのお父さんより、俺の方が年上かもね。」

アキナは片言で両親は幼い時に死んだと言った。スマホに両親の写真があるらしく、彼女は自撮りだらけの写真をスクロールした。「あった。」アキナはスマホの画面を裕之に見せた。


それは古い写真を写した画像だった。

そこには黒い髪の女性と一緒に写る20代の裕之の姿があった。


裕之は訳がわからなかった。写真のことはすぐに思い出した。これは初めて中国に来た時、カラオケで知り合った女性と撮った写真だ。そうだ。デジカメの画像を写真にして彼女に渡した。何故この写真をアキナが持っているのか。アキナは写真に写る男が日本人だということに全く気付いていない様子だった。

アキナに母親の名前を尋ねると紙に書いてくれた。見覚えのある漢字だった。アキナは「ネイリン」と言った。

裕之は彼女との夜のことを思い出した。そして20年前に飛行機の中で男が言った言葉を思い出した。

「子供作らないようにな。」

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