第13話 再会
2度目になるとあまり不安を感じることはなかった。〝経験しておくことでこんなにも違うのか〟裕之は無知とか未経験から来る不安が人をどれだけ臆病にさせているのかを実感した。
今回の出張は1人だ。
中国に到着すると2ヶ月前と変わらない匂いがした。
先輩達と必死で立ち上げた生産ラインは順調に稼働していた。予定している期間で帰国できそうだ。2日目の夜、移管先の課長がカラオケに誘ってきた。〝あれを持ってきておいてよかった〟
街もそのホテルも2ヶ月前とさほど変わった様子はなかった。ただ、カラオケで女性が並ぶ姿は2度目でも迫力を感じた。裕之はチャイナドレスで並ぶ女性の中にネイリンを探したが彼女の姿はなかった。課長があの時裕之が指名した女性はいないのかと片言の中国語で聞いてくれたが、わかるはずもなかった。裕之はふと思い出して、財布から花の形の折り紙を取り出すと、それを広げて店員に見せた。店員はすぐにわかったようだった。
30分後、ネイリンが部屋に入ってきた。化粧をし、チャイナドレスを着たその姿は目を見張るほどの美人だった。ネイリンは裕之の隣に座ると嬉しそうに微笑み、裕之に抱きついた。課長は「見る目がありますね〟」と言った。羨ましさを隠せないようだった。目の前で注がれる赤ワインのスプライト割りの味はあっという間に2ヶ月前と今とを繋げた、
普段着に着替えたネイリンは初めて会った時の私服の印象とはまるで違い、グッと大人っぽかった。裕之はこれから彼女を部屋に連れて帰ることに緊張した。この仕事は女の雰囲気を変えると思った直後、あれからどれくらいの数の男が彼女を変えてきたのだろうとも思った。
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