第12話 恋

扉を開ける音がした。その音が聞こえる度にあの男であることを期待した。


「嬉しい!」アキナは男の姿を見ると、いらっしゃいませより先にこの言葉が出た。男も思ってもみないアキナの反応に驚いているようだった。男は自然と前回と同じ席に座る。アキナは他の客についていたが、すぐに男の隣に座った。あまりにも露骨な対応に男は一瞬その客の方を見た。客は気にしない素振りでグラスを手にしていたが、アキナのいなくなったソファーの背もたれに腕を乗せた姿は虚しかった。


男はアキナの年齢を知って驚いた。幼く見えてたが、実際に幼かった。アキナも男の年齢を聞いて驚いた。実際の年齢より10才は若く見えた。〝あの落ち着いた雰囲気は年齢のせいね〟

アキナは金髪を染めたくなった。もうすぐ20才になるということもあるが、それは男とのつり合いを考えたのかもしれなかった。他のお客さんのようにやたらと体を触ることもなく、いつも目を見て話してくれる。アキナは男の雰囲気が好きだった。初めて見た時から特別なものを感じていた。それが恋なのか何かは分からなかった。

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