第10話 ふたり

部屋に着くとベッドをソファー代わりに並んで座った。お酒で頬がピンクになった彼女は化粧をほとんどしてなかった。照明の暗いカラオケではそれほど気にして見てなかったが、まだ幼さを残した横顔がかわいかった。裕之はもし彼女が日本人だったら日本で普通にモテるだろうなと思った。


不思議だった。こんなかわいい女性と2人きりで部屋にいるのに全くそんな気分にならない。それはお酒を飲んだせいなのか、彼女が外国人だからなのかわからなかった。


何もしそうにない裕之に彼女もどうしていいかわからないようだった。場の雰囲気を変えたい。裕之は仕事用に持って来たデジカメをバッグから取り出すと彼女に向けた。海外での思い出にという思いもあったのかも知れない。

彼女は戸惑うことなく笑顔でポーズをとった。その仕草には日本人ではあまり見ないカッコよさがあった。その後2人で並んでもう一枚写真を撮った。


デジカメを小さなテーブルに置くと弘之は彼女の髪を撫でてキスをした。そしてベッドに横になり彼女の服を脱がす。裸になった体の温もりと肌が密着する気持ち良さに一気に眠気が襲ってきた。歯を磨きたいと思いながらも閉じた目を開けることができず、弘之はそのまま眠りに落ちていった。


目を覚ますと外はうっすらと明るかった。まだ起きる時間には早かった。裕之の起きた気配で彼女も目を覚ました。裕之の首に腕を回し、触れるようなキスをした。裕之がその先をしないことがわかると、彼女はベッドから起き上がり服を着た。裕之は聞いてた金額を彼女に渡した。

まだ周りは寝ている時間。彼女は静かにドアを開けて玄関から出ると振り返って微笑み、そっとドアを閉めた。


窓の下を見ると、バイクタクシーの後ろに跨がる彼女が見えた。裕之は工場内の寮を思い出し、彼女はこれからどんな部屋に帰るのだろうと思った。

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