第8話 カラオケ

部屋の中は広かった。暗めの照明と壁全面の鏡。高級そうなソファーにテーブル、そしてカラオケの機械。日本のカラオケボックスのパーティールームのようだった。〝男だけでカラオケ⁉︎〟裕之は早く帰って寝たいと思った。


それぞれがソファーに座ると扉をノックする音が聞こえ1人の女性が入ってきた。何か短い挨拶のようなことを言うと扉の方に戻った。そして扉を開けるとチャイナドレスを着た女性達がゾロゾロと入って来て正面に並んだ。20人近くいる。最初に入ってきた女性が何か言うと、それを合図に一斉にみんなが挨拶をした。


裕之は何かショーが始まるのかと思った。すると課長は「好きな女性を選んでください。」と言った。裕之は飛行機での男の話を思い出した。〝女は選び放題だ〟男は確かカラオケと言ってた。このことか。


女性達は同じようなチャイナドレスだったが、髪型や体型、その容姿から醸し出す雰囲気は様々だった。みんな20代前半だろうか。選んだ女性はカラオケにいる間は一対一で接待してくれるとのことだ。男だけのカラオケにならないことに裕之はとりあえず安心した。


先輩達はそれぞれが自分のタイプの女性を選んでいく。選ばれた女性は先輩達の隣にピタリと体を寄せて座った。


裕之は1人を選ぶことに気まづさを感じていた。目が合うとタイプでなくてもその女性を選んでしまいそうだった。1人を選ぶことが出来ず〝俺はいいです〟と言おうかと思った時、扉近くに立つ私服の女性に気付いた。1人だけ私服は明らかに浮いていた。〝彼女を選んでいいのだろうか〟彼女であれば1人を選ぶことに気まづくならないような気がした。裕之は彼女を指差した。私服の女性は一瞬ためらったように見えたが、少し距離を置いて裕之の隣に座った。選んでいい女性ではあったようだが、あまりにも先輩達の隣の女性とは雰囲気が違っていた。

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