第3話 異次元
「よく来たな。」翌朝のホテルのロビー。先に現地入りしたメンバーはまるで随分前からいたかのような態度だった。
7人が揃った。マイクロバスは8時に出発する。移管先の工場までは30分くらいとのことだった。
昨晩は暗くて街の景色がわからなかった。広大な土地。道路は広く、高い建物は少ない。地平線の向こうからオレンジ色の太陽が照りつける。
「着いた。」
裕之は唖然とした。工場の門はまるで要塞を守る防御壁のようだった。守衛が運転手を確認するとその鉄の壁は鈍い音をたてながらゆっくりと横に開いた。
中に入ると敷地は広い。敷地内に5階立てのマンションのような建物がある。窓の外は洗濯物だらけで女性の下着が目についた。従業員の寮で、2000人くらいがここに住んでるとのことだった。
日本から来たメンバーに広い事務所が準備されていた。すぐ隣にはトイレがある。いわゆる和式だが、トイレットペーパーの設置もなく、裕之はどっちが前なのかわからなかった。
設備立ち上げのスケジュールを打ち合わせし、業務内容の詳細を決めていく。この辺りの精神状態は初めての海外だろうと関係ない。
打ち合わせ後、生産現場に移動した。設備は全て設置してあった。長いコンベアに向かい、ズラリと作業者が座っている。全て女性。黄色い帽子を被り、中学生くらいに見えた。実際に殆どが10代とのことだった。
2名の通訳が紹介された。現地スタッフと仕事を進めていくにあたり、彼らは命綱だ。
初日の時間はあっという間だった。
事務所の外、1人で薄暗くなった空を見上げてると、遠くに一羽の鳥が見えた。鳥はフラフラとまるで何処に向かえばいいのかわからないようだった。
「コウモリです。集団から外れて迷ってしまったようですね。」通訳の1人が流暢な日本語で言った。裕之はふと不安を感じて先輩達がいる事務所に足早に戻った。
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