第3話 急変
マスターが話し始めたのは商店街が出来て間もない頃の話だった。
商店街が出来た当初からあったお店は、魚屋、肉屋、八百屋、バー、駄菓子屋だけだったらしい。近くに小学校があったためか、駄菓子屋は子供たちがよく集まる場所として人気があった。
しかし最近は外で遊ぶ子供の数も減り、駄菓子屋に寄る子供の数も減ってしまったことを駄菓子屋のおばあちゃんは少し残念そうに言っていたそうだ。
おばあちゃんの本音を聞いていたマスターはさっきの一樹を見て、駄菓子屋のことを大切に思ってくれている子供がまだいたことをうれしく思ったのだそうだ。
一樹達はマスターから話を聞いた後、ジュースのお礼を言ってからお店を後にした。
「俺、この事件は必ず解決するよ!!」
一樹は力強く探偵団のメンバーに言い切った。
大樹、みちる、唯は一樹の言葉を聞いて深くうなずいた。
その日の捜査はここで終わることにした。
次の日、一樹達は小学校で駄菓子屋の事件について何か知っている人がいないか聞いて回ったが、駄菓子屋に寄る子供の数の減少もあり、事件自体を知っている子供のほうが少ないほどだった。
キーンコーン、カーンコーン
放課後になり四人はこれからどうするか話し合った。
「なあ、俺さ犯人を知る方法分かちゃった」
大樹がフフンっと、鼻にかけて椅子から立ち上がって胸を張った。
「まじかよ、大樹。それってどんな方法なの?早く、教えてよ」
「まあ、落ち着きたまえよ、カズ君。俺はさ、気づいちゃったんだよね。犯人は駄菓子屋の全部のお菓子を盗んだわけだろ?」
「そうね。一つ残らず全部盗られてたわね」
みちるも大樹の考えに興味があるようで相槌を入れながら聞いていた。
「それならさ、犯人の家には駄菓子の山があるわけだ。犯人は駄菓子を盗んでるんだから子供に違いない。それなら、最近よくお菓子食ってるやつの家を見せてもらえばよくね?」
どうだっと、言いたげな大樹の発言に一樹は目をキラキラ光らせていた。
「大樹、お前天才だよ!!よし、それならすぐに出発し」
一樹が言い終わる前に、みちるから冷静な反論が帰ってきた。
「犯人の家に駄菓子があるなら、お願いしてすぐに部屋に上げるくれるとは考えにくいし。犯人が子供だっていうのもおばあちゃんに何か恨みを持っている大人がやった可能性もあるでしょ」
「そ、それにね。本屋の猫のお兄さんがトラックを見たって言ってたよね」
「確かに持ち運ぶのも子供じゃ難しいよね」
みちると唯の発言で、自分の考えが間違っている可能性が高いことが分かった大樹は静かに椅子に座りなおして、俯いてフリーズしてしまった。
四人はこれからどうするかの作戦を練っていたが、結局、良い打開策を思いつくことは無かったため、その日は駄菓子を新しく仕入れたというおばあちゃんのもとに向かった。
四人が駄菓子屋に着くと先客がいた。
慎重が百八十はありそうな優しい顔立ちのお兄さんは、四人に気づくと微笑んで軽く会釈してきた。そのまま、お兄さんはおばあちゃんに挨拶をすると去って行った。
「おばあちゃん、こんにちは」
「はい、こんにちは」
いつも通り、挨拶をしてお店に入った四人は目の前の光景に驚き動かなくなってしまった。
四人を驚かせたのはお店に並べられた新しい商品だった。今までは昔なじみのほとんど売られなくなった商品を重点的に売っていたのに、最近のテレビCMで有名なお菓子が並んでいる。
もちろん、今までの昔なじみの商品も並べられているが、新商品が並ぶことは四人の動きを止めるには十分だった。
「今まではよく知ってる商品しか扱ってこなかったけど、みんなも新しいのがいいんじゃないかと思ってね」
「みろよ、カズ。これこの前テレビでみた食べてる間に味が変わるチョコレートだ」
「やった!!これ俺食べてみたかったんだ」
大樹と一樹はお店の中を二人ではしゃぎながら回っていた。
いつもは冷静なみちると唯も少しテンションが上がったのかお店の中をじっくり見て回っていた。
買い物をし終えた後、一樹はハッと思い出したようにおばあちゃんに質問した。
「ねぇおばあちゃん、さっき来てたお兄さんって、見たことない人だったけど、どこに住んでる人なの?」
「そっか、そっか。みんなは会うのは初めてなんだっけね。あれは私の孫の宗一郎っていうんだけど、この新しい商品を運んでもらってたの。あの子、運送業っていうものを運ぶ仕事してるから」
その後、一樹達はおばあちゃんに何か思い出したことは無いか質問したが、新たな情報を得ることはできなかった。
「はあ、どうしよう…」
一樹は八方塞がりになったことで落ち込んでしまった。
それを慰めるようにキャラメルが一樹の頭を頭をなでていた。
「可愛い」
突然、唯がそんなことを言ったのでみちるは少しだけ驚いて唯を振り返ると、唯は塀の上にいる猫を見ていた。
「ふふ、ほんとに唯は猫が好きね」
「あの猫、いつもここにいるよな。なんかうまいもんでもあるのかね?」
大樹が発言を聞いた瞬間、一樹はそれだっと勢いよく立ち上がった。
全員が驚いて一樹の方をみた。一樹は猫に近づいて行くと、キャラメルの両脇に手を入れて持ち上げて猫に近づけた。
「キキキっキキー?キキキキ」
「にゃーにゃにゃ。にゃーにゃーにゃー」
キャラメルは納得したようで猫との会話を止めたので一樹はさっきまで座っていた椅子に戻った。
「キャラメル君、報告を」
一樹がそういうと、キャラメルはびしっと敬礼をしてから、
「キキーキッキキ」
「ほうほう。それで?」
「キキキー」
「なるほどね、これで事件も解決だ!!」
一樹のガッツポーズに横やりが入った。
「ちょっと、待ちなさいよ。なんでキャラメルは猫と話せてるのよ?」
「え!?みちる知らないの?猿は猫としゃべれるんだよ」
「え!!そうなの?しらなかったじゃなかった、し、知ってたわよ」
みちるは必死の取り繕った様子だったが、後ろにいた唯がこそっとみちるに耳打ちした。
「みっちゃん、お猿さんは猫とは普通はしゃべれないよ」
それを聞いたみちるの顔はみるみる赤くなっていき、
「だ、だましたわね。かーーずーーきー」
「いやーまさか、信じてくれるとは。アハハハ」
悪びれる様子もない一樹をみちるが追い回していると、
「みちるー、そこまでにしてやれー」
大樹がみちるに呼びかけた。
「一樹が事件が解決って言ったからには何か分かったんだろ?」
「そうなんだよ。あの猫のおかげでね!!」
一樹は大樹に手を前にだして親指を立てた。
みちるが落ち着いた後で、一樹は猫に聞いたことを話し始めた。
「キャラネルが猫から聞いたのは、目撃情報だったんだけどさ。あの日、おばあちゃんが家を出てからすぐにトラックが来てね。そのトラックに乗っていた若い男がお菓子を持って行ったんだって」
「その男の情報は何かなかったの?」
「まあまあ、落ち着いて。キャラメルもそのことを聞いたんだって。そしたら、さっき店を後にした男だったって言うんだよ」
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