第7話 そう言えば、あいつはどうしたんだろうな

 俺が猫の国にいた頃の話をふと思い出していた。


 悠紀流からナコの話を聞くことができて、少しだけ心のゆとりができたのかもしれない。


 不思議な姫さんだったが、だから、俺の国の王子の事を思い出したのかもな。


 猫の国にも、守護を担う一族がいた。


 半獣半人の、獣人とも呼ばれていた一族で、それが王家でもあった。


 ある日、幼い王子に会う機会があったんだ。


 黒猫の獣人で、瞳はキラキラとした金色をしていた。


 キラキラと目を輝かせて、人間の世界へ行きたいと話していたんだ。


 あいつの、ナチ王子の言葉を聞いて、俺も人間界に興味を持ったんだ。


 ヨチヨチ歩きで、言葉もまだ拙なかった王子は、すぐにでも人間の世界へ行きたそうにしていたが……


 一度猫の国を出てしまうと、その生を全うするまでは戻ることは許されない。


 あの小さな王子が、そうそう国から旅立たせてもらえるとは思わないけど、いつかあいつも人間の国に行く日がくるんだろうな。


 この世界ではまだ獣人といった存在に出会っていない。


 ナチがどこかの世界へ行ったのか、今の俺には知る術はない。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る