魔王と勇者が仲良くなる方法

いろは

仲良し計画

 右の方で大きな音がしたと思えば音は移動し、後ろの方から聞こえ怒鳴る声がする。毎日のことと言うか3時間くらいで同じことになる。

 先生たちは2人の喧嘩を止めるたびものすごく疲れていた。

 学校中有名な2人が喧嘩をするたびに「またか」「迷惑な」と距離をおく。

 教師4人がかりで2人を引きずっていくのが見え、ため息をついて開いていた教科書を閉じた。


 「ジーノどうにかできないのか。親友だろう」

 「いやいやいや、ただの幼馴染だから」


 ただのを大きめの声と強調する。


 「どうにかできないのか、あれ」

 「仲良くさせてくれ、頼む」


 同じクラスの人たちは毎日巻き込まれるので苦労しているのだ。仲良くできないなら、場所を考えて喧嘩してくれればいいのにと思う。

 教師たちは来年は絶対同じクラスにはしない、端と端の教室にしようと誰もが心に決めていた。

 ジーノも仲良くできないものかと思っていた。顔を合わせると喧嘩していた。喧嘩するほど仲がいいということにしていた。


 「僕だけでは無理だから皆も考えてほしいんだけど」


 2組全員で魔王と勇者を友達計画を立てた。


1,好きなもの共通話題で仲良くなる

 

 「趣味とかで仲良くなるでしょ」

 「イベントとか買い物とか行くよね」

 

 クラスの女子の意見を実行してみることにした。

 ジーノもそうだが、クラス全員好きなものの話など聞いたことがないので、好きなものを聞くことにした。もちろん聞くのはジーノだ。


 魔王の場合


 「好きなもの?魔物」

 「…食べ物とかないの?」

 「チョウドナのステーキ」


 それ魔物じゃない?食べるほど好きということか。


 勇者の場合


 「好きなものか、遊園地と剣」

 「…好きな食べ物は」

 「肉」


 肉が好き共通点があり食べ放題に行くことにした。

 クラスでも行ってみたいという人がいて、10人で行くことになった。


 結果

 どちらがたくさん食べれるか対決が始まり、吐きそうなほどを食べた。同じ量を食べて終了した。

 殴り合いではないだけましなのだろうが、吐きそうになる2人の口をあかないように魔法をかけたジーノ。食べ物と作ってくれた人に失礼だと思うので絶対吐かせない。

 次の日は仲良く2人は腹痛で学校を休み、平和な1日を誰もが過ごした。

 仲良し計画に、仲良くならなくても競争で迷惑かけなければという選択肢が増えた。



2,共同作業で仲良くなる


 「同じこと一緒にやると仲良くならない?」

 「同じ目標があるからその可能性はあるかも」

 「明日、実地訓練あるよ」

 「くじ引きだよ」

 「先生に頼もう」


 クラス皆で担任に今回の計画を話、2人を同じ班になるようにお願いした。   

 最初は渋った。だが目標に向かって団結したクラスに感動しつつも、仕事が増えず平和になるならと考え協力することにした。


 実地訓練


 先生の協力で同じ班になり、不正くじ引きに気が付かない2人は先生に文句を言っていた。不正だと疑ってない2人はいい子だなと思うジーノ。

 実地訓練は簡単なものである。洞窟に住む魔物の捕獲で、攻撃をしてこない魔物なので走って捕まえるだけ。

 10ある洞窟に1班ずつ入っていった。


 結果

 2人の入った洞窟に5か所か出入り口を作り、魔法も使ったので怒られる。

 洞窟の魔物はもちろん逃げ出し、2人で捕まえろと言われていたがクラス全員で捕獲することにした。今回の2人を同じ班にした責任を感じて。

 2人にするのは早かった。



3,嫌いなもの

 辺り一帯が穴だらけになる危険性がある。



4,危険を2人で乗り越え仲良くなる


 「映画で危険を乗り越える2人は、とかあるじゃん」

 「恋愛映画でしょ」

 「2人の危険ってなに?お互いじゃないの」


 これについては考えてみることにした。


 3日たったが2人が共に乗り越えられそうなものがない。仲良し計画の紙をクラス全員で持っているが、誰も思いつかないようで書き足される様子はない。

 ジーノは2人のことを見ていたが、特に見つからず悩んでいた。

 警報が鳴った。


 「亡霊が学校の敷地内に侵入!」なんども繰り返され、生徒たちは慌てて移動する。

 亡霊は上級ではないと倒せない厄介な魔物なのだ。体を乗っ取ったり亡霊にしたりとしてくる。なれてない者には亡霊なのかもわからず、疑心暗鬼になり殺し合いが始まったこともある。

 戦うすべがないものは逃げるしかないのだ。


 「生徒は指定されたシェルターにクラスごと移動するように。走らず、押さずです」


 ジーノたちクラスはシェルターから遠い教室で授業であったため、速足でシシェルターに向かっているとクラスの誰かが「あれ亡霊じゃ」と言った。

 シェルターがある場所に亡霊が浮いていたのだ。


 「行けないよ。教室で立てこもる?」

 「安全じゃないよ」

 「どうすれば!!」

 「こないだ2年生にあの森の中に廃止されたシェルターがあるって聞いたよ。廃止されたといっても全然使えるって言ってた」

 「それ俺も聞いた。少し前まではそこ使ってたって」

 「そこに行こうよ」

 「場所は知ってるからついてきて。距離があるから走るよ」


 2年生から聞いた男子が走り出すと後について走り出す。

 森の中の草木で隠されているが、足場は悪く思ったより走れない。転ぶ人もいて声をかけ手を貸しながら目指す。


 15人での移動は目立ち亡霊に見つかっていた。気が付かない15人は周りを気にしていたが亡霊の攻撃を受けて吹き飛ばされた。

 「痛いよお」「足に枝が!!」「怖いよ怖いよ」と動けなくなっていた。    

 ジーノも吹き飛ばされ右肩から幹にぶつかった。あまりの痛さで声も出ない。寝ていた体を起こすが、右腕は外れたのか折れたのかわからないが自分の意志では動くことない。左腕で体を起こすとクラスメイトは意外にも近い距離にいた。


 亡霊が2体が近寄ってきて短い悲鳴が聞こえた。近くのクラスメイトに手を伸ばした亡霊が見え震える足で立ち上がるジーノ。

 亡霊2体は同時に吹っ飛び魔王と勇者が武器を持ち立っていた。亡霊はすぐに2人向かって魔法を放った。魔王が無効化し勇者が攻撃を仕掛ける。

 魔王が呼んだ魔物がクラスメイトを背に乗せる。

 クラスメイトは息の合った怒涛の攻撃に目が離せないし唖然としている。あの顔を合わせたら喧嘩する2人がだ。

 声を合わせた魔法で亡霊と辺りの木々を消滅させた。


 誰かがぼそりと「強すぎね」と言った。それに心で頷いた。

 いつもの喧嘩は本気ではなかったと知る。本気出したら星の半分なくなるじゃないかと考える者が何人かいた。


 魔王と勇者がジーノに近づいた。


 「ジーノ、腕ぶらぶらしてるけど」

 「たぶん折れたか外れました」

 「なんで敬語?」

 「医務室行くか。手伝うか?」

 「俺は歩けるから、手が必要なやつを頼む」

 

 勇者はクラスメイトに声をかけていくが、魔王の魔物に乗っているので魔王の命令で魔物は医務室に向かって走っていく。

 勇者の手伝いで魔王の魔物に乗り、ジーノは医務室に向かった。


 2人は森の一部を消したので注意を受けた。同時にクラスメイトを守ったので褒められた。

 亡霊の被害は建物の一部と森の一部だけの損失と、ケガ人だけで済んだので奇跡に近かった。亡霊が出ると村が無くなると言われているのにだ。


危険を乗り越えた2人で仲良くなった。










と思うだろう。


仲良くなっていなかったのだ。



クラスメイトの複雑な気持ちで見られながらも今日も仲良く喧嘩しています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王と勇者が仲良くなる方法 いろは @sikisai12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ