第2話 電脳セレナーデ Ⅱ

 「ここからどこへ逃げよう。とりあえず遠くへ行かないと…!」


 僕はその子の手を取りながら学校の階段を駆け降り、一階の下駄箱目掛けて走った。まずはこの学校から出ることが最優先だ。


ドンッ!「うわぁ!」


 途中、部活動中の吹奏楽部の学生達とすれ違い様にぶつかった。


「せんせ、って…え?あの子って不登校の…」


「何してるんだろう…」


 僕たちのことを話してるようだ。まあ、無理もない。…ってそんなこと考えてる余裕もない…。とりあえず学年主任はまだ追っかけて来てないみたいだ!急がなきゃ!僕達は学生を無視して駆け出した。


 ようやく下駄箱に着く。急いで靴を履き替えるが、異様に慌てる僕たちに向けられる学生達の視線が痛い。状況を説明する気にもなれないし、わかってもらえる自信もない。それに僕は何よりこの子を助けたい。大切だから…。


 靴を履き替え、校庭に出た時にはもう空が暗くなりはじめていた。遠く校庭の真ん中に後片付けを始めるサッカー部の学生達が見える。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


「大丈夫?走れそう?」


 その子はだいぶ疲れた様子で息を切らしていた。身体中汗だくで、疲弊しているようだった。まだ教室から校庭までしか走ってないけど、普段じっとしているこの子にとっては大きすぎる運動だ。

僕は見かねてその子に聞いた。


「僕がおんぶするから、乗って!」


「…うん!」


 僕達は急いで校門を出て、そのまま駅へ向かった。

 学年主任の男はまだ追いかけてこない、いやもうさっきの電撃で死んでいるのだろうか…だとしたら僕達はもうなおさらあの学校には戻れない。いやもう普通の生活には戻れないだろう。そもそもどうしてこの子の体から電撃が出た?これからどうする。とりあえず電車に乗って遠くへ遠くへ…。

 そんなことを考えてるうちに、最寄りの駅に着いた。


「…せんせい…大丈夫…?私降りるよ。」


「はぁ…はぁ…はぁ…わ、わかった…」


 いくら僕が男とはいえ、女子高生をおんぶしながら休憩無しに数キロを走り続けるのは重労働だった。

 そうだこの子に水分補給を…。


「お前か?女子高生誘拐してるって男は。」


「…は?」


気づくと僕達は警察官数人に囲まれていた。

学校の誰かが通報したのか。クソ!どうする…。


「とりあえず交番で話聞くから、来い。女の子は早く家に帰りなさい。」


警察官が僕の腕を掴もうとしたその時。


ビリビリビリビリ!!!!バチバチバチ!


「んがっ!!!!!」バタン…


 電撃だ。しかもさっきよりも強力。

僕はその子を見た。


「はぁ…はぁ……」


その子の体にはまだ微力な電撃がまとわりついていた。


「こ、この女を捕らえろ!!バケモノめ!」


「きゃあああああああああ!!!!!!」


ビッビリビリビリビリビリビリビリビリババババババババババ!!!!!!!!!!


 すごい電撃エネルギーだ…どうなってる…これじゃ誰も近づけない…。


「せんせ!!先生!!!!来て!!!」


もう気づくと駅構内は騒然としていた。見て見ぬふりをして去る者、スマホで動画を撮影し始める者、ただ奇妙に見つめる者、様々だった。


グワン…グワン…


電撃の衝撃で駅構内の照明がゆらゆらと点滅し始めた。

早くあの子を連れて逃げなきゃ…。


 僕は夢中でその子の手を握った。不思議と電撃は止まった。

おそらく今の衝撃で電車は止まっていることだろう…どうすれば…。

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