第20話 ミーシャの想い

◆ミーシャ視点


キャァァァ!やった!

リオナ様に認められた。

これで私も彼の傍にいてもいい。


しかも、相談役 兼 恋人役として。



正直、屋敷に招待してもらうまでの自信はあったけど

あの2人の間に入り込める自信は無かった。


彼の秘密に気付き、ここ数日、自分をどう売り込むか?そればかり必死に考えていた。

ここまで何かに本気になったことは今まで無かったと思う。



私の家は『魔導師』として有名な家で、そこの末っ子として生まれた。


「欲しい物は自分の頭と力と行動力で勝ち取る」

そのように教わり、今まで実践してきた。


うちの家系に多く現れるスキル【魔力感知】にも助けられ

上級学校にはトップクラスの成績で入学。

ゆくゆくはA級冒険者でも目指そうかな。

そんな風に考えていた。


そんな私が珍しく異性に対して興味を持った。


一般的には考えられない数のスキルを使用し、下級職にも関わらず、私よりも魔力の高い子がいる。


どうして?理由が知りたい。


女の武器を織り混ぜ、本人に迫っても、はぐらかされる。


彼との試合に負けた日から

「知りたい」その想いはより一層強くなった。


そもそも、彼の行動パターンはおかしい。

普通、これから当たる対戦相手の研究をする場面で、彼は1人学外に抜け出していく。


毎日毎日、どこに行くの?

彼の後を尾行する。

彼は飛行訓練、植物園、食糧保管庫を巡っていく。


しかも、誰かに話し掛ける訳ではない。

ただ、【飛行魔法】【植物魔法】【氷魔法】を使っている所を眺めているだけ。


何がしたいの?


午後の試合が終われば、ダンジョンの低層でレベル上げを行い、【飛行魔法】の練習をして帰っていく。


さっぱり意味が分からない。


意味が分かったのは2日後、突然、彼が【植物魔法】を使った時だ。


えっ!?


どういうこと!


私は【魔力感知】LV15で覚える【マーキング】で彼が使用する魔法は全てチェックしていた。

今まで使えなかったのは間違いないはず。


それが急にどうして?


あっ!


もしかして、彼は一定期間眺めれば、その魔法を使えるようになる特殊スキル、またはそれに近い何かを持っているのでは?

それなら、彼の魔法の数々に説明が付く。


いや…違う!

魔法に限った話ではない。

もう私の持ってる【魔力感知】が使えるのだとしたら?


そう考えれば…


そうだとすれば、私が彼に負けた理由も、今日、彼が私よりも格下の『魔法使い』相手に負けた理由も説明できてしまう。


【魔力感知】により、何の魔法がどれくらいの力で放たれるか?

何となくでも分かれば受け流すのは容易になる。

言い替えると、彼は魔法を受ける流れは得意だけど、受けにまわられると、途端に決め手に欠ける。


私との試合展開と今日の試合展開が正にそれに当てはまる。


あははは、昔の私と同じじゃない。

私もよく受けに回ってばかりだと叱られたっけ。


半ば確信しているけど、まだ推測の域を出ない。


すぐに私は彼との再戦を希望した。

ほら、やっぱり!


すごい!すごい!すごい!すごい!

彼は才能の原石だ。

私なんか比べ物にならない。


あの年上の彼女さんを見てても思う。

彼には何らかの事情があるのかもしれない。


でも、そんなの関係無い。

私の手で彼を育ててみたい。

今は迷走してるけど、きちんと指導して方向性を決めてあげれば、彼は一気に伸びる。


彼が駆け上がっていく様を隣で見ていたい。

できれば、友人としてではなく、彼の女として。


そう思ったら、いても立ってもいられなくなった。


【魔力感知】を使える私なら、魔法に関しては色々と指導もできる。

長期休暇に入る前に彼との関係を深めたい。


でも、あの彼女さんとの関係に入り込む隙間は無いと思う。

彼自信は隙だらけに見えるけど、あの2人の関係は恋愛以上の何かを感じる。

切り崩せる気がしない。

それをすれば、きっと私が排除されてしまう。


長期休暇まで時間が無い。どうすればいい?


そう思っていた時だった。

ロザリーが長期休暇は彼に付いていくと言い出した。


あはは、ナイス!ロザリー。

これに便乗しない手は無い。


彼はとても嫌そうだったけど、有無を言わせない。

私は欲しいと思った物は、自分の頭と力と行動力で手に入れてきた。

彼だって例外では無い。

欲しい物はどうしても欲しい。


彼女さんと話さえできれば、隙間に入り込めるかもしれない。



そして、今日のリオナ様との会談。

提案書までしっかりと作って挑んだ。

何度も読み返しては修正した。


まさか、リオナ様が領主様とは思わなかった。

それでも、彼とリオナ様の関係さえ分かれば、いくらでも提案できる。


彼のスキルを生かして

あれがしたい。これもしたい。


こうすれば、領地の収入も増える

私にはそれができる伝手もある。

リオナ様と話していて楽しかった。


私の要望は2番目でいい。

彼の彼女として認めてもらいたい。


私が2番目で加わることによる彼の成長、領地への貢献、女除けとしての効果も加えて説明した。

もちろん、リオナ様とナユタの関係を最優先にする事を強調して。


自分でも出来すぎ。改心のプレゼンだったと思う。


彼を貴族まで導き、その時、私が望めば、第2婦人としての地位も約束してもらった。


その分、彼の成長と領地発展という結果を出さなければいけないし、彼が私を女として認めれば、という条件付きではあるけれど。


半年後の長期休暇までには私を認めさせてみせる。

彼の成長という結果も、女としての私も。



ふふ、ナユタくん。

覚悟しておいてね。

もう私はあなたに遠慮しないからね。


いつか、私が必要だって言わせてみせるから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る