第19話 奥様 ミーシャとの取引

◆リオナ視点


「リオナ様。今日はお時間を下さり、ありがとうございます。

ナユタ君からはご領主様とは伺っておりませんでしたので驚きましたが。」

「ふふふ、人口も少ない。お金も無い。田舎の領主だもの。

そんな気を使う必要もないわ。」

「ありがとうございます。

ところで、リオナ様がご領主様ということは、ナユタ君は貴族を目指すということですか?」


ふふふ、この子は本当に賢い子ね。

行動力も抜群だし、どういう育て方をされたのかしら?


「ふふふ、理解が早くて助かるわ。

それであなたの手紙に興味を持ったの。」

「ありがとうございます。

お話をする前に、先に試しておきたい事があるのですが、少し魔力を高めるお許しを頂いてもよろしいでしょうか?」

「ふふふ、何をするつもりなのかしら?」

「もちろん、危害を加えるつもりはございません。

私の推測通りなら、ナユタ君は血相を変えて、部屋に来ると思います。」

「ふふふ、それは面白そうね。。

是非、試してちょうだい。」

「では、失礼して。」


そう言って、ミーシャは魔力を高めだす。

この程度の魔力で抑えるなら、何かのスキル持ち以外は気付かないわよ?


1分後…

「奥様!ご無事ですか!?」


ミーシャの言う通り、ナユタが血相を変えて部屋に飛び込んできた。


どういうこと?

まさか、提案書にあった特殊スキルが?


「あら、どうしたのかしら?」

「いや、その…魔力が…」

「ふふふ、ミーシャに魔法を見せてもらってただけだもの。

何も心配することはないわ。」

「はい…。奥様。失礼しました。」


ナユタが首を捻りながら、部屋を出ていく。


「ふふふふふ、あなたの言った通りになったわね。

話を詳しく聞かせてもらおうかしら?」

「はい。実は私は【魔力感知】のスキルを持っています。

このスキルが…」


◆ナユタ視点


おかしい。

さっきのは奥様に魔法で危害を加えようとした時の魔力の膨らみ方だ。


魔法を見せるだけなら、あの魔力は必要無い。

狙いも奥様の方を向いていた。

【魔力感知】のレベルが低くても、この近距離ならそれぐらいは分かる。


一体どうなってる?


奥様とミーシャの話し合い…奥様は秘密だと言っていたけど…

正直、あまり良い感じがしない。


奥様。何も無ければいいんですが…




3時間後、奥様の部屋に呼び出されたナユタに驚きの言葉が伝えられた。


「ふふふ、ねぇ、ナユタ。

今後、学校ではミーシャがあなたの恋人役をしてくれることになったわ。」

「えっ…奥様。

仰っることの意味が…よく分かりませんが…。」


僕は耳を疑った。

さっき、初めてキスをして…幸せに浸っていたばかりなのに。

奥様、どうして?


「あら?難しいことを言ったつもりはないわ。」

「その…意味が理解できませんので…。」

「ふふふ、ねぇ、ナユタ。

貴族になる為に何だってやりますって言葉は嘘だったのかしら?」

「それとこれとは全く別の話だと思うのですが?」

「あら、今日は酷く抵抗するのね。

ふふふ、私のこと思ってということかしら?

それなら嬉しいわ。」

「それでしたら…」

「ねぇ、ナユタ。これも大事なことなの。

これからはミーシャがあなたの事をサポートしてくれるわ。」


奥様、どういうことですか?

貴族になるのに恋人役が必要とは思えない。

僕には奥様がいて下されば、恋人役なんか必要としていない。


「ナユタ。改めて、よろしくね。」

「ミーシャさん…」

「ナユタ。ミーシャさんじゃなくて、ミーシャでしょ。

学校が始まったら恋人役なのよ。


それと、この後、明日からの初級ダンジョン攻略の打ち合わせもしないと。」

「ふふふ、ナユタ。あくまでも恋人役だから。

でも、ナユタがミーシャのことを気に入ったのなら、少しくらいなら考えなくもないわ。

他の女は絶対に認めないわよ。」

「奥様!」

「ふふふ、ミーシャはちゃんと自分の立場を弁えた子だもの。

ナユタ、今後はきちんとミーシャへ協力するのよ?

いいわね?」

「そ…そんな…」

「ふふふ、ナユタは男の子でしょ。

そろそろ覚悟を決めなさい。」



こうして、奥様とのキスの余韻に浸っていたナユタは

訳も分からないまま、ミーシャが恋人役を務めることになった。

何度聞いても、2人の話し合いの内容は教えてもらえない。


恋人役の練習と称したミーシャの接触は激しさを増していくことになる。。。

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