第14話 ミーシャ 気持ちの変化とナユタの隠し事

◆ナユタ視点


【魔力感知】を覚えた僕は囲まれている事に当然、気付いていた。


この【魔力感知】が非常に便利で

スキルレベルが上がれば

誰が、どんな魔法を、どのくらいの力で、打とうとしているかまで、分かるようになるらしい。


もちろん、覚えたての僕は囲まれているのに気付くくらいの物でしかないけど。


2…4…6…8…、9人か。

さらに離れた所に2人。

この2人も仲間かな?


いつものように殴って終わらせてくれるつもりじゃない。

武器まで持って来ているということは、良くて半殺しぐらいかな。


気付かない振りして、人目に付かない場所まで誘導しよう。



「おい!ナユタ。

この前はよくもやってくれたな。」


サブロウだ。

僕にボコボコにされてから、敗けが続いているらしい。

4勝8敗。もう特進クラスに残るのは絶望的だと言える。

ここから勝てれば、その限りではないけど。

要は八つ当たりを兼ねた仕返しという訳か。


「ジロウ兄さん、コイツはいくつか魔法を使う。

気を付けてくれ。」

見ない顔が何人かいると思ったら、なるほど上級生か。


「あの…これだけの人数で僕を囲んで、何のご用でしょうか?」


一応、聞いておこう。

勘違いで魔法攻撃するのは気が引ける。


「うちの弟がさ。

お前のせいで敗けが続いているって言うじゃないか。

どう責任取ってくれるのかと思ってさ?」

「すいません。

最初の2敗だけなら、まだ理解できますが。

他の6敗は実力だと思うのですが?

サブロウ君、その…思ってた以上に弱かったので…」

「なっ…」


イジメにはうんざりしていたのではっきりと伝える。


「お話がそれだけなら、帰らせてもらっていいですか?」

「このまま、帰れると思ってるのか?」

「帰れないなら、押し通るだけですが…」

「おまえ、9人相手に勝てるつもりか?」

「ちょっと厳しいかもしれませんね。

何人かは取り逃がすかもしれません。」

「はぁ?」


そう言うと、9人が武器を構えだした。

仕方ない。

さっさと終わらせてしまうか。


サブロウが盾を構えて走ってくる。


【飛行魔法】を使い、空に逃れる。

さぁ、ここからは空からの一方的な【火魔法】の爆撃だ。


「ギャァァァァァ!」


痛っ、石を投げてきた。

確かにそうするしかないんだろうけど。


「あちちっ!」

「ぐぅぁぁぁ…」


そもそも、石と炎じゃ、勝負にならない。


皆さん、中級職っぽいし、1発で倒れることもないでしょ?

何度も何度も【火魔法】で焼いていく。


石では無謀な事に気がついたのか、散り散りに逃げ出していく。


リーダー格のジロウだけは逃がさない。

ここでしっかり叩いて置かないと、何度もしつこく襲ってきかねない。


「あちっ!ちょっ!もうやめてくれっ!」

「ギャァァァァ!」




「ふぅぅぅ、やっと片付いた。」


そう呟いていたら、ロザリーが声を掛けてきた。


「しっかし、派手にやったわね。

せっかく助けてあげようと思ったのに出番が無かったじゃない。」

「ロザリーに助けられるようじゃ、僕もヤバイかな。」

「はぁぁ?言ったわね。」

「ちょっ!嘘、殴らないで。

いつも助けて頂き、ありがとうございます。」

「本当に。

それにしても、空から一方的に魔法攻撃だなんて、ちょっと凶悪過ぎない?」

「だって、囲まれたから…」

「いや、そうだけどさ。

私との対戦の時はあれはやめてよね。」

「えぇー、どうしようかな。

だって、地上じゃ、ロザリーの速さに付いていけないし。」


◆ミーシャ視点


何あれ…

明日の対戦は私なのに、勝てる気がしなかった。


全勝同士の対決。

でも、実力差は明白だった。


空からの一方的な攻撃だけじゃない。

あれだけ、派手に攻撃したのに、MPの底が見えない。


私はもっともっと上を目指す。

こんなところで躓いている訳にはいかない。


でも、どうやっても勝ち筋が見えない。

嫌だ。負けたくない。


帰って明日の作戦を練り直す。

私は諦めない。



次の日、私はあっさり負けてしまった。

【雷魔法】も【風魔法】も【土魔法】で防がれていく。

途中からダメージを与えられるようになったけど

結局、攻めきれずにMPが切れてしまった。


やっぱりダメだったか。

でも…次はもっと戦える!


昨日までは思い詰めてたけど、ここまでやられれば逆に清々しい。次にも繋がった。


はぁ、でも悔しい。

あなたに勝ちたくて何時間も考えたのに。

やっぱり勝ちたかったな。


「さすがミーシャさんです。

今までで一番追い詰められました。

魔法の使い方がとても勉強になりました。

また、戦ってもらってもいいですか?」


降参した私にナユタ君はにっこり笑って、そう言ってくる。


ちょっと、ナユタ君、ズルいよ。

弱ってる私にそんな事、言わないで…

その笑顔で言われると、ちょっと意識しちゃうじゃない…


レベルは低いけど

スキルをいくつも使える不思議な子。


そう言えば、長期休暇明けは4人パーティーでダンジョンの10階層を目指すんだよね?

ふふ、私もあそこに入れてもらおう。


「ねぇ、ナユタ君。ロザリー。

休暇明けの4人パーティーは私達と組んでもらっていいかしら?」

「嫌よ。ナユタがいるから、【魔法使い】はもう必要ないし。」

「そう。じゃ、ナユタ君にお願いするから。

ねぇ、ナユタ君、お願い。」


私は彼の腕に抱き付いてお願いする。

認めるまで逃がしてあげない。


「ちょっ!ミーシャさん、離れて下さい。」

「認めてくれたら、すぐにでも離れるわ。

ねぇ、いいでしょ?お願い。」

「いや、でも…ロザリーが…」


ナユタ君、ダメよ。逃がさないからね。

次は耳元で囁く。


「ねぇ、こんなにお願いしてるのにダメかな?」

「いや、ちょっ!分かりました!

分かりましたから、離れて下さい。」


顔を赤くして、照れちゃって。可愛い❤️

ヤバイ…私も顔が熱い。ドキドキする。


あはは、ナユタ君の彼女さんがリングを両手に付けさせる気持ちがやっと分かった。


「やった!」

「ちょっと、ミーシャ、卑怯よ!」

「あら、ロザリー。

ナユタ君は私達とパーティー組んでくれるんだって。

嫌なら、他にいけばいいじゃない。」

「はぁぁ?何であんたにそんなこと言われなきゃいけないわけ?」

「さぁ、ナユタ君。こっちで打ち合わせしましょう。」

「ちょっ!こらっ!」



こうして、長期休暇明けの4人パーティーが決まった。


この日の奥様への手紙に、ミーシャとの出来事を書けなかった…。

書いたら最後、どうなるかが目に見えているからだ。。。


これは浮気ではないと呟いていたとか…いなかったとか…。

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