第3話 説明回と奥様の意地悪

◆ナユタ視点


奥様が僕のお暇を引き止めて下さってから

僕は朝と晩のお仕事以外は『火魔法使い』のレベル上げに戻った。


まずはMPを増やさないと満足に魔法も使えない。

MPが増えないと、レベル上げもまともに行えないからだ。

レベル上げの最中にMPが切れると、魔法使いなのに木刀で魔物を倒すハメになる。

休めばMPは回復するが、それだと効率が悪くなってしまう。


スキルLVが上がっても、そのスキルに応じたステータスは上がる。

しかし、それよりも職業『火魔法使い』のレベルを上げた方が上昇値が大きい。


奥様は領地の魔物にも頭を悩ませている。

その手助けもいつか僕がするんだ。

その為に『火魔法使い』のレベル上げは必須となる。



休みの日は午前中だけ『火魔法使い』のレベルを上げた後、商店街で【価格交渉】の熟練度を吸収する。


スキルを使う現場を求めて、商店街を歩いている。

周りから見ると、商店街をフラフラとさ迷っているように見えるらしい。


「はぁぁぁ。今日の奥様は可愛いかったなぁ。」

白いワンピースを着て、笑顔で手を振ってくれた。

そのお姿が眩しくて。

奥様…僕はそのお優しい笑顔だけで…ご飯2杯はいけます。


妄想に浸っていると、不審に思った少女が話し掛けてきた。


「僕ちゃん、さっきからフラフラさ迷って。

迷子かいな?」

「迷子ではありません。

【価格交渉】をどのように使うか現場を見たくて。」

「あんなん慣れやで。私はエミ。

僕ちゃんは?」

「僕ちゃんて…僕はナユタ、10歳です。」

「同い年やん。敬語はええで、仲良うしたってや。

スキルの使い方の勉強やろ。

友達のよしみでお勧めのスポットを教えたるやん。」


友達になった覚えは全く無いが、お勧めの場所を案内してくれるのは助かる。

エミに付いていく。


「ここはうちの親の店やねんけど、まぁ、入ってや。

ここなんかええと思うで。

商人も客もスキルを使うやん。

使うタイミングがまた大事なんよ。」

「タイミング?」

「そそそ、タイミングや。

【価格交渉】のスキルはタイミングが命や。」

「どういうこと?」

「ほら、今の客は最初から使ってきたやろ?分かる?

あれじゃ、あかんの。

ここからって時に使わんと効果も薄くなるんや。」

「へぇぇぇ、勉強になります。」

「そやろ、そやろ。

エミ師匠って呼んでくれてもええんやで?」


その後もエミは丁寧にスキルを使うタイミングを教えてくれる。

ただ、使えば良いっていう訳じゃないんだ。


「ありがとう。エミ。

今日はとても勉強になったよ。

友達に…なってくれるかな?」


そう言って、手を差し出し、エミと握手する。


「あら、ナユタじゃない。

女の子のお友達?もしかして、彼女かしら?」


あっ、奥様だ!

僕は…エミと握手した手を急いで振り払う。

エミ、ごめん。

奥様に万が一にも勘違いされたくない。


「今日、【価格交渉】スキルの使い方を教えてくれたエミです。

万が一にも彼女とかあり得ません。絶対あり得ませんから。」

「おまっ!自分から握手しといて、なんちゅう扱いや。しかも、強調して2回も言いよったで。

あれ?領主様やん。」


何かエミがブツブツ言ってるが、ここは聞き流す。

ごめんて…。今度、お詫びしに来るから…。


「ふふふ、エミ、ありがとう。

ナユタはうちの使用人なの。

お友達になってあげてね。」

「はい。ナユタ君とはお友達です。

こちらこそ、よろしくお願いします。」


◆リオナ視点


屋敷への帰り道。

ナユタと2人で歩いていた。



ふふふふふ、ナユタったら、エミの手をあんなに振り払わなくても。


女の子と握手してるのが見えたから

ちょっと意地悪で言ってみた「彼女かしら?」という言葉に物凄い勢いで反応していた。

子犬のような彼が可愛くて、ついつい意地悪してしまった。

ふふふふふ、それにしても、ナユタのあの様子がおかしくって。


ふふふ、これも嫉妬になるのかしら?

せっかくだし、私もナユタと手を繋いで帰ろうかな。


ナユタの手をそっと繋ぐとナユタが顔を赤くして困惑している。

「奥様…。」

「ふふふ、今日もスキルのお勉強頑張ってくれたのかな?」

「はい、奥様。早くお力になれるように頑張ります。」

「そっか、じゃ、ご褒美に手を繋いで帰ろうね。」

「えっ!…それじゃ、僕、もっともっと頑張ります!」

「ふふふ、ゆっくりでいいのよ。」

「だって…それだと、ご褒美が…。」


私と手を繋ぐだけなのに、こんなに喜ぶなんて。

ふふふ、本当に可愛いんだから。


いつかこの子も他に好きな子ができて、使用人を辞めていくのかな。


ふふ、それまで私のことを守ってね。

私の小さなナイト君。



ナユタ 10歳

火魔法使いLV4(228/400)


ステータス

HP 20/20

MP 40/40

体力 8

力  8

魔力 24

精神 16

速さ 12

器用 12

運  9


スキル

スキル吸収LV1(449/1000)

生活魔法 LV3( 50/300)

回復魔法 LV1( 50/100)

火魔法  LV2( 60/200)

価格交渉 LV1( 97/100)


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