第2話 奥様の呟きと価格交渉
◆ナユタ視点
奥様が呟いたその一言が切っ掛けだった。
「はぁぁぁ。財政が厳しいわ。
もう少し物資が安くならないかしら?」
僕にはその一言だけで動く理由としては十分。
この日から彼はスキル【価格交渉】を覚える為に商店街に通いつめた。
自分が思っていた以上にこのスキルは使われている。
熟練度の吸収が明らかに早い。
生活魔法や回復魔法の時と吸収量が何倍も違う。
商人だけじゃない。冒険者や買い物に来ている母親まで、このスキルを使用しているということか。
10日後、ナユタは【価格交渉】のLVが1になり、スキルを覚えることができた。
これで奥様のお役に立てるかもしれない。
早速、奥様の所に報告に行った。
奥様に喜んでもらえるかな。
そう思うと自然とナユタは足早になっていく。
「奥様。【価格交渉】のスキルを覚えました。
僕に何かお役に立てることはございませんか?」
「ふふふ、ナユタ、ありがとう。とっても賢いのね。」
やった!奥様に褒めて頂けた。
ナユタは嬉しさの余り、顔をほころばせた。
「でもね、ナタリーが【価格交渉】のLV3を持っているから大丈夫よ。」
ぁぁ…なんだ。
せっかく、奥様に喜んでもらえると思ったのに…。
そう言えば、確かにみんなスキルを使ってたからな。
それだけの人がこのスキルを持ってるということか…。
ナユタは大きく落胆した。
「ふふふ、ナユタ。
ナユタの気持ちが嬉しいのだから。
そんなに肩を落とさないで。」
「いえ、奥様、もう少し勉強して出直して参ります…。
では失礼します…。」
◆リオナ視点
ふふふ、ナユタ、可愛いわ。
私の力になれる。
喜んで欲しいと思ってくれたのかな。
パッと笑顔になったと思ったら、あんなに落ち込んじゃって。
ふふふ、ナユタったら子犬みたい。
あの子は賢い子だ。
いつだったか、物資が安くならないかしら?と悩んでいたのを見ていたのかな。
ふふふ、でも、いつも私の為を考えてくれるのは嬉しい。
しかし、本当にナユタは自分に厳しいんだから。
10歳でスキルを4つも持ってるだけで、十分凄いことなのに。
ちょっと可哀想な事をしたかしら?
後で慰めてあげようかな。
食後、ナユタが私の所にやって来た。
「奥様、私事ですが、しばらくお暇を頂きたいと思い、御報告に伺いました。」
「えっ…?」
ナユタが深刻な顔をして、使用人を辞めたいと言ってきた。
何があったのかしら?
「今の私では奥様のお役に立てません。
力を付けて出直して来たいと思っています。
だから、どうか…僕の我が儘を聞いて下さい…。」
ナユタは必死で涙をこらえ、私に訴えてくる。
ふふふ、本当にこの子は真っ直ぐなんだから。
「ねぇ、ナユタ。
そんな理由で屋敷を出ることは許しません。」
「でも…奥様…」
「ふふふ、いつもあなたが私の為に頑張ってくれているのは知っているわ。
私はその気持ちが嬉しいの。
だから、私の側にずっといてちょうだい。」
そう言って彼の頭を撫でてあげた。
ナユタはそれが琴線に触れたのか、涙をポロポロと流し始めた。
「はい、奥様。ありがとうございます。
ずっと…ずっとお側に仕えさせて下さい。」
私はナユタが泣き止むまで、抱きしめてあげた。
これを見ていたナタリーとメアリーもニッコリ微笑んでいた。
ふふふ、あなたはみんなから愛されているのですよ。
「ふふふ、ナユタ、そんなに急がなくても、ゆっくりでいいの。
大きくなったら、私を助けてちょうだい。」
そう言って、私はまた頭を撫でてあげる。
ふふふ、本当にこの子は可愛いいんだから。
ナユタ 10歳
火魔法使いLV3(168/300)
ステータス
HP 17/17
MP 30/30
体力 7
力 7
魔力 17
精神 13
速さ 10
器用 10
運 8
スキル
スキル吸収LV1(287/1000)
生活魔法 LV2(140/200)
回復魔法 LV1( 45/100)
火魔法 LV1( 55/100)
価格交渉 LV1( 1/100)
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