恋する少年が奥様に捧げる成長譚
彩都と
第1話 奥様と子犬のような少年
あぁ、奥様、今日も美しい…
ナユタは奥様に今日も見惚れていた。
8歳の頃、奥様に拾われて以来、子爵の屋敷で使用人見習いとしてお世話になっていた。
去年、旦那様が魔物の討伐中に襲われ、お亡くなりになられ、リオナ様は24歳という若さにして未亡人になられた。
落ち込む奥様を僕が…僕が救ってあげたい。
僕はこの世界に転生し、小さな村に生まれる。
前世の記憶があると言っても、何かできる訳でもない。
とても賢い子供。それくらいのもの。
新しい父や母と平和に暮らしていた。
それが…ある日突然、村が魔物に襲われ、両親を目の前で殺された。
明日からどうやって生きていけば…
そんな時、たまたま視察に来られていた奥様が僕を拾ってくれた。
毎日、ナユタ、ナユタと可愛がって下さった。
今度は僕が奥様を救って差し上げる番だ。
そして…いつか大恩ある奥様を僕が幸せにしたい…。
そう、僕は奥様に恋をしている。
ナユタには秘密がある。
聞いた事もない特殊なスキルを持っていた。
「スキル吸収」
人は職業や経験に応じて、スキルを覚えていく。
覚えたスキルは使えば使う程、熟練度がたまり、スキルが成長していく。
その熟練度の一部を分けてもらい、一定値まで貯まれば、ナユタもそのスキルを覚える事ができる。
・目の前でスキルを使ってもらわないと熟練度が吸収できない
・吸収するスキルを1つだけ選択。同時に複数のスキルを吸収できない。1日1回のみ変更可能。
等の制約はあるようだが、破格のスキルと言っていい。
もちろん、このスキルのことは誰にも言ってない。
言えば最後、どんな目で見られるか分からないから。
スキルに目覚めてから、ナユタは奥様のお役に立ちたい一心で熟練度を吸収してきた。
まず、使用人として屋敷で認められるよう【生活魔法】の熟練度を吸収した。
(クリーン)や(ライト)等の使用人として、欠かせないスキルを覚えるからだ。
次に奥様が怪我をされたのを見て【回復魔法】の熟練度を吸収した。
これで奥様をいつでも癒して差し上げられる。
そう思っていたら、ここで1つ問題が発生する。
スキルを覚えてもレベルが低く、MPが少ない為、魔法の使用回数も少ないのだ。
奥様に必要とされたい。
その一心でMPを増やす為、思い切って『火魔法使い』に転職。
教会で転職する為に2年間貯めてきた給金を全て使い果たした。
最近では使用人の仕事を朝と晩にこなしながら
昼間は町の外でスライムや角うさぎを倒し、レベル上げに没頭していた。
◆リオナ視点
ふふふ、ナユタ、可愛い。
去年、夫を亡くしてから
この子は毎日のように私を励ましにきてくれる。
私に気があるのかもしれない。
私といつも目が合うし、呼ぶと嬉しそうに私の所に来てくれる。
もじもじしながら、上目遣いに私を見つめてくる。
あの表情は反則だ。
可愛い過ぎてキュンとしてしまう。
そんなあの子が可愛くて、ついつい私も頭を撫でてあげる。
すると、顔を真っ赤にして喜んでくれる。
私じゃなくても、可愛いがってしまうでしょ?
それに、あの子は不思議な子だった。
9歳にして【生活魔法】を覚えたと思ったら
10歳でもう【回復魔法】を使えるようになっていた。
突然、『戦士』の人が【回復魔法】を覚えることは確かにあるみたい。
それでも、立て続けにこんなに覚えるものだろうか?
【回復魔法】を使えるようになったあの子に聞いた事がある。
「ふふふ、ねぇ、ナユタ。
いつの間に【回復魔法】を使えるようになったの?」
「あの…奥様がお怪我されてるのを見て…
僕が治してあげたいって思ったら、いつの間にか使えるようになってました。」
あの子は照れくさそうに、そう言ってくれた。
ふふふ、本当に可愛くていじらしい。
今度、怪我を治してくれたら、抱きしめてあげようかしら。
ナユタ、喜んでくれるかな?
この子犬のように私に懐いてくれている少年は私のお気に入り。
いつかこの子もここから巣だっていくのかしら?
この話は奥様に恋い焦がれる少年の成り上がりの物語。
このしがない辺境の子爵領は、少年の恋心により発展を遂げていくことになる。
ナユタ 10歳
火魔法使いLV3(32/300)
ステータス
HP 16/16
MP 30/30
体力 7
力 7
魔力 17
精神 13
速さ 9
器用 9
運 7
スキル
スキル吸収LV1(224/1000)
生活魔法 LV2( 89/200)
回復魔法 LV1( 43/100)
火魔法 LV1( 25/100)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます