転生したら、変態王子と呼ばれていた

 ピーター・パークとカイト、キースの三人が、一時間後にニコニコしながら帰って来た。

 無事に買い物が出来たようで、ちょっと臭い庶民の服と銀貨二枚、銅貨数十枚を手渡してくれた。

 この金額が妥当かどうかは分からないが、持ち逃げしなかっただけ良しとしよう。

 銅貨をピーターに全て渡してあげた。


「うむ。良くやった。」

「「「やったー!」」」


 思ったより報酬が多かったのだろうか。

 三人はかなり喜んでいる。

 しかし、ピーターは直ぐに真面目な顔になって話しかけてきた。


「それで、貴族様。お願いがある、じゃない、あります。俺達を専属の商人にしてくれ! じゃなかった、して下さい!」


 三人が胸に手を当て片膝をついた。

 家庭教師に最近教えて貰ったが、これがこの世界の略式の礼だそうだ。

 しかし、貴族、貴族って誤解しているな、この子達。


「えっと、なんか誤解してるみたいだから、はっきり言うね。俺は貴族じゃないから」

「「「え!?」」」


 三人の顔が一気に曇った。

 うんうん。

 それが見たかったのだよ。


「俺、王子だから貴族じゃないの」

「「「えーーーー!  噂の変態王子!?」」」


 うん?

 あれれ?

 なんなんだ?


 予想と違う反応だぞ。

 変態王子?

 誰それ?


 振り返ってみたが、誰も居ない。

 左右を見たが、やはり誰も居ない。

 うん。俺の事か。


「まじかー。変態王子かー」

「いや、逆に変態王子だからチョロいんじゃない?」

「変態王子だから、パンツ渡せば何でも言うこと聞くよ」


 うん。

 変態王子を連呼してイラっと来た。

 サッズ直伝の電撃を食らわしてやった。


「「「うぎゃぁああああ!」」」


 それから三人を正座させると締め上げて、事情を聞いた。


 どうやら巷では、王家の五男が変態王子として呼ばれているそうだ。

 侍女達のスカートをめくっては薄気味悪い笑顔を浮かべ、履いているパンツを脱げと迫るらしい。しかも女と見れば見境い無しで、老婆に向かってパンツを寄越せと脅すそうだ。そうして集めたパンツを両手に抱えると、後宮をご機嫌で走り回る、という噂が流れている。


 お、おう。

 多少は大げさだけど、事実がちょこちょこ入っていて完全否定出来ない。

 ち、違うよ、とは言えないな。


「うん。それ、俺だ。なんか…ごめん」

「い、いえ…王子の趣味ですから…」


 えーと。

 気まずくなった。

 話を進めてごまかすか。


「それでだ、ここに銀貨二枚が残った。これを元手に君たちに商いをして欲しい」

「「「商い?」」」

「そうだ。露店をして欲しいが、数は数えられるよな?」

「任せてくれ!」


 ピーターが胸をドンと叩いて嬉しそうだ。

 その一方で、カイトは少し困った顔で俺に質問した。


「商いって、何をするんだ? 仕入れをするにも銀貨二枚じゃあ…」

「うむ。なかなか良い質問だよ、カイト君。これから君たちは海草を使ってだな…」


 三人は俺の説明を熱心に聞いていた。

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