転生したら、スカートめくりばっかりして痛い目にあった

 最近の俺は身体能力が日に日に向上し、有り余る元気で後宮を走り回っている。しかし、ただ子供のように無意味に走っているのではない。前世で夢だったスカートめくりをしながら、疾走しているのだ。

 

「きゃぁああ!  もう殿下ったら!」

「今日のおぱんつはアカだ!」

「もう! 殿下のエッチ!」


 今日も廊下を走り抜けながら、出会った侍女全てのスカートに潜り込み、豪快にまくりあげてやった。


「アオだ! はじめて見たぞ!」

「殿下! 毎日毎日なんなんですか、もう!」


 俺はプロのスカートめくり師になった。命を狙われるような王子とかいうクソジョブはとっくの昔に廃業してやった。今はこの仕事をプロ意識を感じながらも楽しんでいる。


「まあ殿下ったら。私のような年増も構って頂けるのですね」


 この仕事をちょっとかじった程度の奴らは顔や体型、年齢を気にするが、そんなのは粋じゃない。本物のめくり師はそこにスカートがある限り、全てをめくり上げなければならない。それがレディーに対する礼儀ってやつだろう?


「殿下! 本当に怒りますよ!」

「きのうとおなじ色だ!」

「淑女には色々あるのです!」


 一体何枚のスカートをひるがえしたのだろう。未だ誇れるような技術まで達していない。最高のスカートめくりとは数をこなすだけでは到達できないのだろうか…

 そんな事を考えながら走っていると、前方に姿勢の良い老紳士が歩いているのを発見した。

 騎士職なのだろか、手には槍を持っている。


 このままだとぶつかってしまう。ここは俺が避けるべきだと思ったが、何故かいたずら心が芽生えてしまい、この老人をちょっと驚かせる事にした。


 俺は全速力で老人の前まで来ると、左にフェイントを入れてから右側へと方向転換を図った。案の定、老人は驚いて体勢を崩し、それを見届けると予定通り右脇を疾走した。


 その時だった。


 天地がひっくり返った。

 いや、違う。

 前方を見ていたはずなのに、何故か今は天井を眺めている。


 俺の身体が背中から落下しているのだ。そう認識した直後、肺の裏に当たる背中の部分が地面に叩きつけられた。


「ぐぁぁ…ぁぁ…」


 息ができない。

 ヤバい、これ死ぬんじゃないか?


 肺を動かす回数を増やしてなんとか息をするが、過呼吸になった時のような『ゼェゼェ』とした擦れた呼吸音が繰り返されるだけだ。冷や汗が全身から湧き出てきた。


「ごきげんよう、アルバラート殿下」


 苦しむ俺の顔を老紳士が覗き込む。

 好々爺の如く満面の笑みだ。


「殿下のご高名は、城内でも評判となっております。是非この爺にも、その御一端をご教授下さい」


 そう言うと、老人は俺をお姫様抱っこした。




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