第17話 A summer day(17)
志藤は飛行機の中で
ようやくゆっくりと眠れていた。
絵梨沙と同じ部屋で1週間も過ごしてしまい
本当に途中でどうなることかと思った。
図らずとも
彼女のハダカまで目の当たりにすることになったり。
正直
いいモン見してもらっちゃったな~~~。
と今になって思ったりするけど。
寝ながら、顔も緩んでしまった。
夜中になり
もう、ゆうこの陣痛はさらに激しく、強くなってきた。
「いった~~~い! もう!」
汗びっしょりになってベッドでもんどり打っていた。
「まだ子宮口、5cmだっていうから。 もうちょっと頑張って、」
母はつきそいながらそう言った。
こんなに
痛いとは!
お母ちゃんはこんなに痛いのに、3人も産んだりして。
ほんっと・・考えられない。
ゆうこは息を荒くしながら、そんなことを考えたりしていた。
そんなとき
ふっと志藤のことを思い出した。
・・あたしがこんなに苦しい思いをしてるのに!
絵梨沙といちゃいちゃする志藤の姿を勝手に思い浮かべたりして
無性に腹が立ってきた。
大阪で
つらいことがあったにせよ。
彼が死ぬほど女をとっかえひっかえだった噂は聞いている。
前に
大阪の成田さんも、二股だか三股かけられたとか言ってたし!
彼の昔を穿り返し、さらに怒りがこみ上げてきた。
「も~~! ほんっと! 腹立つ!!」
ゆうこは手にしていたタオルをぎゅうううっと絞るように握り締めた。
長い長いフライトも全く苦にならないほど
志藤は爆睡してしまったようだった。
思ったよりも早く、日本に着いたような気がした。
「ん~~!! 暑いなあ・・。 やっぱり朝から日本は。」
空港を出て伸びをした。
そうだ。
ゆうこに電話。
と携帯を取り出すと、着信を示す明りがチカチカしている。
「ん?」
南からだった。
「あ、もしもし・・志藤ですけど・・」
さっそく電話をすると、
「あ! やっと繋がった。 ねえ、今どこ?」
南が慌てたように言った。
「ええっと・・今さっき成田に着いて。 空港を出たトコで・・」
暢気に言うと、
「ゆうこ、陣痛が来て、入院しちゃったよ!」
例のキンキン声が耳にいたいほどの大きな声だった。
「は・・?」
「あたしも今、病院。 もう・・すんごい痛がっててさあ。」
「え・・生まれるの?」
「ゆうこのお母ちゃんの話やと、分娩室まではもう少しなんやって。 だけど、見てらんないほど痛がってる・・」
もう話を聞いただけで
苦しむゆうこの姿が目に浮かび・・
「かっ・・帰るから! 今すぐ! タクシーで!」
かなり狼狽して電話を切った。
ゆうこ・・。
もう、いてもたってもいられなかった。
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