第12話 A summer day(12)

絵梨沙はぼんやりと目を開けた。


あたりが明るい。



・・あたし



ゆうべあんなに苦しかったのに


それがウソのようにすっきりしていた。



ゆっくりと身体を起こす。



志藤は自分のベッドに寄りかかったまま座って寝ていた。



志藤さん・・。




何が起こったのかもよくわからなかった。




そして


自分の着ているシャツに目をやった。




え??



そのぶかぶかに大きなシャツは。


ボタンを掛け違えてて、めちゃくちゃな感じで着ていたけれど。



これ・・。



驚いたように志藤を見た。



すると



「ん・・」


志藤は目を覚ました。



「あ~~、このまんま寝てしまった・・」


大きく伸びをした。



そして、絵梨沙が起き上がっているのを見て、



「あ、起きれた? 大丈夫?」


彼女に近づき、オデコに手をやった。



「あれ・・。 下がってる。 昨日あんなに熱かったのに・・」


絵梨沙はその彼の行動にドキドキした。



「す・・すみません。 あの、あたし・・」


恥ずかしそうにうつむいて顔を赤らめる彼女に



「めっちゃ熱あってんで。 ゆうべ。 びっくりした。」



「熱・・」



あまり自覚はなかった。




そして


「こっ・・このシャツは・・」



おそるおそる聞いた。



「あ。 おれの。 もう汗びっしょりやったし、」




・・・・




絵梨沙はその状況を想像し


もう固まってしまった。




「おれ、着替えてくる。」


志藤は着替えを持ってバスルームに入っていった。




ど・・


どうしよっ!!


恥ずかしい・・!!


ウソっ!!




絵梨沙は今さらながらパニックになりシャツの胸元を押さえた。






一方、志藤も。


とりあえず、なんでもない風に装ったものの




はああああ。




もう。


彼女のハダカが脳ミソにびっしり焼きついてしまって!




あのあとは


タイヘンだった・・




いろいろ。




もう一生懸命、仏像のことを考えたり、宇宙のしくみとかを考えたり。


余計なことを考えないように必死で。



鏡の前で大きなため息をついた。



だけど。




結局、一緒の部屋で寝起きをしていたおかげで、彼女の異変に気づくことができた。



あのままだったら


どうなっていたか・・



そう思うと


自分のしたことは



全く『正義』である!



と、自信が持てそうな気がした。




そうや。


おれはクラシック事業の責任者として


責任を果たしただけや!!


ほんまに


それだけやって・・。



気持ちがアゲ状態になったり、サゲ状態になったり


忙しかった。

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