第10話 A summer day(10)

この夜も


何とか眠ったのだが。




夜中、絵梨沙のうなされる声がして志藤は目が覚めた。



「エリちゃん・・?」


メガネを掛けて、彼女を見やる。



眠っているようなのだが、苦しそうに息をしている。



「・・どした?」


彼女に近づく。



そして、額に手をやると、ものすごく熱かった。



「え・・。 熱!?」




驚いた。



絵梨沙は汗をかきながら、苦しそうにしている。



「エリちゃん、大丈夫? どっか・・痛くない?」


彼女の身体を揺すって訪ねた。



「え・・。」


絵梨沙はぼんやりと目を開けた。



「・・ねつ?」




「すごい熱だよ。 どうしたんだろう。」



もう絵梨沙は意識が朦朧としていた。




「だ・・だいじょうぶですから。」




ぼんやりとそう言ったが、大丈夫ではなさそうだった。



志藤はハッとして自分のバッグの中を探った。


ゆうこがもしもの時のためにいろいろ薬などを持たせてくれたことを思い出す。



その中に


気の利く彼女は体温計も入れていてくれた。



それを差し出し、


「エリちゃん、熱を測って、」


と彼女に手渡すが、



「は・・」


もう、ぼうっとしていて何もできないようだった。



「まったく・・!」


志藤は無意識に彼女の部屋着のボタンを2つほど外した。



思いっきり


胸元がはだけて、胸の谷間がモロ見えになったが、目をそらしつつ脇の下に体温計を突っ込んだ。




熱は


39℃あった。



何とか水を飲ませて、とりあえずゆうこが持たせてくれた解熱剤も飲ませた。



冷たいタオルを額に載せてやると、少し落ち着いたようだった。



志藤は寝ずに彼女の看病をした。


汗を拭いてやったりしていたが、




着替えさせたほうが・・いいかな。




着ていた服は汗でびっしょり濡れていた。



しかし。



誰が着替えさすねん!!



もう、誰か助けて~~!!



志藤は心で叫んでいた。





志藤がそんなことになっているとは露知らず。



ゆうこはのんびりと実家で過ごしていた。



「ハッピー、おいで~~。」


縁側に座って、庭で遊ぶハッピーを呼んだ。



ハッピーは喜んで後ろ足で立ち上がってゆうこにすがりついてきた。



「あは・。 もー、 あせっちゃって。 ほら。 ハッピーの好きなおもちゃだよ~。」


と、それを放り投げて遊んだりしていた。



「ごめんね~。 さすがにもうお散歩はいけないし、」


ハッピーの頭を撫でた。



今。


パリは夜中かな・・。




ゆうこは青空を見上げた。

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