第7話 A summer day(7)

別に女の子と会話することなんか


全く難しいことではないのに。




こんなに狭い空間にいると、すんごい意識をして


会話がない。




元々、絵梨沙は無口でおとなしい性格なので


とくに彼女から話しかけてくれるわけでもなく。




志藤はベッドに寝そべりながら、本を読んでいたが


内容が全く頭に入ってこなかった。




「もう、寝ます。 お先に・・おやすみなさい。」


絵梨沙はベッドに入って行った。




「あ・・うん。 おれも・・寝るわ、」


志藤も慌てて本をサイドテーブルに置いて、ベッドサイドの灯りを消した。




といっても。




なんだか


寝れへんし。




絵梨沙はすぐに寝息を立て始めたが、ときおり



「・・う・・ん・・」



と、色っぽい息をついたりして




正直


たまらなかった。




背を向けていたが、そおっと彼女の方を見た。




何の警戒もしていないように


スヤスヤと眠っている。





寝ている顔も


ほんっまに


美人やなあ・・。




男としての理性が疼きそうで。


それを抑えるのが必死だった。




も~~~


助けてくれ~~!!




布団をかぶってぎゅっと目を瞑った。




おかげで、あんまり眠れずに


朝になってもなかなか起きられなかった。




「志藤さん、志藤さん・・・」


絵梨沙が彼を揺り起こす。




「ん・・」



「もう8時です・・朝食を、」



ぼやーっと目を開けた。



裸眼だとただでさえほとんど見えない上に、ものすごく寝ぼけている。



いきなり絵梨沙の背中に手を回して、ぐいっと引き寄せた。



「きゃっ!!」


さすがに絵梨沙は驚いた。



「ん・・?」



志藤はもう彼女にキスしそうなほど顔を近づけた。



「ちょ・・ちょっと!! なにを・・」


絵梨沙は慌てて彼の口を手で押さえた。




その時


ようやくそれが、ゆうこではなく絵梨沙であることを認識した。



「わーっ!!! ごっ、ごめん!! ちがう、ちがうからっ!!」



志藤は慌てて彼女を離した。



「び・・びっくりした。」


絵梨沙は顔を赤らめて胸を手で押さえた。



「ほんっと、ごめん!!」



志藤は平謝りだった。




「・・奥さんと・・まちがえちゃいました?」



図星を指されて、



「ここは・・ウンと言っておいたほうがいいのかな・・」


と、頭を抱え始めた。



その姿に絵梨沙はクスっと笑った。



この日はホールでリハーサルがある。


絵梨沙は出かける前に、部屋の鏡を見ながら髪をとかしていた。




そんな後姿に思わず見とれてしまう。



彼女は顔だけではなく、スタイルも抜群で


フレンチ袖のピタっとしたブラウスにふんわりとしたフレアスカート姿なのだが、ウエストからヒップにかけてのラインが本当に色っぽい。




はあああ。



志藤はため息をついた。

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