第6話 大空 翔は愛を語る

「大地ちゃん、俺と付き合ってください。」

 俺、大空 翔は一世一代の告白に踏み切った。

「――――――――え?」

 それに大地ちゃんは困惑の表情を浮かべている。

 それもそうだろう。

 なんてたって俺と大地ちゃんは今日出会ったばかりの間柄だ。

 朝、電車の中で痴漢から助けたのだって偶然、その後一緒に走って登校して同じクラスになって今一緒にお茶している。

 せいぜいいいとこ友達どまりになるだろう。

 普通は。

 だがことこれに関しては普通じゃすまされない。

 俺には過去からのつながりもない。

 大地ちゃんに好かれる要素もない。

 だから告白する。

「俺は大地ちゃんが好きになりました!」

「は?……え?え?なんで――。」

「初めて会た時から大地ちゃんは可愛い女の子だと思っていた。」

「は……はい。ありがとうございます。」

「こんな娘と仲良くなって友達になれたらさぞや楽しいだろうなと思っていた。」

「はい、……わたしも友達になりたかたです。」

「でも、大地ちゃんは男の娘だったんだ。」

「そうです。私は翔さんの気持ちを裏切って――――


「そんなん告白するしかないだろうが!」


「だからなんでそうなるんですか。」

 ふーーー、大地ちゃんは分かってないようだな。

 ここはもっとしっかりと説明せねばならないだろう。

「いいか、大地ちゃんは体は男で心は女の子。」

「はい。」

「しかも可愛い。」

「そうなんでしょうか。」

「痴漢にあっちゃうくらい可愛いの。自覚して。」

「は、はい~。」

「そして俺は体は女だけど、見ての通りスタイルも性格も男みたいなものだ。」

「確かに翔さんはカッコイイですよね。」

「つまり凸と凹がかみ合うように俺たちはかみ合っているんだ。簡単に言うと大地ちゃんがドストライクでした。」

「いや、でも私こんな格好ですよ。」

「俺は可愛い娘が大好きなんです。」

「ええぇ~。」

「なんじゃい、男みたいな女が可愛い男の娘好きになっちゃいかんのか。」

「そんなことないですけど。」

「ならば付き合ってください。」

「ことが性急すぎます。お友達からじゃダメなんですか。」

「それでは有象無象のライバルたちに出し抜かれてしまう。」

「ライバル?」

「いいですか大地ちゃん。日本人男性の5人に1人は男の娘に勃起するんです。」

「翔さん、流石に下品です。」

「すみません。しかーし、男の娘に恋する男性は日本古来より衆道という形で存在していた。今の世では表立って存在しないが、心に秘めた男子はごまんといる。だから―――」

「だから?」

「誰かにとられる前に告白して俺の女にしたい。」

「ド直球ですね。」

「男なら直球勝負だろ。」

「翔さんは女の子でしょう。」

「心は男です。」

「いや、男っぽいですよね。」

「大地ちゃんに恋した時点でこの心は男になりました。」

「いや、そんなの通りませんて。」

「別に医学的に性同一性障害と認められたいわけじゃない。ただ、ただただ大地ちゃんと付き合いたいだけだからです。」

「ん~~~~~~~~~~、そう言われても。」

「大地ちゃん。世の中には今朝みたいな痴漢がわんさかいる。」

「それは偏見じゃないですか。」

「そんなことはないぞ。」

「そう言われましても。」

 こうなったら土下座か。好きな人に付き合てもらう為に土下座とか最終手段ぽい気もするが、背に腹は代えられん。

 いざ―――――

「分かりました。付き合います。だから土下座とかしようとしないでください。」

「本当?」

「本当です。」

「ひゃっほ~~~~~う。」

「しかし、この場合どっちが彼氏で、どっちが彼女なんですかね。」

「そんなの決まってる。俺が彼氏で、大地ちゃんが彼女だ。」

「そうですか。」

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