第25話 弱い
まぐろやの個室の中9人が揃った。新井の右側に植草は座り、さくらは末席に向かった。そんなさくらを植草が呼び止めた。
「東山、こっちこっち。会社のデスク並びじゃないんだからさ。」
結果、新井の両隣りにさくらと植草が陣取るカタチになった。
飲み物が揃ったところで新井が
「今日は金曜日だ。楽しくやろう。
言っておくが、、、」
みんなが、何?何?何?
新井はニコッとして
「俺たちの飲み会はフラットだからな。かんぱーい!」
さくは内心、新井さん素敵過ぎる。。。
仕事は出来るし、人柄も、、、
場も和んで少しお酒も入ったところで以前から新井に聞こうと思っていたことをさくらは質問してみることにした。
「新井代理、あの、」
「東山、会社じゃないんだから新井さんでいいよ。」
さくらは少し図々しさも兼ね備えた女子である為
「では、では、新井さん。○○企業の件ですが、、、」
植草はそのやり取りを聞きながらニヤニヤしていた。何故なら、次の新井の返し言葉がわかっていたからだ。
「東山ぁ、やめようぜ、仕事の話。」
「ち~ん、え?どうして?」さくらが逡巡していると
「東山、会社で散々仕事の話してるだろ?やめようよ、極力さ、一応会社繋がりだけど、今はプライベートタイムでもあるわけだし、楽しもうぜ。」
植草が間髪入れずに
「新井さんの飲み会は、会議の延長じゃないんだなぁ。こんな俺でも、飲み会では一度も説教されたことないんだから。」
一同、大爆笑となり、さくらも
「へー、極力仕事の話しなーい飲み会なんて、素敵でーす。」と戯けてみせた。
「で、何だっけ?」
「明日にします。」
「で、何だっけ?」
「新井さん、早いですよ。」
「まだ、ダメですよ。」
他のメンバーも
「新井さーん、早いですよ。」
さくら以外のメンバーは知っていた。
新井はお酒が無茶苦茶に弱いのだ。
新井はスクっと立ち上がり右側の耳に手を当て
「で、何だっけ?」またまた一同大爆笑だ。
そのまま新井はお手洗いに行き、その間植草はさくらに
「俺さぁ、新井さんみたいになりたいんだよなぁ。とりあえず今は一生懸命に新井さんについていくよ。そして、いつか追いつきたい。」
さくらはニコニコしながら
「植草さん、やめましょうよ。会社の話。」
「あー、誰かと同じセリフだ。」
「やっぱり、新井さん、カッコいいよなぁー」
「ですねー」
「やっぱり東山もそう思うんだ。」
「いいなぁー、新井さん。」
入社三年目の坂本が
「植草さーん、早いですよ。」
「何だって?」
「絡むのが。」
そう、植草は酔うと軽い絡み酒の症状が出るのだ。坂本が続けた。
「ここにいるメンバーは皆新井さんのファンですよ。」
「くっそぉー、必ず追いついてやるぅー」
ここから飲み会は時間オーバーの終電近くまで続き閉幕となった。
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