第13話 誰かがどこかで見ている
果たして米国のテーパリングの時期についは、さくらが新井課長代理に回答した通り、FRBの神経質な発言が続き、特に経済指標の発表時にはマーケット参加者の息遣いにまで神経を尖らせているようだった。
さくらは日頃からニュースを読みまとめるだけではなく、疑問に思ったことは、帰宅後、納得するまで徹底的に調べる日々を繰り返していた。
頑張ればいいことある、、、
大好きなこの言葉を信じて、どんなに疲れていてもその日のうちに自分のものにしていた。
確かに業務経験は浅いかも知れないが、情報提供に関しての顧客満足度は群を抜くレベルに達していた。
最近の口癖は、新聞の記事はいい加減な説明多過ぎ、という、生意気なものになっていた。
ただ、情報の提供先にはさくらの説明や解説は非常に評価されており、さくらの熱心さは関係先の皆が認識していた。
9時過ぎにNS商事の担当者からさくらに電話が入った。
さくらはいつも、担当先へ連絡する時間をそれぞれについて凡そ決めていた。
NS商事には8時40分に電話するのが日常になっており、時間を過ぎても電話をしてこないさくらに対して、さくらからの連絡を受けるのが、いつの間にか日課になっていた担当者が連絡をしてきたのだ。
新人ながらとても見事な営業スタイルだ。
「はい、東山です。鈴木さん、お電話頂きありがとうございます。正式には改めてご連絡を差し上げますが、実は私、御社の担当を、、、」
担当が変更になったことは、後任の久保田課長から前振りだけして、正式にはもう一度訪問してお伝えする、と打ち合わせ済みであり、さくらは指示通りに動いた。
15分後、またNS商事から電話が鳴った。さくらは別のお客様と電話中だったため、一つ上の先輩がその電話を取った。
「東山さん、NS商事の山本さん、って人だけどどうする?」
社長から電話が入ったのだ。
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