第9話 素直な気持ち
翌日、本店営業部にはいつものように誰よりも早く出社し、情報収集するさくらの姿があった。
植草も割と早い出社であり、さくらは植草の姿を見つけると
「主任、昨日は色々とありがとうございました。」
と丁寧にお礼を言った。
植草は右の掌をさくらに向け、いいよ、と合図。
続けて課長代理の新井が出社してきた。
さくらは一瞬躊躇したものの、新井の元へ歩を進め
「昨日は私のことで大変ご迷惑をお掛けしました。」
と、深々と頭を下げ、
「生意気ですが昨日のことはもう自分の中で整理しました。ですから、あまり無理しないでください。お願いします。」
と、感謝と素直な気持ちを伝えた。
新井は少し困惑した表情で
「東山さんの気持ちは有難く受け止める。けれど自分の意見は意見として伝える必要があるんだ。理不尽なことを普通にされては良くないだろ?」
そう言って優しく微笑む新井に、さくらは何の飾りもなく
「課長昇格目前の時期ですから。」
すると新井は
「分かってるよ。間違っていることを見過ごして課長に昇格しても気持ち悪いだけだろ。
だから、昨日にことはいいんだ。しかし、最後、部長が引き取られた。だから、俺の意見は昨日の発言が最後だよ。部長の決定には従うしかないからね。」
さくらは何かほっとした気持ちになり重ねて
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げ自席に戻った。
一通り情報収集が終わった頃には課長の久保田も含め課員全員が揃っていた。
そこへ樋口部長から内線がさくらの元に入った。
さくらは少し動揺しながら
「分かりました。」
そして、受話器を置き直ぐに久保田課長の元へ行った。
さくらは、自分ではなく無機質な誰か違う人が話しているような錯覚の中
「今、樋口部長から電話があり、NS商事の件については久保田課長の意向に従うようにと指示を受けました。」
と、報告した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます