第7話 振れない
植草は急に残念そうな表情になって
「ここまでは俺も机の下で拳を握りガッツポーズしながら心の中で新井さんを応援してたんだ。」
さくらは大事な時期にリスクを顧みず自分を庇ってくれた新井課長代理のことが心配で既に課長に叱責されたことなどどうでもよくなっていた。
「植草さん、それで新井さんはどうしていなかったのですか。」
植草は本当に悔しいそうに
「帰らされたんだ。樋口部長に。新井さんは是々非々の人だから、あの後、結論を先延ばししようとした課長に。」
そう言って頭を抱えた。
「それで、それで、どうなったんですか。」
さくらは懇願するように言った。
新井は課長に向かって
「課長の私が判断する?そんな理不尽なことが認められるのならこの会社に未来はない。久保田さん、あなたは間違っている。」
冷静なのか、熱くなっているのか見た目では判断できないがこの時の新井は口論が始まってから最も張りのある声で言い放った。
ついに奥まったデスクで一部始終を聞いていた部長の樋口が重い腰を上げ近づいてきた。樋口は両者が視線で迎え入れたことを確認し、静かな口調で
「今日のことは久保田ではなく私が預かる。新井はデスクを片付け速やかに帰れ。」
と指示した。
新井は部長の言葉に従い退社し、久保田はその後部長席付近でなにやら少し話した後課長席に戻ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます