新たな寮生とお出かけ
時計のタイマーで目が覚める。静かな、それでいて新鮮な朝だ。
今日は一応休日だが、この寮は長期休暇以外は基本的に家に戻らない。
確か、今日はもう一人来ると言っていた。それがいつになるが分からないが、それまで待機していればいいのだろうか。
何しようかと悩んでいると、雨降先輩の放送が流れた。
『全員起きたか、食事の時間だ、食堂に集まってくれ」
言われたとおりに食堂に行き、朝食を食べる。その後、雨降先輩に声を掛けられその方向を見る。そこには小さい男の子がいた。この子が昨日言っていた子なのだろうか?
「全員来たな、この子の説明をする前に、この学校の詳しい説明をしておこう……先生、お願いします」
「えぇ、分かりました……皆さん、この夢見高校には、実はもう一つの学校があるってご存じですか?」
僕は首を振った。周りを見ると、どうやら全員同じ反応だった。
「その学校は世間と比べると少し変わっていて……中高一貫の学校があるように、その学校は、いわゆる小中一貫というやつで……そのあと、この夢見高校に進学するということです」
なるほど、つまりあの子はその学校に入学するということだな。でも……それにしては一回り大きいような……。
「では、詳しい説明も済んだところで……自己紹介してもらおうか」
雨降先輩に促されて、その子が一歩前に出る。
「は……初めまして、
「あー……この子は、途中から先ほどの小中一貫の学校に通うことになってな……そのためにここに来たんだ、天樹、学年は?」
「……五年生です」
恥ずかしいのか、すぐさま引っ込んでしまった天樹君を雨降先輩がフォローしてくれた、そのおかげで、この子が来た理由も分かった。
「ということで……これで今年の新入寮生はそろったな!今日の夕飯時に歓迎会をする、それまで各自自由にしていいぞ」
と言われたので、解散となった。でも、いきなり言われても何をすればいいか分からないなぁ……。
「湊君!」
「奏?どうしたの?
「お出かけに行こうよ!」
「お出かけかぁ、確かにいいかもね、どうせしばらく暇だし、ついでに何かお昼でも食べに行こうよ」
「うん、賛成!」
お互い、準備をするために部屋に戻る。その途中、谷口君に声をかけられた。
「村瀬、どこか行くのか?」
「うん、どうせ暇だし、このあたりのことも知っておきたかったしね」
「そうか……」
「谷口君も来る?」
「いや……いい、また今度誘ってくれ」
「うん、分かった」
谷口君と少し話して、玄関に向かう。そこには、私服姿の奏がいた。
「奏、お待たせ」
「あ、湊君、こっちも今終わったとこ」
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
寮を出て少し歩くと、町が見える。少し歩くだけで、目新しいものがたくさんあって飽きない。
「この町は、随分不思議なものがたくさんあるんだね!」
「そうだね、どうやら何個かは歴史的なのもあるみたいだよ」
「へぇ~、そうなんだ!」
奏は、いつも以上にはしゃいでいる。こんな姿を見るのは僕と登下校をしていた時……いや、それ以上か。
なんだかんだ、奏もこのお出かけを楽しんでいるのだろう。実際僕も楽しいし……。
そこからは、おしゃれなカフェでお昼を食べ、ちょっとブラブラしたあと、寮に戻ってきた。
ちょうど時間が良かったのか、着替えをしていたら放送が鳴った。どうやらこれから歓迎会をするらしい。
豪華な料理を食べて、お互い少しずつだけと語り合った。天樹君も、馴染めているようで良かった。
明日からは学校がある。どんなことになるかは分からないが、悪いことにならなければいいなと思う。
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