入学と入寮

 私立夢見高校。それが僕たちの入学する学校の名前だ。

 今日は入学式、電車に乗り、学校に向かう。今日は平日だが、あまり人が少ない。

「ついに入学式だね!」

「そうだね」

「そういえば、クラスはどうなるんだろうね」

「あー……確か、今日分かるんだよね?」

「そう!同じクラスだといいなぁ」

「そうだね」

 そんな会話をしていると、気づいたらもう学校についていた。

 入口に行くと、クラスの表が張り出されていたので、自分の名前を探す。すると……

「湊君!同じクラスだね!」

「そうだね!」 

 僕たち二人の名前があった。ちょっとだけホッとした。

 教室に行き、説明を受け体育館に向かう。入学式が始まった。

「皆さん、ご入学おめでとうございます」

 校長先生のありがたいお話を聞き、式が終わる。教室に戻ると、担任からあることを言われた。

「えー、既に紙が配られていると思うが、入寮を希望している生徒はこの後寮に向かうように」

 寮、この夢見高校には学校運営の寮がある。名を月光寮。寮に入りたいと言ったのはどっちだったか……でも、そもそも寮には入ろうと思っていたからちょうどよかった。

「寮ってどんな感じなんだろうね!」

「まぁ、中学の人たちみたいな人がいないことを願うよ……」

「……そうだね」

 そんなことを願いながら、寮に入る。するとそこには、既に何人かが来ていた。

「来たな」

「これで、今年入寮する生徒は全員ですか?」

「えぇ、そうです」

 一人は女性の先輩、もう一人は男性の先輩、もう一人は、先生だろうか。

「ようこそ月光寮へ、私は君たちを歓迎するよ。私の名前は雨降時雨あまふりしぐれ、三年で生徒会に入っていて、ここの寮長も務めている。よろしくな」

「俺は関城徹せきじょうとおる、同じく三年、副寮長……みたいなもんだ。分からないことあったら、なんでも聞いてくれ」

「私は、霧島月影きりしまつきかげ、この月光寮の担当をしております。一応、この学校の歴史も担当しております。以後、お見知りおきを……」

 先輩たちと先生の紹介が終わる。となると、後の数名は僕たちと同じ一年生ということだろうか……。

「ということで……私たちの紹介も終わったことだし、次は君たちの紹介と参ろうか……じゃあ、そこの君から言ってくれ」

 と言われ、僕が指名されてしまった。少しプレッシャーがあるが……やるか……。

「1年B組の、村瀬湊です、よろしくお願いします」

「次は私かな?1年B組の有村奏です!よろしくお願いします!」

「次は俺か、1年A組、谷口誠也たにぐちせいやだ、よろしく」

「最後は私ね?1年B組の神崎香織かんざきかおりよ、よろしくね」

 全員の紹介が一通り終わり、各自部屋の鍵を渡された。どうやら荷物を整理しろということらしい。

 自分は、205号室と書いてあった。隣は、谷口君だった。

「あっ……君は、谷口君だっけ」

「あぁそうだ……村瀬つったか?」

「うん、そうだよ」

「そうか……まぁよろしく」

「うん、よろしくね」

 ちょっとした挨拶をかわし、谷口君は部屋に入った。きっと、あまりしゃべらない人なんだろう。僕も中に入ることにした。中は意外と広く、事前に届けてもらった荷物もちゃんとあった。

 整理していると、突然放送が流れてきた。雨降先輩からだった。

『実は、この後歓迎会をする予定だったが……どうやらまだ一名来ていないそうでな……なので明日に回すことにした。今日はこのまま夕飯まで自由時間とする』

 なるほど、あと一人来る予定なんだな。自由時間といってもすることも無いので、このまま部屋の整理を続けることにした。

 少しだけ、この生活に楽しみを覚えたまま……

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