君は何も悪くない
奏がよく告白されているのをみて、学校では彼女の評価はどうなのかを調べたら、3年の中でのアイドル的存在だっていうのが分かった。
確かに、誰にでも隔てなく笑いかける姿は、確かにそう見えるかもしれない。だから彼女は人気者なのだ。
そんなわけだから、僕なんかが彼女の傍にいるのが気に食わないのだろう。使われていない教室で、僕が囲われているのはそういうことなのかもしれない。
僕に対してなのか、色んな罵倒が飛んでくる。とはいってもあまり傷つきはしないが……そんな時、リーダー格の一人が口を開く。
「湊って言ったか」
あぁそうだと口を開こうとしたとき、顔を殴られた。
「ぐっ……」
「痛いか?だがなぁ……」
また殴られる、スポーツをやっているのか、あいつらよりも痛い。周りも、もっとやれなんて囃し立てている。
「……まだまだ序の口だぞ。あの人が、奏さんがどれだけ傷ついたと思っている?」
「は?」
「楽しかったか?奏さんを脅してまで自分の物にした気分は……奏さんは助けてって言ったんだ。お前のせいで!奏さんはとても傷ついたんだ!」
何を言っているのか、意味が分からなかった。数日しか彼女と過ごしていないが、僕といた時の彼女は、笑っていた。それだけは確かだ。
周りを見渡すと、昨日、彼女に告白した男子がいた。あいつが告げ口をしたのだろう。根も葉もないことも交えながら……。
しばらく殴られ続け、口の中が鉄の味をしだした頃。うっすら見える景色から、誰か見えた。
「ちょっと、君たち……何をしているの?早く帰りなさい!」
先生だった。
「ちっ……」
沢山の人たちは、舌打ちをしながら教室を出ていく。全員いなくなってきたころ、救急箱を持った先生が駆け寄ってきた。
「村瀬君大丈夫ですか?」
「はい……何とか」
「学校でできるのは応急処置だけです、ちゃんと病院に言って検査してもらってください。この時間なので病院は空いていないでしょうから、明日は休むように。私が言っときますので」
「はい……ありがとうございます」
「とりあえず……今日はもう帰りなさい」
「はい……」
顔だけじゃなく、全身殴られて、まだ痛む体を引きずりながら校門へ向かった……
◇ ◇ ◇
学校も終わって、湊君と帰ろうとしたら、湊君は誰かに連れていかれていた。私も後を付いていこうとしたけど、知らない男の子に話しかけられた。その子たちはずっと守ってあげるやら解放してあげるからと言っていたが、一体どういうことなのだろうか。
何もわからず話を続けていたら、いつの間にかかなりの時間が過ぎていたらしい。湊君は、もう帰っているのだろうか……それだったら、ちょっと悲しいのだけど。
玄関を出るときに、彼の靴箱を調べてみると、まだ学校にいるみたいだった。だから、少し待つことにした。
ちょっと待つと、たくさんの人が一気に出てきた。部活帰りなのかな?と思ったりする。確か湊君は部活には入っていないはずだ。だからもうちょっと待つことにした。
しばらくすると、湊君がやってきた、だけどその姿はボロボロだった。
「湊君?……どうしたのその怪我」
「……何でもない」
「うそ、なんでもないはずがない」
「うっ……」
「ねぇ湊君……何があったの?」
「……君は、一度自分の立場を知ったほうがいい」
そういうと湊君は教えてくれた。私がどんな扱いをされているか。そしてどうしてこんなことになったのか……。
「うそ……そんな、私のせいで……」
「いや、奏は悪くないよ。悪いのは勝手に暴れているあの人たちのせいだよ」
「でも……」
「……ならさ、こうしよう」
湊君は、そういってメモ帳とペンを取り出し、何か書いたメモを私に渡した。
「学校では、あまり話さない様にしよう……もちろん一緒に帰ることも、学校へ行くのもだ。だからその分、電話やメールで話そう?」
「……うん、それで湊君がいじめられないのなら……」
私は、自分の連絡先を書いて湊君に渡した。それから私たちは、中学を卒業するまで学校で話すことは無くなったし、一緒に帰ることもしなくなった、朝はたまに会うが、一緒に行くことはしなくなった。不満はあった。でも、我慢すると決めた。湊君を守るために……。
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