初めての友達

 昨日は不思議な出会いがあった。

 まぁ、いじめられて気絶したところを助けてもらったんだ。感謝はしているが、あまり関わりたくないものだ。

 彼女は、明るすぎる。だからあまり自分の近くにいないほうがいい。

 ……まぁ、もう会うこともないのだしどうでもいいか。

 そんなことを思いながら学校へ向かっていると、知っている声が聞こえてきた。

「やっほー湊君!おはよう!こんなとこで会うなんて奇遇だね!」

「おはよう……奏」

 平然のように名前を呼んでいるが、実は異性の名前をを呼ぶのは意外と恥ずかしい。

「まさか途中から通学路同じだとは思わなかったよ」

「うん、そうだね」

「私、いつもより早く出たんだけど、これからもこの時間に出ようかな」

「え、毎朝僕と登校するつもり?」

「え?うん」

「まぁ……いいけど」

「やった!」

 もう出会うことは無いと思っていたのに、まさかこんなことになるとは……でもまぁ、意外と悪くないなと思っている自分もいる。

「あっ、じゃあさ、帰りも一緒に帰ろうよ!」

「え?」

「湊君は部活とかやってる?」

「いや、やってないけど……」

「じゃあ決まりね!」

「えぇ……まぁいいけどさ」

 なんだかとんとん拍子に話が決まってしまったが、まぁいいか……。


◇ ◇ ◇


 チャイムが鳴り、授業の終わりを知らせる。

 今日は特に呼び出されてはいないので、帰ろうとしたときに、空き教室を横切ろうとしたときに奏と、もう一人を見かけた。あれは自分のクラスの男子だった。

 何か用でもあるのだろうか……僕はばれない様に様子をうかがうことにした。

「こんなところに呼び出して、何か用?私、用事があるんだけど……」

「ご、ごめん有村さん……実は、有村さんにどうしても伝えたいことがあって……」

「ぼ……僕、有村さんのことずっと前から好きでした!僕と付き合ってください!」

 なんと、告白だった。奏は困った顔をしている。

「あ……えっと……ごめんなさい!」

 そう言って奏は走ってその教室を出て行った。僕も慌てて追いかける。

 奏は、少し落ち着きたいのか、どこかの教室に行ってしまったので、おとなしく校門前で待つ。

 急いできたのか、奏が僕にぶつかってきた。

「きゃ!、ご、ごめんなさ……湊君?」

「…奏、何かあったの?そんなに急いで」

「ううん、なんでもない、行こ?」

 手を引かれ、足早に学校を後にする。一瞬見えた教室から僕らを除くあの男子の顔は、何とも言えない顔をしていた。

 しばらくお互い無言で歩く、そうしたら、急に奏が話しかけてきた。

「……ねぇ、湊君、どう思う?」

「……どうって?」

「知らない男の子に急に告白されても、OKしたほうがいいのかなって……」

 きっと、さっきのことを言っているのだろう。僕は思ったことを口にした。

「……多分、それでOKしても、幸せなのは向こうだけだと思う。だから、奏のさっきの発言はいいことだと思うよ」

「……見られていたんだね、でも、ありがとう」

 奏は、少し悩んで、言った。

「ねぇ湊君、私と友達になろ!」

「……友達?」

「うん、これでも私、あんまり友達っていないんだ。でも湊君なら、気が合いそうで、いい友達になれそうなんだ」

「……うん、わかった。僕でよければ」

「本当?よろしくね!」

「うん、よろしく」

 さっきまで暗かった奏の顔は、笑顔で明るくなった。よかった、元気になったみたいだ。

 それからは、お互い他愛無い話をしながらうちに帰った。なんだか楽しかった……これが友達との会話なのだろうか。

 その日は、なんだか眠りが良かった。だが、今の僕は知らない。次の日僕に悲劇が起こることを……。…

 

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