君との出会い
僕は、学校が嫌いだった。
向けられた目も、言葉も、何もかも意味がなく。ただ哀れみに見られるだけだったから。
僕には、両親がいない。
いや、死んでしまったというべきだろうか……
両親について覚えていることはない。昔から無口だった僕を、愛情もって育ててくれていた…という、親戚の言葉だけでの情報なら知っている。
正直、この情報は信用していいか分からない。僕を預かってくれた親戚は、どうやら僕のことを毛嫌いしているらしいし。
だから感謝こそするけども、信用に値するかは分からないのだ。
学校が嫌いな理由は、もう一つある。
僕のこの無口で話さない性格は、小学校の頃は哀れみの対象だったが、中学生になると気に入られないらしい。そのためか、いじめの対象となってしまっている。
まだ助かっているのは、、僕の小学校から来た子はいじめてくれていないということだ。一度話したが、話しやすかったのを覚えている。
それもあって、大事には至っていないんだけど……なんだか最近、呼び出されては暴力を受けているようになった。
最初は傷に残るほどじゃなかったんだけど、だんだん強くなってきている気がする。
今日も呼び出されて、指定の教室に向かっている。正直いって憂鬱だ。でも、逃げたらそれはそれで怖いし……
教室に着き、扉を開けると、すでにそいつらは待っていた。
「よぉ、意外と早かったじゃねぇか、じゃ、はじめよーぜ?」
その言葉を聞いた瞬間、頬に強い衝撃が来て、僕は意識を失った……
◇ ◇ ◇
「目が覚めた?」
目を開けると、そこには一人の少女がいた
「……えっと、ここはどこ?」
「保健室だよ、君、気絶していたんだよ?」
「そう……ここまで連れてきてくれてありがとう」
「いーえ!あっ、そうだ、時間も時間だし、一緒に帰らない?」
「僕と?……僕と一緒に帰ってもつまらないだけだよ?」
「良いの!私が帰りたいって思ったんだから!」
この少女は、何を思って僕と一緒に帰りたいと思ったんだろうか……けれど、この子からは何も哀れみを感じない。
時間を見ると、もう下校時刻になろうとしている。しょうがない、どうせもう会うこともないんだし、今日ぐらいはいいか……。
「……わかった、それじゃあ帰ろうか」
「うん!」
二人並んで、下校する道を歩く。そこには特に会話らしい会話はなかったが、不意に彼女がこう言ってきた。
「ねぇ……そういえば私たちって自己紹介していないよね?」
「まぁ……確かに」
「じゃあしよ!名前覚えていないと呼ぶとき大変でしょ?」
「まぁそうだね……」
「じゃあ私から!私は
「僕は、
「さんはやめて、あと苗字も」
「え?……じゃあ、奏?」
「うん!よろしくね、湊君!」
「うん……よろしく」
こうして、ぼくは少女、有村奏と出会った。けれど、これが実は運命の出会いになるなんて、当時の僕は知らなかった……
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