書き置き
ああ、ダメな日がやって来た。
月に一回くらいなのだけども、とても不調の時が来て、私は何もできなくなる。私は私が嫌いになる。元々あまり好きではないけども、この日については嫌いになる。金切り声がさわぎ立てるので、イラつくにはイラつくのだが、もはや、それすらもこえて自己嫌悪が止まらない。
外は雨、私は私が嫌いになる。手鏡を見ると私がいる。気持ちが悪くなり、袋を手にすると吐けるだけ吐く。しかし、もう何度か吐いているので、ただえずくだけになる。何かが嫌なのではなく、何もかもが嫌になる。私にうんざりし、私に失望し、私にげんなりする。
こんなことを書いているのも、そのうち嫌になる。実はと言うと、これを書くのももう三回目になる。二回は書いていたけども嫌になって破り捨ててゲロのたまった袋の中に一緒に入れた。書いても書いてもキリがなかった。
前に嫌になった時は頭を思いきり壁に打ちつけていた。他の患者達は自分のことに夢中なので、やれるだけ打ちつけることができた。が、何回かするとフラフラし始めたので、そのままねた。しばらくして、ジャマだと言われて私に良く似た別人にケられて目がさめた。
塩素水を飲んだ。頭がくらくらする。舌がひりひりする。熱でもあるのだろうか。まったく考えがまとまらない。強いキョダツ感があって、ペンを持つのもやっとだ。ペンを持たなくてはならない、ペンも持てなくなったら、本当に私は自分が嫌いになる。シツボウさせてくれるな。全身にとろみの強いアンをかけられている感じだ。じとじとと汗が垂れていく。シャツがへばりつく。塩素の臭いがする。塩素のシゲキ的な臭いが鼻をつんざく。金切り声が耳をつんざく。胃酸が舌をつんざく。つんざくつんざくつんざく、シゲキ的なものが私を取り囲む。時間だけが経っていく。時間だけが浪費されていく。私はどこへ向かう。私は何をしている。私は誰だ。私は何故だ。私はいつだ。私は私は私は
(以下、紙が黄土色に変色して、読めない文章が何行か続く。また、カピカピのニンジンがへばりついている)
どうも、夢をみていたらしい。金切り声が聞こえる前のころのようだった。
夢のなかの私は、頭がさえていて、何でも出来そうだった。そのままでいてくれたら、どれだけよかったか。会社に勤めていて、自分も部下(何名かいたようだ、名前は忘れた)も助かるように、上司や取引先と会話をしていた。結果、部下は助かった。しかし、私は助からなかったようだ。
顔つきを見るに後悔はしていないように見えた。それは単に無理をしていただけだったのかもしれないが、当時の私には希望がみえていたようだった。問題はいつか消えて、その先に、自分の人生を大いにコウテイすることが出来るのだと思っているかのようだった。試練を乗り越えて、成長する姿がみえていたのかもしれない。それが、うつむく回数が増え、グチの数が増え、どんどんと部下との差が開いていくのを見た。まるで、高速カメラが、花が咲いてからしおれるまでを映しているかのようだった。
やめろ、とさけぶまでもなく、夢は消えた。
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