第4話 チーズと青じその巻き餃子とマグロとキムチのアボカド和えとドイツ式ジャーマンポテト
俺が出した発電機は、5.5KVAを6.1h持続可能でエアコンもつけられる。
収納式の取手で一輪車のように持ち運び出来ることと、リコイル式を備えているので、万が一バッテリーが上がっても、エンジンがかけられるのが魅力だ。
ツマミを回してその横のボタンを押すと動くのだが、かなり音がするものの、離れれば気になる程ではなかった。
使用していると排気が出るので、使用時は窓を常に開けておかなくてはならない。
この部屋は丸ごと発電機用にすることになるな。
通常のコンセントの差込口もあるので、直接さして使う事もできるのだが、配電盤とブレーカーの設置をすべきだろうか。
まあ、そこはおいおい考えていこう。
風呂ともなると、ペットボトルから水を出していてはやってられない。
というより、水、と言うたびペットボトルで出てくることに困っていたのだ。
俺は1つ試してみたいことがあった。
災害時にも使ったことのある、水用のポリタンクをまずは出す。
そして水、と言った。
するとポリタンクの中に満タンに水が入ったではないか。
これで毎回ペットボトルを出さなくてもよいし、ゴミの問題に悩まなくてもいい。
俺はそれを何度か繰り返して、風呂の中に水をためた。
実にデカい浴槽で、今から期待が高まる。
続けて投げ込み式ヒーターを出して、スイッチが切れていることを確認してから、発電機のコンセントにさした。
温度設定の出来るタイプで、30度から100まで設定可能だ。
発熱部が隠蔽型のものなので、ポリバケツにも使える。
規定の水位まで水がはられていることを確認する。
空焚きは危険だからな。
電源を入れてキッチンタイマーをスタートさせる。
投げ込み式ヒーターは引っかけておける大きな爪があるので、万が一にも水中に沈むことはないと思うが、浮力によっては確実とも言えない気がして、不安でじっと見守った。
30分経った頃、いい感じに熱くなった。
現時点で追い焚きは難しいだろう。
手早く風呂に入ることにして、投げ込み式ヒーターの電源を切り、コンセントから抜いて、発電機の電源を落とした。
この順番は決して間違えてはいけない。
俺は石鹸の代わりに重曹とクエン酸を浴槽にコップ1杯ずつ入れた。
これは炭酸風呂というもので、垢も落としてくれて体もあたたまるスグレモノだ。俺は週1回これに入るのだが、しっかり垢が取れるのだ。
顔を洗う際には洗面器にスプーン1杯ずつくらいでいい。
風呂はこれでいいとして、シャンプーをどうしようか。
湯シャンでもいいのだが、最近スーパー銭湯に行くことが多くて、ついついシャンプーを使ってしまっていたのだ。
どうしても皮脂が出るから、いきなり湯シャンに切り替えると、体が慣れるまで皮脂の出る量が減らずにベタベタになってしまう。
考えている間に風呂が冷めそうだったので、今日は湯シャンで済ませることにした。
桶とタオルを出して準備もバッチリだ。
頭と体を流してから湯船に体をつからせる。
浴槽のお湯で垢を落とすわけだから、事前に洗ったりなどしない。
まあ、1人だからこそ出来ることだな。
思わず声が出てしまうのは何故なんだろう。
このまま寝てしまいたいくらい心地よかった。
シャワーのみで済ませても平気な国や、人種に生まれてこなくて良かったとつくづく思う。
俺はこの家で一番好きな場所が風呂になった。なにせ手足がのばせるのだ。
手足ののばせる風呂以上のぜいたくなんて、俺にとっては存在しない。
炭酸風呂は普通よりも体が温まりやすい。
俺はのぼせてしまう前に風呂から出た。
これは昼間っから飲んじまいたい気分だ。
となるとツマミは簡単に出来るものがいいな。
俺はじゃがいも、ソーセージ、ベーコン、オリーブオイル、にんにく、粒マスタード、パセリ、マグロ、キムチ、アボカド、餃子の皮を出し、しまっておいた塩コショウを出した。
じゃがいもの芽を取って一口大に切り、鍋で柔らかくなるまで茹でる。
じゃがいもはあえて皮付きのままだ。
俺はその間に餃子の皮と、まだ余っていた青じそ(大葉)とチーズをクーラーボックスから取り出した。
餃子の皮に青じそを横に半分に切って細長く切ったチーズを乗せて、くるくると巻いた。皮に水をつければ勝手にとまる。
別に中身が見えないようにする必要なんてない。
フライパンにごま油をしいてカリッとなるまで両面を焼く。これで巻き餃子の完成だ。
続いてアボカドを種にそって2つに割る。種は割れないから、種の周囲にそうように切れ目を入れて、回して蓋を外すように取る感じだ。
アボカドは熟し方によって大分硬さが違い、それによって使う料理が変わってくる。
この場合は硬めを選んだ。アボカドの皮をむき、一口大にアボカドを切り、マグロも筋を切ってやってから、同じくらいに切る。
キムチは軽く包丁で叩いてやり、ボウルの中でアボカドとマグロとキムチとあえて皿に盛って完成だ。
ちなみにキムチのデカい葉でマグロとアボカドを丸ごと包んでやると、一気に店で出てくるようなオシャレな料理に変身する。
以前付き合ってた女性が、それを半分に切ったところを写真に撮って何かにアップしていたようだが、その面白さが俺には最後まで分からなかった。
茹で上がったじゃがいもをザルにあけて水気を切る。
ソーセージを一口大に、ベーコンは1センチくらいに切り、にんにくはみじん切りにする。
中火で熱したフライパンに、オリーブオイルを引き、香りが立つまでにんにくを炒めたら、ソーセージとベーコンを加えて更に炒める。
俺はドイツ式のジャーマンポテトを作るつもりでいた。
ソーセージとベーコンに火が通ったら、茹でたじゃがいもを加えて、オリーブオイルが馴染んだら、塩、コショウ、粒マスタードを、全体に混ざるようにかき混ぜる。
皿に盛ってパセリを散らして出来上がりだ。
俺はこの世界に来て初めてビールを出した。
風呂上がりに真っ昼間っから、好きなツマミでビール。
最高の休日じゃないか。
「いただきます。」
今日のツマミはチーズと青じその巻き餃子とマグロとキムチのアボカド和えとドイツ式ジャーマンポテトだ。
タップリ腹いっぱいになりそうだから、昼飯も兼用ってことでいいか。
やっぱりビールには、ちょっと辛いものや、塩気のあるものだよなあ。
なんにも作りたくない日に飲みたくなったら、俺は必ずカルパスを用意する。
単品でも食べるくらいには好きだったりもする。
そういえば、明るいうちに発電機のテストを兼ねて風呂に入ったことで、ついつい飲みたくなって、飲んでしまったが、まだ洗濯物も残ってるんだった。
やれやれ、どうしたもんかな。
環境に配慮しつつ、何もないところに何かを出すとなると、当たり前のように日々していたことが、こうもいちいち考えてやらないといけないのか。
余裕が出来たら、この地の食材なんかも、早く食べてみたいんだがなあ。
生活環境が安定するまでは、それは当分先のことになりそうだった。
地のものが食べたくて貰ったスキルだってのに。やれやれ。
俺がツマミを食べつつビールを飲んでいると、突然我が家のドアがノックされた。
誰だ?
俺は村を追いやられたから、かなり離れたところに家を立てたし、当然こんなところに知り合いなんていない。
人が訪ねてくる予定のないところに誰か来ると、通常誰でも警戒すると思う。
こんなところに新聞の勧誘や、訪問販売があるわけもないし、当然郵便物だって来るわけがない。
この世界の人間であるなら、あまり現代のものを見られない方がいいかも知れない。
俺はまだ食べている途中だったツマミや、飲みかけのビール、調理器具や皿、空のペットボトルに、クーラーボックス、電池式のランタンなんかを、すべて発電機の部屋にいったんしまってから、玄関のドアを恐る恐る開けた。
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