2→2「自称魔法使いと旧友」

「いやー、助かった、助かった、海に入ったはいいものの、泳げないことを忘れてたよ」


 快活に笑う白ローブの男、溺れていたが無事に救出できた。


「しかし君は凄いな、そんな鎧を着こんで泳ぐなんて、訓練なしじゃできない芸当だ、どこかの国に所属している騎士だったりするのかい?」


 まずいぞ、その質問は大変まずい、フィーネス王国の騎士『スワン』であることがバレると、今後この街で活動しにくくなる可能性が出てくる。


 適当に誤魔化そうにも何も思いつかない万事休すだ。


「人に名を聞くなら、そちらから名乗るのが礼儀ではないのですか?」


 助け船を出してくれたのはエレミリア、しかし妙だ、なんだかご機嫌斜めに見える。


「おっとこれは失礼した、私の名は『フォレオ』旅の魔法使いさ」


 きゃぴきゃぴのピースをキメるフォレオ、何なんだこの人は……ウザいぞ、早くこの場から退参したい。


「うぜぇ……なんだこのおっさん」


 フォレオさんに殺気マックスのエレミリア、てか口調まで変わっている。


「そちらの可愛らしお嬢さん名前をよろしいかな?」


 指名され更に濃度の高い殺気を放つエレミリア、これはまずい僕がかわりに紹介しなければ。


「えっと、彼女の名は『エレミリア』僕と故郷まで旅をしています」


「ほうほう二人で旅ね、それじゃ二人はカップルなのかな、随分と仲が良さそうだし」


「カカカカップルだなんて、ね、エレミリア」


「違います、此方こなたはスワンの保護者です」


 保護者か……、僕は弟か何かですか? これは振り向いてもらうのは大変そうだな。


 ここで発覚した新事実に胸がズタズタになりそう。


「しかし改めて感謝するよ、君が助けてくれなかったら溺れ死んでたよ」


 マントをひるがえし立ち上がるフォレオさん、彼は去り際に……


「スワン君、気をつけるだ、この街にはすでに黒史聖剣団こくしせいけんだんがやってきている」


「なぜ僕達が黒史聖剣団やつらに追われていることを知ってるんですか!」


「それは秘密♡ ではさらば!!!!!」


 フォレオは砂煙を上げ物凄い勢いで走り去る、スワン気がついたときには豆粒ほどになっていた。


「なんだか謎多き人物でしたね」


「胡散臭くてうざいです」


「でも顔立ちはそう悪くないじゃない?」


 二人はギョとして横を見る、そこには日傘をさした少女が一人。


「久しぶりねスワン、アデリーは一緒じゃないのね」


「人違いです、僕はスワンじゃないです」


「『いぶし銀の鎧に紫の一本線』誰がどう見てフィーネスの騎士スワンよ、事情は大体予想できるから、屋敷うちに来なさい、それとも私の言うことが聞けないのかしら?」


 日傘の少女は笑みを浮かべているが、どうにも異論を言わせない迫力をまとっている。


「それじゃ案内するから大人しくついてきなさい」


 そう言うと日傘をさした少女は無遠慮に歩き始めた。


 ーーーーー


「改めてだけど久しいわねスワン」


 メリアに(無理やり)連れられスワン達は彼女の屋敷にきていた。


「メリア様もお元気なようで何よりです」


「その取ってつけたような敬語をやめなさい、いずれあなたは私の弟になるのだから」


「(此方こなただけ話しについていけてないので、スワン説明してください)」


「その必要はなくてよ、今から説明するは」


 ここはアルストロ家のお屋敷で、スワン達の前に座る少子はアルストロ家の時期当主になる『メリア・アルストロ』


 スワンの実家であるパラディナイト家とアルストロ家は交流があった、パラディナイト家は繁栄のため、自分の子息との婚姻の話を持ち掛けた、それが三人の出会いだった。


「なるほど、お二人は幼馴染でメリアさんとスワンのお兄さんは許嫁の仲なのですね」


「そういったところね、ところでスワンその可愛いらしい子は誰かしら」


 メリアの質問がぐさりと痛いところに刺さる。


「妖精の少女と、あるかも定かな国を目指して、黒史聖剣団こくしせいけんだんとドンパチりながら旅をしている」とは言えない。


「スワンは此方を故郷に送るため一緒に旅をしています」


 見事に話しの伏せたい所を伏せた理由、「これなら乗り切れる」とスワンは内心ガッツポーズをとる。


「故郷ってどこかしら、是非聞かせて頂戴」


「(相変わらず鋭い観察眼、おっかねぇ……)」


「最果ての『ブルーム王国』です、此方はブルームの数少ない原住民です」


 スワンはエレミリアの顔を覗き込むと、彼女の表情は微小を浮かべているが、内から溢れる迫力はメリアにも負けてなかった。


「(どっちもおっかね……)」


「へぇブルームね、あの妖精伝説のあるね」


『妖精』と言う単語に二人は内心焦る、もう打つ手がない。


「スワンはまだ騎士の心得を忘れてないようね、安心したは、船でブルームにむかうのでしょ? 船が出るまでゆっくりしていきなさい」


 どうにか二人は危機を脱することができたようだ。


「それじゃこれから三人で街に行って食事……」


 その時だった、何が爆ぜるような爆発音が響き屋敷を揺らす。


「発生源は地下の倉庫のようね、行ってくるは」


「僕らも行ってみましょう、恐らく侵入者です」





 









 


 




 

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