2→1「ブルーシの街」
「着きましたね、海の街ブルーシに」
電車から降りて最初に目に入ったのは、街並みと活気に溢れ、人々と広がる広大な海。
乗船所には所狭しと船が並びごった返している、透明度の高い美しい海とこの乗船上がブルーシが『海の街』である理由。
「本当に綺麗な海ですね、こんなことなら水着も用意しておくべきでした」
それは是非見たかった、そんなことはさておき、僕達は『約束の場所』にむかうため、森を出て列車に乗りブルーシの街にやってきていた。
無人島には列車でいけず、船以外の手段がない。
だが森の周辺には船が出ていない、そこで列車の通る『ブルーシの街』まで脚を伸ばした。
「せっかく海の街に来たのです、泳げなくても見に行ってみましょう」
僕の手を握ると走り出す、エレミリアの視線は海に一点集中、瞳をキラキラと輝かす姿は年輪もいかない少女ように見える。
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「と言うわけで着替えてみました」
最高過ぎる……その一言以外何も言えない。
乗船所から少し離れたビーチに僕達はやってきたのだが。
「まさか水着のレンタルがあるなんて、どうでしょう、似合ってますか?」
僕は目の前の光景に喜びと興奮と熱狂が渦巻き話せない、できることは
「その親指は『似合ってる』ってことでいいですか」
頭を地面に叩きつけんばかりの勢いで立てに振る、もちろんばっちり似合ってます、最高!
このビーチでは誰でも海水浴が楽しめるよう水着がレンタルできるシステムがある、それを知ったエレミリアはさっそく利用し水着になったのだが。
店員さんはハイネックビキニって言ってた代物、上下が別々になっている構造で、問題は上のほう。
「少しきついですね、もうワンサイズ大きなものを借りればよかったです」
布で胸の全体を覆うようなデザインで一見お色気要素に乏しいように見えるが、エレミリアみたいな巨乳の子が着ると大変なことになる。
白とピンクの袋は今にも弾けそうなくらい張っていて、その……動く度に滅茶苦茶揺れるんです。
「残念です、スワンも着替えられたら二人で遊べたのに」
「モンダイナイデス、コノママオヨゲマス」
上手く話せず片言になってしまう、仕方ない。
「おっ、嬢ちゃん可愛いね一……」
この時の出来事は僕以外には、誰も理解できていなかった。
海には必ずと言ってもいいほどいるナンパ目的の輩、エレミリアの肩に触れようとしたと同時に横から頭を握り地面に叩きつける。
その後は海めがけて全力で放り投げる、絶対に触らせん!
エレミリアもナンパ男も状況を理解できない程の早業で。
「スワンいま誰かいませんでした、声がしたような」
「気のせいじゃなんですか、ほら泳ぎにいきましょう」
ナンパ男に興奮をぶつけたおかげか、少しリラックスできた、その一点は感謝。
視線の先には小ぶりなお尻が左右に振られている、これは人生落ちる所まで落ちた僕に対し、神様が「今日くらい目をしっかり保養しな」と言ってるのだろう。
神様も捨てたもんじゃない、いやありがとう!!!!
気がついたときには、僕はエレミリアを追い越し海に飛び込んでいた。
どこまでも広がる青い天井、色鮮やかな魚達は自由に泳ぎ、青一色の世界を色鮮やかに染め上げる。
「世界って美しいな、エレミリアどうですか」
後ろを振り返ると、もがき苦しむハイネックビキニの少女がいた、どうやら楽しい時間はもう終わりらしい。
「エレミリア泳げなかったんですか! 今助けにいきます」
僕は彼女を担ぎ陸に戻った、やっぱり人生そう上手くいかないよな。
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「泳げなかったんですね」
「泳げませんでしたね」
ビーチパラソルの下で膝を抱え座り込む二人。
「海を目の前にテンションが上がり過ぎて忘れていました」
幸運にも好きな女の子とやってきた海、ここで距離をグッと近づけたいと思っていたが、当の彼女は溺れ水平線を死んだ目で眺めていた。
僕は泳げるがエレミリアは泳げない、僕は泳げるが、エレミリアは泳げない、僕は泳げるが、泳げるが……
「そうだ、その手があったじゃないか、エレミリア僕が教えますよ泳ぎかた」
泳げるなら、その方法を教えればいい、そうすれば今度こそ海を楽しめる。
「そうですね、鎧をつけて泳げるスワンの指導を受ければ間違いなしです」
「では行きましょう、海が僕らを待ってます!」
エレミリアに手を引かれる僕、彼女の顔には笑顔が戻っていたと思った束の間、脚が止まり一点を凝視しする。
「まずっ、溺れるっ、てかもう溺れてるっ……助けてっ!」
「なんか他人の気がしませんね、さっきの
バシャバシャともがき溺れる男性、デジャブを感じえない。
溺れる男と自分を重ね遠い目になるエレミリア、いやそんなこと考えるよりも、あの人助けないと。
鎧をガシャ、ガシャ鳴らし、海に入り男を救出した。
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