月下大戦
エピローグ「幼き日の兄と僕」
「いいかスワン、俺達は必ず騎士になる」
埃が溜まった物置の中に二人の少年がいた。
一人は大きな瞳の少年で、少女のよう見える。
もう一人は釣り目の少年、その双眸のせいか勝気な印象を与える。
少年達が読んでいたのは一冊の本、この国では知らない者がいない程の有名な物語。
主人公の騎士が怪物や盗賊と戦ったり、素敵なお姫様と恋をしたりする、少年ならきっと誰しも憧れるお話。
「どんな辛いときも騎士道精神を胸に余多の強敵に挑む」
「誰かを救うために、自分の危険すら顧みず剣を奮う」
「最後は多くの賞賛と素敵なお姫様を手に入れる」
「可愛いお姫様ならもういるじゃないか」
釣り目の少年にはすでに将来を約束した許嫁の少女がいた、だが少女の姿を思い浮かべる少年の顔は苦虫を噛み潰したように渋い。
「メリアの奴おっかないからな、力強いし、なんか偉そうだし」
「兄さんいつも尻に敷かれてるよね」
「尻? あいつのデカいケツに敷かれたら潰されるぞ」
「そう言う意味じゃないんだけどな」
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列車の緩やかな振動で目が覚める、真っ暗な辺り夜なんだろう。
随分と懐かしい夢を見ていた、僕が騎士になろうと思ったきっかけ、いや、なると約束した日のこと。
「約束を果たしたいいけど、随分理想と違ったな」
フィーネス王国で騎士になり、武勲を挙げたのは良かったが、賞賛も可愛いお姫様もなかった。
「あの人、いった何処で何してるんだろ」
窓から覗く海を眺めながら、失踪した兄のことを考える。
本当になんの前触れもなく、いなくってしまった兄、できることならもう一度会って、昔みたいに話したい。
「何ノスタルジックな雰囲気に浸ってるんですか?」
「起きてたんだエレミリア、てか何作ってるの」
横に座る桃色髪の少女は「エレミリア」
僕はわけあって彼女と旅をしている、そんな彼女の手には布と糸を通した針が握られていた、裁縫でもしてるのだろうか。
「内緒です、完成したら教えてあげますよ」
月の光に照らされた彼女の表情は、どことなく色香が漂う微笑を浮かべていた。
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