1→4「黒史聖剣団」
「
『黒史聖剣団』それはフィーネス王国が有する裏の組織。
暗殺、誘拐といった表沙汰にできないようなこと遂行する影の部隊、その上全員が凄腕の聖剣使いと聞く。
目の前に立つこの男「バンナ」もその黒史聖剣団だと名乗る。
逆手に握られたナイフ程の長さの剣、おそらくあれがバンナの聖剣なのだろう。
「まっそう言うことだから、死んでくれ」
「重い!」受け止めたチェーンヴェール越しに一撃の重みが伝わる、相手は間違えなく手練れ、どうやら黒史聖剣団と言うのは嘘ではないようだ。
「どうして聖女さまの命を狙うんだ、お前達になんの利益もないだろ」
スワンの命が狙わるのは理解できる、王国から追放したまではいいが、聖剣の力を使い反旗を翻しかねない、だからこそ命を奪い不安要素を取り除くために刺客をさしむけるのもわかる。
だがどうしてエレミリアの命も狙うのだろう、彼女がいなければフィーネス王国は聖剣を作れなくなる、それは国の兵力の成長を著しく損なうことになりかねない。
「俺は詳しいことはしらん、ただ命令に従いお前らを殺すだけさ」
迫る聖剣をチェーンヴェールで防ぎ、回し蹴りで反撃する、分厚い鎧の装甲が直撃したバンナの身体は地面を転がり家の外へと弾かれる。
「そうだよな、室内なら獲物が短い俺の方に分がある、それにそんなデカい鎧じゃなおのこと不利だよな」
バンナはスワンの考えを読んでいた、さっきの攻撃はダメージを与えるのが目的ではなく装備による有利不利を打ち消すものだと。
「いいぜあんたの土俵で戦ってやんよ、そら行くぜ」
バンナを室外に連れ出せて盤面は若干有利まで持ち込めた、しかしスワンには大きな不安要素があった。
(一体どんな魔法の聖剣なんだ?)
どんな魔法が刻まれた聖剣なのか全くわからない、故に不用意に攻撃できない。
「おらおらどうした英雄様よぉ、やり返してこないのか」
攻撃の際も魔法を使ってこない、この様子だと直接ダメージを与える類のものでいと判断できる。
(こちらから打って出て試してみるか)
「〈紫紺の開花《ヴァイオレットフラウリン》〉」
一閃を放つと、魔力爆発が起き、それを皮切りに連続で爆撃が続く、それは紫紺の花が一斉に咲き乱れるように美しい。
スワンの持つチェーンソードの魔法の一つ。
スワンは手ごたえを感じたが、同時に違和感も感じた、攻撃は間違いなく決まった、しかし完璧に決まったわけではなく、剣技の威力が弱まっていた。
「危ない、危ない、聖剣に刻まれた魔法を使ってなかったら死んでたは」
けろっと立ち上がるバンナを見てスワンに予想が確信に変わる。
「お前の聖剣の魔法は身体強化だな、じゃなきゃ今の一撃で仕留めきれていたはずだ」
スワンの指摘に獣のように犬歯を剥き出し笑うバンナ、再度聖剣を握りなおす。
「当りだぜ、俺の聖剣『
チェーンヴェールとデンジャラスビーストが激しくせめぎ合う、確かに身体能力が大幅に上がっているが、けして対応できない程ではない。
「いいね、いいね、そう簡単には殺《や》らせてくれないか」
(まだ何か隠しているのか?)
身体強化にしては効果が薄い、『
(だとしたら短期決戦に持ち込んだほうがいいな)
「〈紫紺の花弁《ヴァイオレットペード》〉」
舞い散る花弁の如く、紫の魔力をまとった刀身が縦横無尽に放たれる、チェーンヴェールの持つ連続剣。
一瞬バンナの表情にも動揺の色が出ていたが、事前に知っていたのだろうすぐさま迎撃のかまえを取る。
再度チェーンヴェールとデンジャラスビーストがぶつかる瞬間、コンマ数秒スワンの動きのほうが早い。
チェーンヴェールは刀身の先まで紫の魔力に染まる。
それは一輪の花のようにすら見える。
「〈
燃えるような紫の焔をまとったチェーンヴェールの一撃が放たれ、バンナは地面を転がる、間違いない手ごたえがあった。
態勢を立て直そうとバンナは森の中へ姿を隠れる、それに気がついたスワンも後を追う。
森に入り少し進んだところにバンナはいた、その笑みを浮かべまるで自分の勝利を確信したかのように。
「ようこそ俺の
スワンの本能が「これは不味い」と感づき森から出ようとするが……
「これな〜んだ?」
バンナの片手に掴まれていたのは……
「聖女さま!!!!」
スワン自身何が起こっているのか理解できない。
エレミリアは間違いなく家の中にいた、だが今はバンナに捕まっている、奴がエレミリアを捕まえるような素振りは一切なかった。
迫るデンジャラスビーストの刃からエレミリアを引き剥がす、しかしスワン自身の回避が間に合わない。
刃は鎧を切り裂き、中のスワンにまで届く。
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