1→3「お互いの身の上」
僕の名はスワン・パラディナイト
地方貴族『パラディナイト家』の次男、小さな頃は特段何かに秀でたとかはなかった。
十二歳になる頃、兄と一緒に王都で見習い騎士になり、それから数年も何も大きな功績はない。
ことの始まりは十五歳の時だった、その時フィーネス王国は他国との戦争の真っ只中で戦況はあまりよくなかった。
そんなとき女王から一振りの剣を授かった、これが悲劇の始まり。
剣の名は『聖剣・
チェーンヴェールの使い手になった僕は、またたく間に戦況をひっくり返しフィーネス王国に勝利をもたらし、その功績から騎士団に抜擢、身に余る数多の報酬を栄誉を手に入れたのだが……
英雄として祭り挙げられた、しかしチェーンヴェールには恐ろしい呪いがかかっていた。
チェーンヴェールは使い手と一定以上、距離ができると使い手の手元の戻ってくる。
それが意味することは、一国の騎士団を壊滅させる力を常に持っていて、いつでも使えると言うこと。
更に僕の身体には人間離れした魔力量を宿っていて、それも相まってより聖剣の性能を引き出すことができた。
そんな人知を超えた力を手にしてしまった僕は回りの人間から恐れられ憎また。
皆表では皆媚びへつらい、裏で怪物呼ばわりする。
故郷に帰り静かに過ごそうかと思ったが、聖剣の一件で勘当され、この頃兄も突如姿を消した。
他人が怖くてしかたなかった。
怪物と噂されるのが堪らなく苦痛で仕方がない。
他人に姿を見られることすら苦痛でしかたなかった。
その結果、常に鎧を身に着け他人に容姿を見られないようにし始めた。
その数年後、『洞窟の聖女の調査』を建前にフィーネス王国を追い出された。
ーーーーー
「と言った感じの経緯です」
隣で神妙な面持ちの聖女様、彼女の視線の先にはチェーンヴェールがあった。
鉄の槌で叩くとチェーンヴェールから魔力が溢れ出す。
旗から見ると何をしているのかわからない、聖女さまに聞いたらところ『チェーンヴェールに足りてない術式を後付で足している』とのこと。
聖剣を作れる妖精は一部だけらしい、聖女さまはそう僕に説明してくれていた。
チェーンヴェールは恐らく聖女様が作ったらしく、完成後でも簡単な調整や改良はできるらしい。
身体から離れなくなっているのは、未完成のまま使ったからで、完璧な状態にすれば呪いは消えるとのこと。
「この聖剣、魔力を増幅させると言うよりも………」
「どうしたんですか、何か変な所でもあったんですか?」
「いえ、それはそうと次は
「聖女さまってここに自分から住んでいるわけじゃないんですか」
「当たり前です、誰がこんな何もない場所に好き好んで住みますか」
ここにあるのは木と川と独自の進化を遂げた怪物のみ、確かに住まない。
「ここに軟禁され日々聖剣を作っています、半年に一度程フィーネスからの使者がきてその聖剣を回収していきます」
なるほどな、聖剣を作れる時点で薄々気がついたいたが彼女は妖精だったのか。
「作った聖剣に刻んだ魔法は覚えてません、と言うか消されます」
フィーネス王国の聖剣は彼女によって作られていたのか、とすると彼女は………
「此方の記憶は聖剣・『
「約束……ですか」
「どこかへ行かなければならない、場所はわかる、でもそこに何があるかは全く思い出せないです」
「ここを抜け出してその場所には行こうとは思わなかったんですか?」
彼女には聖剣を作る力がある、なら自分の使える聖剣を作れば、ここからの脱出も容易のはず。
たとえ剣の腕が素人でも使う武器が聖剣なら話は変わってくる、ここらのモンスター……
「気がつきましたね、この森と外の洞窟のモンスターは独自の進化を遂げています、此方が聖剣を持っていたとしても怪しい」
洞窟の中で戦ったミミズモンスターもそうだがこの一帯のモンスターは独自の進化を遂げていてより強力な個体へと進化している。
聖剣があるとは言え、聖女さまの細腕で倒すのは難しい。
「それにこの森には魔力を帯びた結界が張り巡らされいます、脱出はほぼ不可能です、……それとごめんなさい」
聖女様は急に謝罪をするとうつむいてしまう、視線の先にはチェーンヴェールがある。
「謝らないでくださいよ、確かに聖剣を作ったのは聖女さまかもしれません、でも悪用したのは女王です、聖女さまが責任を感じるのは違いますよ」
彼女も自分が生きるために渋々聖剣を打ったのだろう、それを責めるのは筋違いのような気がした。
「それにこうやって、呪いを解こうとしてくれますし」
「そう……ですか? スワンがそう言うならいいです」
ほんのり微小を浮かべる聖女さま、この子はこんな顔もするのか。
「なんですかその顔は『以外に感情豊かか?』と思ってませんか?」
こっちの考えは読まれていたらしい、しかし人と会話をするのってこんなに楽しかったけ?
肉親の兄も消え、鎧で容姿を隠しだしてから他人との関わりが辛くてしかたなった、だから一人でいた。
でも彼女と話しているときは全く嫌な感じがしない、むしろもっと話をしたいそうとすら思える。
それは彼女が人間でなく妖精だからなのだろうか?
「どうしました? ぼーっとしてるんですか」
「ちゃんと聞いてますよ、………聖女さま少し後ろにいてくださいね」
聖女さまの腕を引くと僕の後へ、両手でチェーンベールを握る。
ドアは無惨に蹴破られ木片が家の中に散乱する、その奥から現れたのは……
「フィーネス女王直属『
フィーネス王国からの刺客だった。
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