しにゅらう

エリー.ファー

しにゅらう

 葬式の帰り道に、男にあった。

 見かけない男であった。

「あなた、お葬式の帰りでしょう。そうでしょう」

「えぇ、まぁそうですね」

「お葬式って暗い気持ちになるから怖いですよね」

「そうですかね。合っているような気もしますが、どことなく外れているような気もするのですが」

「お葬式が怖いでしょう」

「いえ、怖くはないです」

「まぁ、怖くはないかもしれませんね。あなたに限ってはそうでしょうね。えぇ」

「どういう意味ですか」

「いやね。それ、あなたのお葬式だったじゃないですか」

 私は沈黙する。

 そんなわけがない。

「あの。私の姪の葬式だったんですけれども」

「あぁ、そうなんですか。これはこれは失礼いたしました。いやぁ、あてずっぽうで言ってみたんですが」

「あてずっぽうで私の名前を出すのは得策だとは思えないのですが」

「細かいことはいいのです。ね、細かいことを気にしていたらお葬式に行っていたことも忘れてしまいますよ。そうでしょう」

「はあ。そうですかね」

「そうに決まってますよ」

 男は大きな声で笑いだし、私を指さす。

「先週も、その先週も、そのまた先週も。あなたは姪のお葬式に行って、私と話したじゃないですか。どうしたんですか、忘れてしまいましたか」

 私は沈黙する。

 そんなわけがない。

「そんなわけがないと思うのですが」

「何がですか」

「いや、あなたの話している内容ですよ。なんというかホラーのような感じがするというか」

「全部、真実ですよ。本当に」



 目が覚めたら体に異変がないかを確認し、記録した内容に間違いがないかを確認してください。承認された時点で、それらはすべてAクラスの研究内容として一般研究員には見えない状態として、保管いたします。

 萩田博士の提言によって行われた研究ではありますが、その萩田博士がこの研究中に行方不明になるという問題が発生しております。このことから、研究主任の交代の要請をしておりますが、今のところそのめどは立っておりません。明らかに研究の進行の妨げになっており、これは石津谷会議の開催もしくはSクラスの管理部門長八人の推薦を必要とする事案として適当であると考えられます。

 灰から生まれた町の研究も続いておりますが、相互関係の点から進めることは不可能との結論に達しており、葬式及び葬列の発生条件はこれによって常に満たされていると思われます。これは、研究外の要素が研究に影響を与えることを示しているため、正しい結果が得られない、また得られていないことの証明となります。

 ここまでの内容は参加した者のみが閲覧することのできる、文章であるため持ち出し、写真撮影、動画撮影等の行為は禁止となりますのでご注意いただければと思います。


 この研究は多くの勇気ある人々の犠牲のもとに進んできました。

 それはこれを読んでいるあなたもその一部であることを示しています。

 夢の中の葬式と尋ねる闇の分析、そして対策は人類の悲願となっています。

 素晴らしき眠りを、素晴らしき夢を、素晴らしき日々を作り出すために、どうかご協力をお願いしたく最後にこの一文を加えさせていただきます。


 世界が平和であることは、人類の願いではない。義務である。

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