多神教者の私は神に溺愛されてるはず

あんよ

第1話 教会との出会い

「こんな所に倒れてどうしたんですか。可愛い君。」



パラリと額にかかる前髪を優雅にはらう金色長髪男性が私に声をかける。


気がつくと私は倒れていて閉じていた目がまだ光を拒むのか目の前の光の男が眩しくチカチカする。


陽の光とともに金色の長髪の男が私に手を差し伸べてくれたのだ。




誰だろうこの美形は。私はいよいよ天使様にでも迎えられたのか?しかし状況がおかしい。何故私は倒れているんだろう。


私はおそるおそる自分の手を見て衝撃を受けた。


私の手はそれはそれは小さく豆もシワもないようなきれいで白いふわふわの手だった。


どういうこと?意味がわからない意味がわからない。落ち着け私。落ち着くのよ!



■夕陽ケ桜高校3年普通科 小早川 玲奈(22)現在(未来永劫)彼氏無し LINEは公式垢のみ 特筆した才能無し(無いどころか留年しすぎてる。家か裕福なくらいしか取り柄がない)


私は顔や手足や首など自分の体を確認するように手で至るところを触った。その様子を見て、目の前の男の人は首を傾げた。そりゃあ、声をかけたのに返事もしないしその上奇妙な行動を取り出したらそうもなるか。



しかし、長髪男性はサラリと垂れるそのきれいな金色の髪を右耳にかけてしゃがんで私の位置まで顔を下げてくれた。子供の接し方になんとも慣れている様子だ。これはモテそうだと思った。


「どこの子でしょう?家まで私が連れて行ってあげましょう。」


しかも優しいらしい。その笑顔は百点に近く、恋愛経験ゼロの私には圧倒的に効果ありだ。大変。私のHPはもうゼロよ!どこかの国王子と言われても私はそうなんですかときっと納得するであろう。 


けど家か…多分ここ異世界だからないよね?

いやでも、一応ダメ元で言ってみる…?

もしかしたらと淡い期待を持って正直に私は家のことを話した。


「大阪府の中央区の8-12-21 アランジェマンションの6階です。その気づいたらここに倒れてたみたいなんです!!」


しかしこんなに完璧な自己紹介をしたにもかかわらず全くの逆効果。身元を話して相手に納得や安心感を与えるどころか不信感と余計に心配をかけてしまった。


その証拠に目の前の長髪男性の完璧スマイルが一瞬崩れた。私の言動はイケメンスマイルに勝ったらしい。


「うーん…?」


男性は頭でも打っているのかと違う意味で心配した様子で聞いてきた。罪悪感しかない。


分かるけどここには無いんだよな。絶対に無いのは確実。見るからにヨーロッパの街といった感じで遠くからは教会の鐘の音や小鳥のさえずりも聞こえる。日本でよく聞く広告自動車や鳩の声とかそんなんじゃない。確実に異世界だと思った。そう思うと帰る手立てのない今、そして子供という体に絶望し涙を流した。


長髪男性は現状にショックを受けている私を心配そうな顔でそっと私の濡れて汚れた頬に手を当ててのぞき込んだ。


私の手を見る限り自分の姿はまだ把握していないがおそらく7歳くらいの子供であろう。もうこの先こんなに私を心配してくれる人なんていないかもしれない。私はこの人にすがる気持ちで助けを求めた。


見ず知らずの子供だ。それも変な言葉をたくさん喋る奇妙な子供だ。少々きみの悪い子供を好き好んで受け入れてくれる人なんてそういない。私は断られたらどうしようと不安で震えてしまった。



その様子を見た長髪男性は仕方なさそうな顔をしてから私の頭にポンッと手を置き前髪をくしゃくしゃとしてから今度は柔らかな笑顔をこちらに見せた。




「それなら私のところに来ませんか。」


「.....へ?」





✱    ✱    ✱    ✱


そう言って連れて来られた場所はなんと教会だった。ステンドグラスがびっしりと埋め込まれた窓とこった装飾の外観。周りには女性が多く集まっており教会の敷地の外を囲うように並んでいた。


ステンドグラスは本当に色鮮やかでとてもキレイで心を奪われた。こんなきれいなところなら神様もいるかもしれない。無宗教者の日本住みの私ですらそう感じるほどに幻想的で見入ってしまった。


私は外観だけでは満足できずステンドグラス越しに中の様子をうかがおうとそーっと見ようとした。すると突然それを更に後押しするように歌声が流れて私の意識はステンドグラスの内へもっていかれた。


その美声は女性のソプラノの声のようで柔らかくそして品と強さのある歌声だった。私は息をハァーと吹きかけて手でこすり中を更に覗こうとした。しかし目に入ってきたのは歌声とは反対の視覚的情報。


まず女性ではなかった。少年が歌っている。しかし声は女性のソプラノのようだ。聴覚と視覚の情報の不一致で頭は瞬間的にパニック障害である。


そんな驚く私の手を引き教会の敷地へ足を踏み入れた。周りの女性達は私達に一礼して中には入らないようだ。もったいない。


教会の中はとてもきれいでステンドグラスの陽の光が差し込みまさに天使が舞い降りでもしても不思議ではないとすら思えてくる。光が幻想的な空間を作り出している。そしてなんといってもこの歌声だ。この声が一層この教会の幻想的な世界を作っていると言っても過言ではない。まさしく天使の歌声だ。



「驚きましたか?うちの少年隊はきれいでしょう。」


長髪男性はサラリと爆弾発言をして席に座った。今とんでもないこと言ったけど、これはうちの推しは最高だろ?俺の嫁は最高とかいう限界オタクの発言に近いしいものだろうか。おそらく違うが一応聞き返した。


うちの少年隊とは一体どういうことだ。


「あの人たちは誰ですか?」


「あれは私の孤児院で組んでいる少年隊です。各孤児院は協会が運営しており恵みを頂ける感謝の意を伝えるためにこうして毎週日曜日に教会で歌わせてもらっているんです。」


まさかの長髪男性は孤児院で組む少年隊の責任者のようだ。


なるほど。つまり孤児院は食べ物を教会からもらって、その代わりに教会は賛美歌を歌ってもらってるのか。しかし少々疑問が残る。


「女の子は歌わないんですか?」


「女性は教会には入れませんよ。周りに女の人が集まってはいるけど中に入っているのは男性ばかりでしょ?歌うことはおろか入ることも許されませんよ。」


「え!?」


ちょっとこの世界の宗教は女性に対して厳しすぎないか?その理論だと私は入れないことになるんですけど。


もしかしてこの人私のこと男だと思ってる?いやそんなはずはないだろう…そう思ったけどまだ自分の姿を確認していないから自分がどんな顔でどんな姿なのかわからないから判断しづらい。下半身を触ったがそれらしきものも見当たらないのでまず女で確かなはずだ。





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