第5話 異変の始まり

目覚めた。再び目覚めた。

目に着くのは落ち葉の山と真っ黒な天井。天井の光はいつの間にか消え、抜け殻のような寂しさを放っている。

“ピカー!ゴロゴロ!!”

雷の音が外から聞こえる。

空気に漂う冷気の寒さ、洞窟の濡れた壁の触覚。全てが寂しく、暗黒な気分を漂わせる。

“どうして、全てを奪うのか…”

記憶。それは私の全てだった。私は、もう何も頼れるのは無い。氷のように冷え切った全ての世界。

何故生きるのか。何故奪われるのか。私は分からなかった。

“目覚めたか、小娘。”

聴いたことのあるような声。

知らず知らずに聴いたような声。

眼を上げ周囲を朦朧と見た。

“何か言ったらどうだ、小娘。”

“は、はい!”

声の元を見るとそれは紫色の瞳をした竜であった。

“あなたは?”

“聞き飽きたぞ、その愚問。”

私の事を少し睨み、再び目を閉じる黒龍。

“す、すみません。”

正直怖かった。ただ、敵意は感じられなかった。もしかしたら以前から知っていたのかもしれない。

“ううっ!”急な頭痛と共に、腕の模様が再び光り出した。

“私、記憶取られた…記憶の無い私なんて誰が必要と…”

失われた悲しみ、何もできない無力感。心は次第に、全てを嫌に思う。

ただし、そんな私を竜は見て軽く笑った。

“忘れた物はいつか必ず戻ってくる。戻らなければ、取り返すだけだ。”

彼はそう言い立ち上った。

“此処にいるのも構わない。だが人間である以上、私と長居するのはよくない。”

彼は私をまじまじと見た、その眼から私に決断を要求している。

“どこへ行けばいいのだろうか?私、全然分からない…何もかも…全て。”

“そうだな。もし、人の村を探すのであるのなら一番近い所で小瀬村と言う村が有るが少なくとも五十キロ先の話だ。”

“こせ?ムラ?”

“アルファロス帝国に属する町の内一番外野に値する村だ。そして魔界にも一番近い隣村の一つだ”

“アルファロス?”

“人間の勢力の一つだ。ヘンブス、アルファロス、ティメシア。その内ヘンブスに次ぐ人類の第二勢力だ。”

“人類の勢力。”一息置いて。私は洞窟の外を眺めた、まだ雨はやまない。

“さっきから気になる所が有るわ。”

“ん?”

“あなたは自分が魔族と言ったけど、この世界実際魔族以外に人間以外の種族…勢力が他にも有るの?”

“、そなたは人間、私は魔だ。人と魔は長居してはならない。人間は長い間人と離れてはいけない。ただそれだけだ。”

“フフッ、そうね。けど、せっかくの話し相手を手放したくはないわ。あなたも勿体ないと思わない?私の事。”

“そうか…けど、忘れてはいけない。我々の種族同士は常に戦争をしているからな。”

“戦争…魔族と人間?”

“そうだ。”

“アハハ、馬鹿馬鹿しいわね。他の人類にも私のようあなたの事を怖がらなくてもいいのに。”

正直、驚いた。驚いたよりショックだった。てっきりこれから安静な …?… 生活を送れると思ったのだが。どうもそうとはいかないようだ。

“フン。それは私とそなたの間だけだと思え。全ての人類と魔族が我々のように意思伝達出来ると思うな。”

我々だけさと彼はそう言い私と一緒に洞窟の窓口まで進んだ。

“そなたが眠りについてからひと月は経った。ひと月前まで、世界の次第は変らなかった。ただし、その後魔王が魔族大聖祭により復活させられた。だから形勢は逆転している。人類は滅ぶ。”

彼はわざわざ私の方を向いて最後の一言人類は滅ぶを言った。正直なんか胸騒ぎがしたが、私はそうと信じはしない。

“へえ、魔王って強いのね。彼に勝てる人って存在するの?”

最後の一言はほっといて私はもっとこの世界の事を聞いた。情報だ、情報はこれから生存に関る重大な手掛かりとなる。情報が多ければ、我々は

“当たり前だ。奴にかなうものは現在勇者だけだ。”

“勇者?何の事?”

“それは…”

彼は少し黙った。そして再び私の方を見た。

“これは我々だけの機密情報だ。そなたに教えられるが、現時点で絶対に他人には話してはならない。話さない、それは私とそなたの約束だ。守れるのか?”

“あなた次第ね。でたらめだったら話すのも話さないのも意味は無いじゃない?”

“わかったわよ。話さないわ。確かに現時点で話したらお互いにマズイからね。”

“そういう事だ。私は魔族であるし別に構わないが、そうとなればお前の身が危ない。”

“フッ余計なお世話よ。話す訳ないでしょ殺されたくないし。第一、国の機密情報を漏らしたあなたも逃げられないわよそうしたら。”

“だな。”

勇者の存在は公には出されてはいない理由は簡単、魔族に致命的なダメージを与えるためには存分に力を蓄えなければいけない。そしてもしその勢力が公にばれれば、魔族全域からの集中砲火を食らうそうすれば例えどんな勇者でも生まれも育ちもしなければ凡人と同然。殺されてしまう。

勿論、私のような得体の知れない者が知れば当然人類からも魔族からも敵視される。人類はわたしたちもろとも脅威と見て消そうとするし、魔族は情報を得て拡散するため我々を追い続ける事となる。簡単な戦略的思考だ。

“一つ提案があるが、果してそなたが同意するかどうか私には分からない。”

“提案?”

“私と契約をしろ。”

“契約?”

私は少々戸惑った。

…契約?紙に書いた物で約束を守れっていうの?それとも…

“魔族と人間が交わす契約はただ一つ。使い魔の契約だ。”

“使い魔?!私になれっていうの?”

“私だ。”

“え?…でも何で?”

“三か月前意識が戻って以来私の体の魔力は日々衰えている。魔力を失えば私は死んだも同然。私はこのままでは長くはもたない、だからせめて命の恩返しにそなたに私の主となってほしいのだ。”

“…”

どうりで何かがヘンだと思っていた。魔族なのに人を助け、魔族なのに私と対等に話してくれた。それら全てがこれで合点が着いた。彼は助けが必要だと。

“良いわよ。それであなたの命は保証できるのかしら?”

“そなたは強くなる、そして使い魔である私はそなたと一緒に強くなる。そうすれば保証が出来る。”

“私が強くなる保証って何処に有るのかしら?”

“戦争、それがすべての答えだ。そなたには終わらせる権限がある、何せ私が終わらせたいのだから。”

“終わらせる権限…フフッ。良いね。嫌いじゃないわ。”私は笑った。結局彼の意志で有ったが何故だろう、こんなにも大きい生物に終わらせる権限を貰って嫌だとは言えない。


人は無茶をする、例え何にも分からなくても自然と正解の道を見つけ歩んで行く。

この世界の使命。それは戦争を終わらせる事、そう初めて私は実感した。

一体主人公はこの戦いの中でどんな出会いが待っているのか?

続きは

第六話

その頃の味方

まで。

~世界がもし全てが生死によって繋がるとしたら~

五話最後までお読み頂き誠に有難うございました。


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>作者からの一言。

カオス!!

今朝、テキトーにそこらをぶらついていたら。

カラスが空から降って来た!デカ過ぎ!!ビビった!

*暖かくなってきたのか鳥が多くなって来たように感じています!鳥との衝突事故、くれぐれもご注意ください!

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お読みいただき、誠に有難うございます。

更新は不定期ですのでどうぞご期待ください。

今回は貯め置きしていた分を出します。

最後まで読んで頂き、誠に有難うございました。

空想っていいですね!楽しいです!

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