第4話 始道終焉 始まりの終わり

どれ程眠ったのだろうか。

周りには粗末な落ち葉が敷き詰められ。

天井は青く光っている。

“ガ!”

大きな頭だ。

“ヌア?!”

驚いて声を上げ、即座に顔を手で隠す。

彼の目から心配のようなものが見える。

それでようやく川に落ちたのを思い出した。

“ありがとう…運んできてくれたのね、此処まで。もう大丈夫…”

やっとのこさで状況を理解した私はゆっくりと起き上がった。

髪が乾燥している。

雹によって傷ついた体はとっくに治っており。

きっと長い時間寝ていたに違いないと悟った。

長い夢を見てた。

悪夢を見てた。

夢の内容は、何者かが私の腕をつかんで深い闇へ引きずり込む夢だった。

ただ、誰かが私を救い。

そしてその私の知らない誰かが、何か重大な事を喋ったように感じる。

…一体何だったんだろうか。記憶が、思い出せない…

“グルル!!”

考えに浸っていると、竜が近づいてきた。

彼はしきりに私を見て、外の方角を見る。

その眼から頼み、或いは期待が見られる。

“私?外?…外に出るのね。良いわよ。”

ようやく彼が何をしたいのか分かった私は頷いた。

長い時間洞窟にいただろうし、さすがに外へ出るべきだと思う。

彼は嬉しそうに頭を擦り、洞窟の外へ歩き出した。

今更だが驚くことに不思議と話は通じる。

周囲には名の知れない、青い色の蔓が伸びている。

蔓は木の根のような形をしており、間に手のひら程の菱形の芋がぶら下がっている。

そしてその芋の中に光る虫が住み着きその穴々が辺りを照らす。

竜の足音と共に芋同士がぶつかり合い、キラキラと蛍光の粉が降る。

皮膚に付いた粉は暖かいエネルギーを放っており、触れるだけで暖かい。

恐らくこの粉の効果を判断して私を此処に置いたのだろう。

此処は安全で、凄く深い場所。

周りを警戒しながら私を見守る彼の姿を見て。

私は何故か、ドキュメンタリー番組の獅子がわが子を隠す時のようにも思えてなんか複雑な気持ちになった。

“そういえば、名前はどう決めよう?”

私は急に自分がずっと相手の名前を知らないことに気付いた。

言葉を理解するならば、名前は有ると思う。

だが。

“グルグル。”

彼は首を振る。

そして天井を見て、頭を掻く。

“忘れちゃったのね…”

私も少しながら記憶が曖昧になっている。

かと言って何も覚えていない訳でもない。

知識量は基本変わらない。

色々覚えもしている。

例えば今私は地球に居ない事、昔会社員だった位。

ただし、何かが欠けた。

何かが。

“....”

彼は首を振った。

考えても仕方あるまいとでも言いたいだろう。

ただし、少々困った気もする。

“名前付けてもいい?”

名無しでは話にならない。

けどかと言って彼が満足するような名前を付ける自信も無い。

“…ウン。”

彼はまじまじと私を見た後、不思議な声と共に頷いた。

“名前は…そうね。”

私は、彼を自分のパートナーにしたい。

だから、決してそそくさと決めたくは無い。

暫く座って考えた。

彼も傍へ蹲って私をじっと見つめる。

“決めた!”

“ビクッ!?”

急な私の叫びにびっくりした様子の竜を見て私はクスクスと笑った。

“優しい黒竜と書いて ナラク でどうですか?”

“グ?グルグル!”

ドスンドスンと足踏みして、彼は目をつむって笑う。

気に入ったようだ。

“私はこれからシロにする、この世界は何も知らないしまるで白紙だから、だからシロ…犬っぽい名前だけど。”

私は、この世界の事を何も知らないのだ。

この世界の基準、言語、食べ物でさえも。

だから、一から始める。

白紙が無ければ、字は書けない。

それと同様である。

“イテテテ…”

右手首が急に痛い。

“何だ…!?”

手首の様子を確認するべく近くの壁に近づく。

痛みの元、それは赤色に光るの謎の印であった。

これは夢に出てきた印で、不思議な形をしていた。

印の形は彼岸花の花弁のような形をしており。

四本の真っ赤な線によって編み込まれている。

そして、その内の一番小さい花弁が消えかけていたのだ。

“無くなった…又、何かが消えた…”

消えると同時に、私は再び何かを失った気がした。

同級生の名前、一番大好きだった料理の名前。

それらがまるで元から無かったかのように消えた。

“記憶を消す…呪い!?”

私はオカルトを信じないタイプの人間で

仏教の因果位しか信じない人間とはまさに私の事である。

ただし、実際にこういうあり得ない事が起きると咄嗟に出てきたのはこういう類の言葉だった。

…消えないで!私の記憶を消さないで!…

心の中で叫んだ、さっき私が急に痛がったせいでナラクが再び心配そうにしている。

だから、我慢した。

人はよく自分が出来ない事、他人に頼りたいことを神に頼む。

理由は自分が出来ないから、諦めたからである。

だからこういう運の類に頼る。

けど仕方なかった、呪いの力は強大。

私は手も足も出なかった。

“グルグル?キュルル…”

“クッ…大丈夫よ、心配しないで。”

ナラクの助けの元、再び落ち葉ベッドの所に腰掛ける私で有る。

時間が過ぎると痛みが次第に収まって来た。

消えそうになってた残りの三本の光もようやく収まった。

“感じる、何かを感じる。”

消えた記憶と引き換えに何か新しい力が体に入って来た。

それは、まるで血のような赤い力で有った。

私は感じる事が出来た。

それは確実に前世触れたことのない力で私が感じ取った瞬間に体へと入って来た。

“ドッドッ!ドッ!ドド……”

心臓が震える。

血液の巡りと共に腕から力が入り込んでくる、一瞬かつ永遠に感じる位凄い力だ。

“え?!”

驚きは早かった、だが変化がもっと早かった。

“パキッ!”

何かが割れた。

それは人体の限界で有り、人の限界。

割れた一瞬。

私の世界の時間は止まってた。

そのまま、再び眠りについたのである。

それと同時に、この世界はとある事件が起きていた。

西方、アルテイシアメルヘスの山脈。

“来る。何者かが来る。”

ヘンブス教大教帝。

黄金に光輝く教帝席の上に横たわる全身に黄金の法具を付けた女性がそのトラのような琥珀色の瞳を開けた。

目の前には何千もの教徒が、聖書を開き静かに読んでいる。

クムラブル.ターニュリーナ.ヘンブス

ヘンブス二世とも呼ばれる彼女は前王の怠惰で衰弱したヘンブス王国をたった五年で世界最強の軍事勢力にさせた。そして、反乱する国々を一括しさせかつての王国を面積三倍、人口を更には十倍にもさせた強大なリーダーである。

そしてこの世界でヘンブス大帝国を知らぬもの無しにさせた偉大なる大君、かつ教皇に上り詰めた万人の上の存在がたった今何かを感じた。

“聞け、吾愛する信徒達!”

彼女は立ち上がった、立ち上がった途端に周囲にはまるで太陽が現れた如き聖光が走る。

“教皇!吾ら神の命承し者、何なりとお申し付けを!”

彼女の立ち上がりと共に、全ての教徒が頭を下げる。

“聖騎士の要請をする。遠国に居る一号と四号に直ちに帰還するように、並びに至急緊急会議を開く。”

彼女は自分の第六感を信頼している。

運命を見極められる彼女の能力が国が危ないと悟った、ならば今すぐ行動すべきである。行動の速さ、並びに

“教皇様。聖騎士は我が帝国の柱。その柱を要求するとは一体何事でしょうか?”

側近であるファムネス大臣が心配そうに聞く。

“異界変動だ。”

彼女は眉をひそめる。

この世界は複数の次元により構成される。

そして異界が存在し、とある恐ろしい存在が其処に封印されているのである。

彼女はこの世界三大神者の一人。

魔術を極め、勢力も極めた彼女は何としても あの存在 を阻止せねばならない。

それが、この世界人類最強勢力の答えで有る。

同時、死の界のとある山脈。

“ガラガラ…”“ドタバタ!”

その時。

黒の勢力南方基地、黒剣山の地に無数の魔物と歪な者等が集まっていた。

死の界とは。

この世界の人々が魔物の世界を指す国の総読みで有り。

魔物は人間とは敵対の勢力である。

人間界とはかけ離れている魔界は長年邪悪な勢力により支配されていた。

そして、近隣の国々は大きな山脈や崖等の天然のバリケードで魔物の進行を抑えている。

この地には木々は無く、草一本生えはしない。

長年乾燥した赤い大地は

過酷な自然と恐ろしい肉食生物により支配されている。

此処では死は必然的に起き、それらは怨念と化して此処に住む者を蝕む。

邪気は穢れとなって大気を覆い分厚い紫色の毒霧と化して死の界を包んでいた。

そして今日、とある騒動が起きていた。

“黒き魔王よ!偉大なる賢者をこの世に降臨させよ!”

紫の天空下、無数の鉄の山で出来たこの魔方陣の中に大きな銅像が立っていた。

銅像は恐ろしい三目の鬼で、三つの頭と六つの腕を持っている。

そしてその銅像を、まるで覆うように真っ黒な九つの鎖有った。

鎖は祭壇の円陣に沿って結ばれその円陣には無数の人骨が並ばれた。

ジャリジャリと気味の悪い音を立てて

邪悪な紫色の死の力を放つその鎖は、儀式をする黒魔術士により一本ずつ取られてゆく。

邪神降臨の儀式。

この世紀の終わりを告げる、恐ろしい儀式で有り魔族は新しき賢者を迎える。

かつて魔族はもっと強かった、ただし天罰を浴び弱体化された今は存在の危機ですらある。

だから、彼らは期待する。

この一発逆転の奇跡を。

彼らの魔王、死の界の王を迎える儀式を。

封印されし黒き名君を。

今…

“ピカー!!ゴロゴロ!!”

稲妻が走り、円陣の骨骨を一瞬で灰にした。

それと共に、世界中に大雨が吹き荒れ。

世界は黒い霧に包まれた。

歓声。

無数の魔物が吼え。

邪悪な魔導士は自らの命をその邪神に捧げた。

そして、その命と共に奴は目覚めた。

“フッハハハハ!!!ハハハハ!!”

天にも届く大きな雄叫びと共に、銅像と同じような巨大物が天へ勢いよく飛び立つ。

魔王の誕生だ。

死の界全域に吹き上がる程強大な魔力と共に、全ての魔物がかつて無いほど強くなった。

元々天罰により生えなかった翼は生え。

歯を持たぬ者は鋭い牙が生えた。

そして、奴の指示下一斉に周囲の国へ進行を開始した。

山を渡り、谷を飛び。

彼らはどんどんと進行していったのであった。

そして、人類の災害は幕を開けた。

平和の終わり、災難の始まり。

一体主人公はこの戦いの中でどんな出会いが待っているのか?

続きは

第五話

     異変の始まり

まで。

~世界がもし全てが生死によって繋がるとしたら~

四話最後までお読み頂き誠に有難うございました。


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>作者からの一言。

寝違えて首が痛い。

そしてテストが怖いハハハ…汗。

だれじゃい!ワシの単語表隠した奴は!!…って俺か。

期末テスト、頑張るように!!

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お読みいただき、誠に有難うございます。

更新は不定期ですのでどうぞご期待ください。

内容が色々飛んでますが面白いと思えばそれで結構です。

最後まで読んで頂き、誠に有難うございました。



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