第1章.始まり

第3話 パートナーとの出会い

 私は白い空間にいた。


「どこだろう? ここ?」

 私はとりあえず歩いてみる。30秒位歩いただろうか。そこには黒い卵のような物体が浮かんでいた。


「うわ、なんか汚そう。」

 だけど歩いた感じこれしかなかったし…。私はその黒い卵に触れてみた。すると



 パーーーンッ



 と卵が割れた。そこにいたのは、


「キヒヒッ!」

 と鳴き声を上げながら頭には触覚2本、背にはコウモリの様な翼が2対。背には三叉槍を背負っている悪魔の様な生物が生まれでた。


(よろしく!俺インプ!)


 わっ! すごい! 頭の中から声が聞こえて来るみたい!


「私はスプリング。よろしくね、インプ!」


(インプ違う!名前ない。)

 インプは首を横に振る。


 なるほど…インプは種族って事か。

 すると空中に何かが浮かみ上がる。



 名前:

 種族: インプ

 レベル: 1

 体力: 50

 SP:100


 ステータス:

 力: 5 防御: 0 敏捷: 5 魔力: 50 幸運: 0


 状態: 普通


 親交度:5


 スキル

 【魔力制御】Lv1 

 【闇魔術】Lv1

 【いたずら】Lv1


 加護

 魔の加護


 これがこの子のステータスって事?なんか異様に偏りすぎじゃない?これが普通なのかな?


 そう思っているとまた何か出てきた。


 そこには自分の職業が書いてあり、最初のステータスポイントが能力に振れるようだった。


 よかった、流石にこのまま出たら魔物とかに倒されちゃうよ。



 名前: スプリング

 種族: 人間(炎に認められし者)

 レベル: 1

 職業:幻術師

 体力: 10

 SP:100


 ステータス:

 力: 0 防御: 0 敏捷: 5 魔力: 90 幸運: 5


 状態: 普通


 スキル

 【魔力制御】Lv1 

 【影魔術】Lv1

 【鑑定】Lv1


 加護

 魔の加護



 …テヘペロ!体力10はやり過ぎちゃったかなぁ。いや、そこじゃないか!攻撃0、防御0って紙みたいなもんだなぁ。

「まぁ、なんとかなるでしょ。」

私が買ったゲームだから好きにやればいいのよ。私は頷きながら自分に暗示をかける。


 さーて、とりあえずはインプに名前を付けてあげよう!



(はやく! はやく!)



 んー、どうしようかなー? なるべく強そうな名前がいいよねー? インプは悪魔でしょ? 悪魔と言ったらサタンだけど…ありきたりねー。

 んー、悪魔悪魔…。あっ。


「ベリアルなんてどう?」

 私が言うと



(ベリアル! カッコいい名前! 俺ベリアル!)



「よかった気に入って貰えたみたいで!」

 人に喜んで貰えるってのは嬉しいものね!こんな気分久々!


私は自然と笑顔になる。



(スプリングいい顔! カワイイ!)



「ふふっ! ありがとう、ベリアル!」



 そんな会話をしていると、先程卵が割れたところから扉が現れた。



『一定以上の親交を深めました。Koruseit world onlineへの扉が開かれます。』

 そう聞こえた瞬間ギィーッと言う音が鳴り、扉が開いていく。



「ここをくぐれば良いのかな?」

 私は鼓動が早くなる事を感じながら、ベリアルと一緒に扉をくぐった。



 目を開けると、そこは大きなステンドグラスがある教会の中だった。



「ようこそ。炎に認められし者よ。」

 そこには白髪のおじいちゃんが手を合わせ、私を迎えた。



「おじいちゃんは誰?ここはどこ?」

 私はすごい本当の人にしか見えない!と思いながらも、おじいちゃんに聞く。



「私の名はロザンと言います。しがない聖職者でございます。そしてここは始まりの街『アバール』にある教会でございます。」

 ロザンはそう言うと丁寧にお辞儀をしてきた。



「ロザンさん…始まりの街『アバール』。」

 私は情報を整理した。が、心の中では大興奮であった。

(やばい! VRやばい! こんな鮮明に見えていいの!? しかもこの人NPCって奴じゃないの? 受け答えがちゃんとし過ぎ!!)



「どうかなさいましたか?」



「いえ!なんでもないです!」

 元気に答える。私は背筋を正して言う。



「ふふっ。元気なお嬢さんだ。」

 ロザンは微笑み、しゃがんで私の頭を撫でてくる。



「え…。」

 私は改めて自分の体を見た。



「な、なんじゃこりゃー!!」

 私は縮んでいた。小さな手、足、プニプニとしたほっぺに、甲高い声!スベスベな肌は良いな…って違う違う!



(どうしたの?スプリング?)

 とベリアルが聞いてくる。



「ベリアルー。私の体が変わっちゃったー。」



(最初からスプリングはそうだったよ?)



「え?」

 でも会った時はまだ…もしかしてベリアルには最初からこの姿に見えてたって事?私が考えていると、



「これはこれは。驚きました…!貴方のパートナーはインプだったのですね!」

 ロザンが言う。



「へ?あ、はい。」



「なるほど…悪魔がパートナーとは…初めて見ますね。」



「え、そうなんですか?じゃあ他の人達はどのうようなパートナーなんですか?」



「1番多いパートナーで言うと、動物が多いですね。珍しい方だと魚という方も何名かいらっしゃいました。」



「へー、魚なんてどうやって戦うんだろ?」



「そこも、このゲームの面白い所ですよ?」

 と笑いながらロザンは言う。



「あれ?というか、ロザンさんNPCじゃないの?」

 この世界の事をゲームって言っちゃってるし。



「おや、バレてしまいましたか?ふふっ。最初のログイン時のみですけどね。そうして謎解きをして行くのも、このゲームでは大事になってきますよ。」

 ロザンさんは口角を上げる。



「なるほど、いいじゃん!それ!」

 私はその話を聞いて、教会から出ようとする。



「この教会から出た瞬間、私はNPCになるので今話した内容は覚えてませんからね。気をつけてください。」



 そうなんだ。じゃあ今のうちに何か聞いておこうかな?

「じゃあ、1つだけ質問していい?」



「限定的になら。」



「このゲームは私に癒しと刺激をくれるかな?」

 私がロザンに向かって言うとロザンは驚き、少し時間を置き、言った。



「…このゲームは、貴方に癒しと刺激を与えると私が保証いたします。」

 ロザンはこれまでにない程にニッコリ笑い言った。



「そうなんだ! ならいいや! ありがとう!!」

 私はそう言って、ベリアルと一緒に教会から出た。



「…面白い方達だ。こんな質問されたのなんて初めてですよ。」

 ロザンはそう言い残し、そこから消えた。

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