第4話 人だかり

「おぉ〜!!」

 私は教会から出た。そこには石造りの街、そして噴水に屋台ととても賑わっていた。


(楽しそう!ここ!)

 ベリアルは言う。


 私も同感だ!とてもワクワクするぞ!!

 んーと、とりあえずは何をしようか?と考えていると、私の視界の上の方に3×3の四角が集まっているボタンのようなとこがあった。私はそこを押してみる。すると


 ステータス、装備、お金、持ち物、セーブ、ヘルプ、イベントと言った機能があった。


 ステータスを開くと私の姿が確認できた。

 私の身長は、おそらく小6ぐらいの身長まで下がっていた。正確には分からないが、150センチぐらいだと思う。髪は黒のロング、触ってみると中々にサラサラだった。右目の中には太陽のタトゥーがあった。しかも現実と違って、美少女だった! 現実だったら、絶対取材とかされる系の美少女!!


 ふふっ、ここまで可愛くなってるとセーブしてないとアバターが次やる時には無くなってるっていう事になりかねん!

 私は歩きながらセーブをする。


 よし。これでOK。

 あとはお金は…10000ギルある。これはどのくらいの高さなんだろう。分からない。とりあえずここら辺のお店回って調査してみようかな!


 私たちは屋台をまわった。


(スプリング!あれ美味しそう!)

 ベリアルは焼き鳥の様なものを指差して、言う。


「おー!確かに美味しそう!」


 私達は焼き鳥を2本買った。100ギルだった。大体現実と変わらないかな?と思ってたが、私はある事に気がついた。美味しそうで思わず買っちゃったけど…味するのかな?ゲームで味ってするのかな?


 私はベリアルに1本あげる。

(ありがとー!パクッ。おいし〜!)

 ベリアルは目をキラキラさせながら私の周りを飛ぶ。


 ほっこりするな〜。ベリアル可愛すぎる…!私がボーッとベリアルを見てると


(スプリングは食べないの?)

 と聞かれた。


「あ、あー!! 食べる!食べるよ!!」

 覚悟を決めろ私!! ベリアルに言われたんだもん。例え味がなかったとしても美味しそうなフリを…!! 私は一気に齧り付いた。



 ……美味しい!!

 すごい! ゲームなのに味がする!!

 あっという間に完食してしまった。


「これだとダイエットとかになるんじゃない…!?」

 私は思わず叫ぶ。


 そう言ってると、空中に赤い文字で


「注意」ゲームの中で食べ物を食べても、現実ではお腹は満たされません。時々休憩をしましょう。またトイレ休憩もしましょう。


 と出た。


 あ、はい。そうなんですね。



 ……やっばい。今叫んだので、めっちゃ周囲の目がこっちに向いてる。


 私はそこから一刻も早く離れたくなり、走った。


「わぁー!! 殺してくれー!!」

 と恥ずかしい声を上げながら。



 はぁ。はぁ。もう、無理だ。走れない。

 と思い、近くのベンチに座り込む。


(大丈夫?スプリング?)


「ダイジョバナイ。」

 と私は新しい単語を生み出す程に疲れていた。

 体力とか10しかないからかな。敏捷に関しては5だし。そしてふと顔を上げるとそこには門があった。


 あれは、外に出る門かな。

 …ちょっとだけ、外に出てみようかな?


 私は門に近づく。


(もう外に出るのー?)

 ベリアルが心配そうに言ってくる。


「んー、出てみたいけど…ベリアル死んじゃったら嫌だしなー。」


(俺もスプリング死んだら嫌!)

 ベリアルは可愛い事を言う。この見た目とのギャップが堪らないよ。本当に。もう尊い。


 私達が2人でイチャイチャしていると、周囲の人からまた視線が集まり、ひそひそと私達の話をされる。


「え!あれ!!」

「おい!バカ!声でけーよ!」

「え、だってあれ…!」


「ん!? え!?」

「んー? どうしたー?」

「おい!! あれ見てみろよ!!」


 え、なんかすごい注目集めちゃってる。

 私の周りに、少し離れて人集りができる。


 流石に人前でイチャイチャするのは嫌だったので、私はベリアルを抱えてそこから逃げた。


「あ、待って!」

「おい!逃げたぞ!」


 ひ、ひぃ〜!! なんかみんな追いかけてくるんですけど!! 私は近くにある路地裏に飛び込んだ。


「おい!あそこに入ったぞ!」

「あの人とはぜひフレンドに!」


 怖いよ!! なんかみんな必死過ぎるよ!!

 私はベリアルを抱えながら逃げてるせいか、先程よりも体力の減りが早かった。


「も、もうダメ。」

 私は路地裏に入り、少し行って曲がったところで疲れて膝に手をつく。


(スプリング、いじめられてる?)

 ベリアルが心配そうに聞いてくる。


「あー、多分そうだと言えるね。」

 私が、少し笑いながらそう答えると

(そうなんだ…じゃあ俺がどうにかする!)

 ベリアルはそう言うと、私の後ろに立ち、庇う様な姿勢をとる。


「ベ、ベリアル! 何をする気なの!?」

 私が聞く。

(大丈夫。安心してー!)

 ベリアルはそう言うと、路地裏の角の方に指を指すと



(いたずら!!)

 と叫ぶ。



 追っかけてた人達が曲がり、私達を見つける。

「いた!あそこだ!!」

「ごめん!そこの君!よかったら!」


 私達に近づいてきた瞬間、ゴキブリがその人達の周りに大量発生した。


「うおっ!?」

「ぎゃーっ!!」

「何何何!?」

「ふっ…。」


 それぞれ悲鳴をあげる。最後の人に至っては意識を手放した様だった。


「うわぁ…」

 私が憐れんだ目で見る。するとそれを見たゴキブリさん達(追いかけてきた人達)は、何故か恍惚とした表情を見せると体を震わせ、皆失神した。


「とりあえず…逃げよ。」

 私達は、その人達を放ってそこから離れた。

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