第2話 見知らぬクジラ
え、私声にでてました?
驚いて振り返ると学ラン姿の男の子が、青い折り畳み傘をさして立っていた。ここはごみ捨て場から少し離れた公園の前。
「あの靴とかさ、気になるんでしょう?」
「まあ、でもどうして?」
「お姉さん、ジーって靴とかさを見てたし。僕もなに見てたのかなって気になって」
急に恥ずかしくなる。大人がごみ捨て場で何かしら見つめていたらたしかに気になるのかもしれない。
「僕はあれ同じお母さんが捨てたんじゃないかと思うんですよ」
「どうして?」
「靴、買ったのかもらったのかわからないけど、入らなかった。かさは買ってすぐ壊れて怒って折ったか、子どもがふざけて折ったんじゃないですかね」
「そんな気がしてきた…でも待って、かさはわかるけどなんで靴はむき出しなの?やっぱりもうこんな想い出のつまった靴履いてられないって脱いだんじゃ」
「さっきは怒って靴とかさで喧嘩したと言ってましたよね?」
だからそれ、口に出してないと思うんだけど。
「それにそのあと靴も履かずにこの道を歩いたんですか?大人の女性が?」
「靴もう買ってたとか!」
「それこそ袋にいれて捨てませんか?」
「いや、袋はとっておきたかったんだよ。お店から履いてきたら袋もらいづらいし」
中学生くらいの男の子はため息をついて
「じゃあかさは?」
と私に聞く。生意気な!
鞄にいる見知らぬクジラのキャラクターキーホルダーも笑っている。
私の知り合いのクジラには夢を食べられてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます