第2話 見知らぬクジラ

 え、私声にでてました?


 驚いて振り返ると学ラン姿の男の子が、青い折り畳み傘をさして立っていた。ここはごみ捨て場から少し離れた公園の前。


「あの靴とかさ、気になるんでしょう?」


「まあ、でもどうして?」


「お姉さん、ジーって靴とかさを見てたし。僕もなに見てたのかなって気になって」


 急に恥ずかしくなる。大人がごみ捨て場で何かしら見つめていたらたしかに気になるのかもしれない。


「僕はあれ同じお母さんが捨てたんじゃないかと思うんですよ」


「どうして?」


「靴、買ったのかもらったのかわからないけど、入らなかった。かさは買ってすぐ壊れて怒って折ったか、子どもがふざけて折ったんじゃないですかね」


「そんな気がしてきた…でも待って、かさはわかるけどなんで靴はむき出しなの?やっぱりもうこんな想い出のつまった靴履いてられないって脱いだんじゃ」


「さっきは怒って靴とかさで喧嘩したと言ってましたよね?」


 だからそれ、口に出してないと思うんだけど。


「それにそのあと靴も履かずにこの道を歩いたんですか?大人の女性が?」


「靴もう買ってたとか!」


「それこそ袋にいれて捨てませんか?」


「いや、袋はとっておきたかったんだよ。お店から履いてきたら袋もらいづらいし」



 中学生くらいの男の子はため息をついて


「じゃあかさは?」


 と私に聞く。生意気な!

 鞄にいる見知らぬクジラのキャラクターキーホルダーも笑っている。


 私の知り合いのクジラには夢を食べられてしまう。

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